21/58
2-11
俺が船の錨を上げていると、エリーヌ達の動きが慌ただしくなる。エリーヌは船の前方の甲板から島に向かい立ち。洋華はヴァイオリンを取り出した。
ひよ子は木槌を持ち船上マストへと上って行く。一体何が始まるのかと見ていたら洋華の優雅なヴァイオリンの音色と共にエリーヌが歌を歌いだした。
その歌声は一瞬でこの空間を変えるように、まるで天女が舞い降りたかのような錯覚を覚え、その歌は島に捧げる何処か悲しい鎮魂歌にも聞こえた。
定期的に鳴る鐘の音に気付けば俺は船の後方から島に向かい立ち頭を深々と下げていた。
「爺さん今まで本当にありがとう!」
頬を伝う涙は悲しみの涙ではない。感謝の涙なのか、当然それもある。だが今流れている涙は希望の涙だと思う。
とある無人島、一人の少年と三人の少女は出会った。
島の北にある十字墓、誰が飾ったか知らないがコスモスの花が一輪風に乗り少年達の船上でヒラリと舞う。帆に向かって風は吹く、まるで少年達の背中を後押しするように。
明日への希望に向かって少年達の船は進む。船上マストに吊るされた鐘の音と共に。
嗚呼、鐘は鳴る~鐘は鳴る。




