第8話 嘘か誠か 演技かリアルか
ちょっと今回は…
「ここがテミジカです」
距離は結構離れていたが、やっとのことでテミジカに到着した。なんだか軽い達成感がある。
「綺麗な街だな」
「…そうでしょうか?ここは汚い街だと思いますけど」
「なぜ?」
「辺りをよく見てください。人身売買、奴隷制度。この街では女はただの道具としか見られていないのです。私だってあなたといるからこうして普通に歩いていられますが、私一人なら間違いなく拉致されていたことでしょう」
「そんなに、荒れているのか…」
「はい。ではとりあえず宿を見つけましょう。今日はもう暗いですから」
「そうだな、もうそこでいいか?」
俺は偶然ホテルという看板が見えて、探すのも面倒だから、そこにしようと指をさした。
「あれ?このような高いホテルだとお金が…」
「それについては大丈夫だ。金なら腐る程持ってるから」
「…実際はあなたのではありませんがね」
「うるさい」
透明なドアを開けて俺たちはカウンターへと向かった。
「いらっしゃいませ。本日は何名様でのご利用でしょうか?」
「この子と俺の二名でお願い」
「ご利用期間はどうなさいますか?」
「んー、一泊二日で」
「一泊二日の二名様で。お部屋はどうなさいますか?」
「ツインベットの一部屋でお願いします」
「あ、おい」
「別に構いませんよね?こちらのほうが値段はチープですし」
「別にいいけど…」
「なら決まりです。ツインベットの一部屋でお願いします」
「かしこまりました。二名様でご利用期間は一泊二日、一部屋ツインベットで間違いなかったでしょうか?」
「はい」
なんだか、ゴリ押しされた感が強いが、もうなんでもいいや。
「では1102号室になります。今晩はお部屋にご夕食をお持ちしますが、どの時間が都合がよろしいですか?」
「そうだなー、今が6時30分だから…8時くらいに持って来てもらおうかな」
「かしこまりました。明日の朝食は一階のレストランになりますので。それでは何かお困りのことがございましたらいつでも声をかけてください」
「わかりました」
「あ、それと、こちらサービスです。楽しんでください」
提示されたのは明らか避妊器具だった。
「い、いらねーよ!」
「そうですか、かしこまりました」
俺たちはエレベーターのような乗り物に乗り込み、11階へと向かった。
「随分と慣れていますね」
「ああ。俺の世界にも同じようなホテルはあるからな」
「今まで何人の女性を相手にしたのですか?」
「何人…って、一人も相手にしたことねーよっ!」
「一人も…ということは童貞ということですね」
人が一番気にしているところを…!
「図星ですね」
「お前さ、俺がお前と初めて会った時とキャラ変わってるぞ」
「これが、本当の私ですけど?」
「そうなのか…?」
「あら、もう着きました」
ピコーンと音がなってドアが開く。
「ここですね、1102号室は」
ドアを開けて部屋に入る。中は意外と綺麗でホテルと言うだけはある。
「ふぅー…」
ミカは勢いよくベッドに座り込む。それにつられて俺も座り込んだ。
「ねぇ、リョーガ君?」
「君になってるぞ」
「こちらの世界のリョーガさんの場合は、さんを付けますが、あなたはリョーガ君です。区別がしにくいので」
「別にいいんだけど。で、なに?」
「魂の使い方はご存知ですか?」
「魂の使い方…?」
「まさか、知らないのですか?」
「うん」
「…ふふふ」
「何が面白いんだ?」
「でしたら、こうされたらどうします?……ガルレサ!」
「何したんだ?」
「少し、体を動してみてください」
「それくらい……えっ?あれ、動かない!なんだ、これ!」
俺の身体は金縛りにでもあったかのように、俺の命令を一切聞かずに石のようになって動かせない。
「これが魂を上手く利用した結果です。今の私はリョーガ君の体を自由に拘束できます。だからこれから私が何をしようとあなたにそれを止める術はないのです」
「お、お前っ!あ、でも、口は動くぞ?」
「それは私が口と声帯の部分だけ動かせるように操作してるだけです。それと心臓や臓器も。私はいま、あなたの筋肉の一部を拘束しただけです」
「なるほど、こんな使い方ができるんだな」
「感心してていいのですか?…今の私はあなたの心臓を、止めることができる」
「おい、何考えてるんだ」
「こうしたらどうなると思います?」
そう言った瞬間、俺は呼吸を止められ、声が出せなくなった。
「…ぐっ…ぁぁ…」
「肺を止めれば、あなたは息ができない」
彼女は俺の拘束を解いた。
「はぁ…!はぁ…!お前!俺を殺す気か!?」
「つまり、この世界ではレベルだけで勝てるように簡単にはできていません。今、私はあなたにしたいことを好きなだけできます。もちろん、キスだって」
