永遠のはじまり
駅に急ぐ通勤の人の流れに沿って、駅に向かう。ホームに並ぶと習慣のように携帯を手にする。
「新着メール一件」
その表示を見て僕は少しため息をついた。元々、友達が少ない上に、就職してからは友達とは疎遠になっている。僕にメールを送ってくる相手は少ない。昨日、この時間に来たメールは母親からだった。
「今日は雨が降るから早く帰ってきなさい」
僕は遊びに行くんじゃなくて仕事に行くのに。そのメールを想像して、心の中で苦笑する。
「竹沢永遠子」の名前を見つけて、僕はしばらくメールを開くことができなかった。トワから来た一年振りのメールだった。
大きく息を吐く。身体の内側が熱くなって、心臓が早鐘のように鳴った。
「久しぶり。明日、東京に帰るから。ミヅキのところには午後に行く。平日だけど、一応連絡しておいたから」
こちらの都合を全く考えない一方的な内容に僕はくすっと小さく笑った。高校一年の夏にあったことを思い出すとつらくなるから、意識的に忘れているようにしているけれど、僕は期待してしまう。一年に一度とはいえ律儀に連絡をしてくるトワ。十年前は確かに気持ちが通い合ったはずなのにトワは僕の元を去った。
僕は十年前のあの日から先に進めない。明日は平日だけれど、会社は午後から休みをもらった期待しないようにしないといけないと思いつつ、明日も尻尾を振ってトワに会いに行ってしまうんだろう。
僕は高校の頃を思い出した。それは、竹沢永遠子、トワに初めて会った高校の入学式。