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「丸太ローラー大作戦ですか」
最初に作戦名を口にしたのはエリーヌ。
「丸太ローラー大作戦とか中二臭くないですか洋華姉様」とひよ子。
「ひよ子、どうせ奴の事だ朝知恵なんだろうが聞いてみようじゃないか」
相変わらず上から目線の洋華。
もうこいつらを助けるのはやめにしようか!
なんて思っていたらエリーヌが洋華とひよ子を叱りつける。
「洋華もひよ子も何を言っているのですか、海斗さんは私達の事を思って考えてこられたのですよ。そもそも作戦名の必要性があったのか理解し難いとこですが、それでも彼の話しを黙って聞いてみましょう」
(…………)
「それでは海斗さん詳しい説明をお願いします」
なっ、何なんだろうか、この妙な説得力は……私には当然聞く権利がありますと言わんばかりの真剣な眼差しでエリーヌは俺を見つめている。それに感化されたのか気が付けば俺の口は自然と開いていた。
「順を追って説明するとだな、まず潮だ」
「塩? あのしょっぱいやつか」
「その塩とはちょっと違うな。ひよ子にはまだわからないかもしれないが、海には流れがあってそれを潮と呼ぶんだ。潮ってのは月の引力しだいで流れが大きくなったり小さくなったりするんだが、それがちょうど明日から数日間、年間で一番大きく潮が動くかもしれないんだ」
「つまり潮の満ち干きって事ですね」
質問するエリーヌに対し俺はコクリと頷く。
「ああそうだ。去年のこの時期、満潮時は標高が低い島の東側から中央にある野菜畑の近くまで潮が満ちてきたんだ。常識的に考えたらお前らの船を海に戻すなんて事は不可能だが幸い明日は海の方から船に近付いてくるんだよ」
「ほほぉ、して海斗さん海までの距離が短くなるのはわかりましたが、船を海までどうやって運ぶのでしょうか」
「そこで丸太を使うんだ、昨日の夜ふと思い出したんだが、ガキの頃見た歴史書に古代エジプトの絵が載っていてな、その絵では丸太を地面に何本も並べてその上に巨大な石を乗せて運んでいたんだよ」
「なるほど、その巨大な石が私達の船になるって事ですね、ですが海斗さん。貴方もご存知のように私達の船は地面に埋もれているのですよ」
「それもたぶん大丈夫だと思う、そもそもお前らって本当に運がいいんだ。野菜畑のあの柔らかい地質に乗り上げたからこそ船体に大きな傷もないし、船は前方だけ埋もれているというあのアンバランスさを保てている。だから埋まっている船の前方を掘って、船の後方をロープで引っ張れば簡単に起き上がるはずだ」
話しを聞き終えたエリーヌは俺に向かって拍手をしてくる。
「海斗さん貴方天才ですか、完璧じゃないですか」
「洋華姉様、海斗は天才なのですか」とひよ子。
「ああ、ただの変態ではなかったようだな」
ただの変態って変態前提かよ、とまあ、これだけ考えた俺ではあったが当然不安もある。
「先に言っておくが絶対成功するとは限らないからな」
「ええ、覚悟はできています、もし失敗した時は海斗さん」
エリーヌは頬を赤らめ俯く、
「その時は?」
「一夫多妻制になりますがよろしいでしょうか」
顔を上げるとそう言った。
「らっ、来年もまたチャレンジできるからな、一夫多妻制にはならねぇよ!」
(どいつもこいつも変態だよ……)
「とにかくだ。最初から失敗する事を考えていても仕方がない。時間もないしそろそろ準備に取り掛かろう」
「そうですね」とエリーヌを筆頭に洋華もひよ子も尻をはたきながら立ち上がった。
「俺とエリーヌとひよ子は船までの丸太運び。洋華は船で抉れた地面を平にならしてくれないか、丸太が転ばないと意味がないからな」
「地面を平にするのはいいが、お前は私に素手でやれというのか」
「安心しろ昨日寝ていたテントの近くにスコップがある」
「意外に何でも揃っているんだな」
「ああ、全部爺さんが本土から持ってきたんだけどな」
「海斗さん丸太はどちらに」
「それも島の西側だ」
「お爺さんが本土から持ってこられたのですか」
「何でだよ……丸太はこの島で切り出したんだ」
「海斗お」
「どうしたひよ子」
「早く行くよお」
正論だ、という訳で俺達は『丸太ローラー大作戦』を決行するべく島の西側へと向かった。




