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そんなとこで胃の状態も落ち着いてくると、当然ではあるが彼女達は何者だと疑問に思えてくる。そもそも俺は何でこんな赤の他人と薪を囲んでフレンドリーに朝食をとっているのだ。
「なあ」と隣に座っていたエリーヌに声を掛けた。
「んがあ?」
口いっぱいに物を含んだ少女は原始的な言葉でこちらを振り向いた。
「すっ、すまん、食事中だったな」
「いえいえ、大丈夫です」
次の瞬間、エリーヌの喉がゴクリと鳴る。そんな彼女の消化機能に驚きつつも
「なあ、お前らって一体何者なんだ?」と聞いてみた。
「私達ですか?」
俺はエリーヌをまじまじと見つめ頷く。
「どうしてこの島にいるんだ」
俺が住んでいるこの島は先程も少し触れたがもともとは無人島なのだ。この島に住んで六年の月日が経つのだが俺は俺以外の人間をこの三年間見ていない、六年前には俺ともう一人この島で一緒に住んでいた爺さんがいたのだが、その爺さんについては後程詳しく話したいと思う。
とにかくだ、その爺さん以外にこの六年間俺はそれ以外の人と会った事がないのだ。
それが突然目の前にこの少女らが現れたのだからそれに対しては今までずっと驚いていたのだ。
「エリーヌが悪いんだからな」
俺の質問に洋華がぼそっと呟いた。
「いやあ、お恥ずかしい」
エリーヌは後頭部を掻きながら恥ずかしそうに笑う。
「何かあったのか?」
「私達の船は早朝、この島で難破したんだ」
「難破?」
洋華はコクリと頷く。
するとエリーヌは分が悪そうな表情で「いやあ、私が見張りをしていたんですけど、居眠りしちゃいましてねぇ。あはははは」
彼女はそう高らかに笑う、それに対して洋華は不機嫌そうに俯いた。
一連の話しを聞くと何故こいつらがこの島にいるのか大方の事情は掴めてきた。そういう事ならばと同情心も湧いてくる訳で早朝の事は水に流そうと思ったその矢先だった。
「何か魚ばかり飽きたよお」
散々焼き魚を食うだけ食っといてひよ子が嘆いた。
「そういやあ、私達が船を乗り上げた場所に野菜があったような」
洋華がぼそっと言う、空耳だろうか? 俺の聞き間違いでなかったら今とんでもない事を聞いた気がするのだが。
「なあ、今野菜って言ったか?」
「ああ、言った」
嘘一つない表情で洋華は言う。
「ちょ、ちょっと待てよ、野菜畑は島の中央にあるんだぞ!」
「私が知るか、あったからあったと言っているんだ」
「どうして島の中央に船が乗り上がるんだよ!」
「知るか、エリーヌに聞け」
俺は咄嗟にエリーヌに視線を向ける。
「私寝てましたから」
嘘一つない表情でエリーヌは答えてくれた。
(…………)
このままじゃ拉致があかんと思った俺は自分の目で確かめようと立ち上がり、野菜畑へと向かおうとする。すぐに「どこに行くんだよお」とひよ子が聞いてきたが、「どこでもいいだろう」とあしらい俺は急いで野菜畑へと向かった。