「…好き放題しやがって」
「そろそろいいでしょう」
完全に拘束を解く。俺の身体は自由に動かせるようになっていた。
「で、その魂の使い方ってどうするんだ?」
「ただ、ガルレサと唱えるだけです」
「なるほど…」
「私がリョーガ君に、ガルレサと唱えればあなたの筋肉は硬直する」
「ガルレサ!」
「ほう、まさかこんなに早く魂の使うことができるとは」
「今度は立場逆転だな」
「ふふふ、無知とは恐ろしいものです」
「なに?」
「因みにこの技のことを統一して魂法といいますが、この魂法は簡単に解けます、ほら」
彼女は軽々と体を動かす。
「なんで…?」
「この魂法は子どもの悪戯でよく使われますよ?」
「い、悪戯って…」
「ふふふ、下手したらあなたは子どもに殺されていたということです」
「で、解く方法は?」
「簡単です。解けと念じるだけです」
「なるほど…」
「リョーガ君、童貞なんですよね?」
「そうだけどなんで今?」
「私と付き合いませんか?」
「は?」
「私と付き合わないかって言ってるんです。耳もおかしくなったのですか?」
「俺には、綾がいる。だから無理だ。それにそれと童貞は関係ないだろ」
「残念ですが、あなたの知っている綾さんはこの世界にいません」
「何言ってんだよ、そんなのわかんないだろ!」
「この世界には、いませんでした」
「なんだよ、知ってるような言い草だな」
「私を誰だと思っているのですか?私はギルドで一番の人探し探偵ですよ?」
「……またか、この件に関しては冗談でもそんなことは言うな」
「冗談ではありません」
「…もういいから」
「本当のことです」
「いい加減にしろよ!この世界に綾はいるに決まってるだろ!?」
「なぜ、そう言い切れるのですか」
「だって俺たちは確かにこの世界に来たんだぞ!?」
「知っています」
「だから、綾はこの世界に…」
「いません」
「お、お前こそ!なんで言い切れるんだよ!?」
「その綾さんは、別のパラレルワールドに行ったのです。リョーガ君はこのパラレルワールドに来た時、強い衝撃を受けました。その衝撃で、二人ともこの世界にくるはずが、綾さんだけ、別の世界に行ってしまったのです」
「だから!なんでそれがわかるんだよ!」
「私は目を見ればその人の記憶が私の魂に流れ込んでいきます。忘れましたか?その記憶はリョーガ君の潜在意識に擦り込まれた記憶も読み取ることができるのです。リョーガ君は忘れているかもしれませんが、あなたがこの世界にくるとき、綾さんの手が離れていったのですよ」
「そんな、わけが…」
「リョーガ君が今までして来た経験、嘘、真実、怒り、喜び、悲しみ、楽しみ、全ての記憶を私は見ました。リョーガ君がいたその世界も私は知ってる。リョーガ君の気持ちも知ってる。あなたのことなら全て、知ってる」
「……じゃあ、俺は…なんのために今ここに…いるんだ…よ」
「全てを変えるためです」
「全てを…変える?」
「はい。あなたが望んでないこの未来という今、現実をあなたの手で変えてやるのです。ただ、それだけです」
「そんなこと…できるわけ…」
「では、あなたはなぜガミラスの欠片を集めるのです?」
「それは…」
「願いを叶えるためですよね。綾さんに会うためですよね。全てを変えるためですよね?今も綾さんは別のパラレルワールドで彷徨っているかもしれません。あなたのすべきことは一刻も早くガミラスの欠片を集めることじゃないですか?」
「そうだけど…」
「それには私があなたと付き合う必要がある」
「だからなんでそうなるんだよ」
「私の能力は、人に恋をすればするほど、開花し、発揮し、成長する」
「んなわけないだろ」
「これは本当のことです。私があなたにキスした後、私は褐色を使えるようになりました」
「褐色…?」
「透明になることです」
「……もし、その話が全部本当だとして、俺と付き合ってなんになる?」
「私はガミラスの欠片の場所がわかります。ではなぜ、私にはガミラスの欠片の場所がわかるのでしょう?」
「誰かに教わったから?」
「いいえ、私の能力でガミラスの欠片の場所がわかるのです」
「な、なんだって?」
「しかし、今のところ、ガミラスの欠片の場所を知れるのは二つだけ。これが私の能力の限界です。この能力を成長させれば、あなた自身にもとても有益になると思いますが?」
「…ほんと、だろうな?」
「もちろん」
「わかった。付き合おう。だけど、綾に会えるまでだ」
「はい?」
「付き合おうじゃないかって言ったんだ」
「あなた、女性に告白する時はどうするのですか?」
「わ、わかったよ。俺と付き合ってください…」
