ミヅキとの距離
次の日、僕は少し早目に学校に行くことにした。学校には行きたくなかったが、ミヅキのことも気になっていた。僕はいつもギリギリに学校に着くけれど、ミヅキは陸上部で朝練があるから登校が早い。登校した後、僕とトワが出会った土手を走っているという話を聞いていた。朝練の前に登校すれば、二人で話す機会があるかもしれない。
読み通り、ミヅキと正面玄関で会った。ミヅキはいつもの調子で僕にあいさつをしてくれた。登校時間にはまだ早いから、生徒は通らない。
「おはよう。昨日は、巻き込んじゃってごめんね」
僕は何と答えていいかわからずに、曖昧に首を振った。
「手、大丈夫?」
あんな出来事があったのにミヅキは僕を気に掛けてくれた。
「うん。これくらい大丈夫だから」
「それで、ミヅキ。本のことだけど・・・・・・」
「ごめん。俺のせいだから、弁償するよ」
ミヅキは顔を伏せて言った。
「いや。あれ、トワが落書き消してくれたし。大丈夫だから」
僕は努めて気にしていない感じで答える。
「トワって、竹沢さん?」
「うん」
「そうなんだ」
僕は思い切ってミヅキに聞いてみることにした。
「ミヅキ。もし何か悩んでいるんだったらさ」
ミヅキは何か考えていた風だったが、僕の方を見てこう言った。その前に大きく息を吸ったように見えた。
「そうだね。葵にはいつか話すかもしれない」
ミヅキは独り言のように遠くを見て言った。
その後も、ミヅキはクラスの中では、今までみたいにみんなと仲良くしていた。西先生が何か策を講じたのかわからないが、ミヅキを追い詰めた男子生徒はあれ以上何も言ってこなかった。クラスでもあのときの本が話題に上ることがなかった。ミヅキとは親しくしていたが、何となく距離を感じてしまう。
放課後、一緒に帰ろうと誘っても、ミヅキはいつも何か理由をつけて笑顔で断る。そのうち、僕はミヅキを誘うことができなくなった。ミヅキが何か悩んでいるに違いないと思ったけれど、何も話してくれない以上、どうすることもできなかった。僕は中学まで人との関わりで悩む程、積極的に人と関わってこなかった。こういうときどうすればいいか本当にわからない。