すると、彼女は頭を下げた。
「ごめんなさい」
「はぁ!?な、なんでだよ!?」
「俺と…の前にある言葉が抜けてます」
「ある言葉が…?」
「ミカルさんと会えた時からずっと好きでした、俺と付き合ってください。ですよ」
「…く」
完全にミカは俺のことを逆手にとってやがる。
「どうします?やめます?」
「み、ミカルさんと会えた時からずっと好きでした、俺と付き合ってください…」
「そこまで言うなら、こちらこそ喜んで。ではさっそく」
彼女は俺の目の前に立ち、顔を近づける。
「ちょ、何を」
「キスですよ。告白した後の定番です」
「だ、だめだ」
「…なぜ?」
「俺には、綾がいる」
「……あなたは、彼女の目の前で別の女の話をするんですね」
ミカは下を向いて、悲しい表情を見せる。
「いや、そもそも、俺の彼女は綾なんだけ……ちょ、泣くな、泣くなって」
彼女の目からはどんどんと涙がこぼれ落ちていく。
「私のことは…どうでもいいの?…元カノのことばっかり話して…ぅぅ…あなたから告白してきたのに……私だって、私だって!あなたのことが好きで、好きで…こんなにも…胸が痛いのに…あなたは……」
涙を流して俺に訴えてきた。
「ご、ごめん、あのな、今のは反射的に綾が彼女って言っただけで…!」
「もぅ、いい!私、邪魔なんでしょう?ただ私で弄んでただけなんでしょう?…私、消えるから……あなたがそう望むなら……消える、から…」
彼女はいっそう泣きじゃくりながらも立ち上がり、ドアのほうへと向かう。
「ちょっと、まてって」
俺は彼女の袖をつかむ。その袖は涙で濡れていた。
「もう、いいの……」
「そうじゃないだろ!お前は俺の彼女なんだろ?」
そういうと、彼女は俺に振り返った。
「じゃあ、私のこと…すきぃ?」
「あ、え…と…」
「ほら…ね…」
また彼女はドアの方へ身体を向ける。
「すっ、好きだよ!愛してる!だから!」
そして、今度こそ俺の方へ向いた。
「愛してくれてるの?」
ここが押しどころだと思った俺は攻め立てる。
「ああ、愛してる!これからも、愛してる!」
「じゃあ、キス…して?」
「えぇ…と…」
「……言葉だけ…なのね」
「そんなこと…!」
「キス…してくれたら信じるから…」
「わ、わかった…」
俺は少し背の低い彼女に顔を近づける。そして、キスをした。
「…ぁ…んん…」
お互いの口が離れる。
「…どうだ?」
俺が聞くと、彼女は涙を拭いて冷静なこえでこう言った。
「あなたって、ここまでしないとキスしてくれないのですね」
「は…え?」
「にしても、先ほどのキスは強引すぎです。もっとゆっくりとしてほしかったです」
「お、お前……まさか…」
「演技ですよ?だって、あなたはこうでもしないとキスしないのですから」
完全に俺は騙されていたことに気づき、軽い脱力感に見舞われた。
「は…ははっ…」
「なにはともあれ、あの言葉は守ってくださいよ」
「あの言葉…?」
「これからも、愛してると言ったことです」
「あ、ああ…」
一応、あれは勢いで言っただけなんだけどな…
「あの時は流石の私もドキッとしてしまいました」
「そう…なのか…」
余計にほんとのことを伝えにくくなった。
「それに、ガミラスの欠片の場所が一つわかりましたし」
「本当か!?」
「閉ざされた森にあるガミラスの欠片を手に入れてから教えます」
「そうか、ありがとう」
彼女は前に手を組んで、下を向き無言になる。
「……」
「どうした?」
俺が聞くと彼女は身体をもじもじと動かしだす。
「もう一回、キス…してくれませんか?」
「なんで?まさか、ガミラスの欠片の場所がわかりそうだとか?」
「あ、いえ…そうではなくて」
「ん?」
「さっきは、なんだか、なげやりな感じがしまして…その、愛してるっていうなら……もっとこぅ…愛情のあるキスが欲しいっていうか…」
「…泣くなよ、また演技か?」
「…演技なんかじゃ、ありません!や、やっぱりいい…んんっ?…ぅ…ぁ…」
「失礼します、ご夕食のほうお持ちしまし……」
「ッ!?…リョーガ君!ひ、人が…んんっ…!」
「こっ、こちらに置いておきますので、ご自由にお召し上がりくださいませ!本当に失礼しました!」
「…はぁ…へぁ…」
ミカはへなへなっと地面に崩れる。
「夕食が来たぞ、食べようか」
「ぇ?…ぁぁ、そぅですね…」
「どうしたんだ?」
「なにも、なぃ…ですょ?別に、あなたのキスが…思いのほか優しくて気持ち良くて…なのに激しくて…すごくて…余韻に浸ってるとか…そういうことじゃないですけど…」
「はいはい、もう食べるぞ」
「はぃ…」
8話を読んでくださりありがとうございます!
これからも更新続けますので、ご愛読お願いします!!