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第7話 サラマンダーの巣窟

それから俺たちは、草原から少し外れた林に足を踏み入れ、気がついたら熱帯雨林のようなところを歩いていた。

やがて、一つの大きな洞窟を見つけて、入り込んだ。

洞窟の天井からはポタポタと水滴が落ちてくる。上をみると、コウモリのような生物が天井にぶらさがっていた。

「これまた不気味なところだなー」

「私、やっぱり帰りたい…」

ミカは腕を抱えてそういった。

「なんで?」

「な、なんでってそれは…」

ギャスゥウウウウウウウウ!!

ミカの言葉を遮り、鼓膜が破けてしまいそうなほど大きい音が鳴り響く。それは洞窟であるからよけいにうるさい。

「おお、なんだなんだ?」

「あ、あれは、ミラブロウスです!!あ、ごめんなさい、つい敬語に…」

「そんなこと、今はどうでもいい!闘うぞ!ミカはさがってろ!」

「でっ、でもっ!ミラブロウスは!」

「いいから!行っくぞ!!」

俺は思い切り駆け出して持っていた剣をミラブロウスに向けていた。

勝てるかなんて考えていなかった。まさにゲーム感覚。それでも、案外剣はミラブロウスを簡単に貫いた。

ミラブロウスはあっけなく絶命した。


「そんな!ミラブロウスは、レベル120の高レベルモンスターなのに…」

「大丈夫か?」

俺は尻餅をついで、座り込んでいたミカに手を差しのばす。

「え…あ、うん!大丈夫!」

俺の手につかまって立ち上がる。

「ん?なんだあれ」

俺が見たその先には赤色に輝く宝石のようなものが空中に浮かんでいた。

「それ!それが、ガミラスの欠片です」

「これが、ガミラスの欠片…」

その赤色に輝く宝石を手に収める。

「ガミラスの欠片は、世界中に散らばっていて、そのガミラスの欠片を護るためにモンスターや人から結界、あらゆる方法を使っている者がいます。それらを私達は守護者とも呼んでいます」

「ということは、この巨大なモンスターがその守護者というわけか」

「そういうことになります」

「で、敬語のままなんだけど」

「あー、もぅ!敬語じゃないと喋りずらいです!」

「はははっ」

「何がおかしいんですか!?」

「いいや、なんでもないよ。次はどこに行けばいいのかわかるか?」

「そう、ですね…その前に、あなたのレベルを知っておく必要があるようです」

「レベル…?」

今、一瞬笑ったような…

「大体ご存知だと思いますけど、簡単に言えば強さみたいなものです」

「RPGかよ…」

「RPG、ですか?」

「ああ、なんでもない。こっちのこと」

「では、レベルを計りましょうか」

「そうだな。でも、どうやったらレベルなんてわかるんだ?」

俺が聞くと、彼女はニヤリと微笑んでから一言言った。

「私とキスをすれば、わかります」

「は、はぁ?意味不明だろ。第一、なんでそんなんでわかるんだよ」

「キスをすればレベルがわかる能力が私にはあります」

「そんな能力知らねーよ!なんでキスなんだよ」

「私はこれでもギルドで一番の受付嬢ですよ?さ、口を」

彼女は俺の首に手を回してから前から抱きついてきた。

「ちょっと、ちょっと待て!」

「なんでしょう?今頃戸惑うことはないでしょうに」

「心の準備が…」

「そんなの必要ありません……んっ」

それは、少し長く感じた。

「はぁ…はぁ…そんなこと言っておきながら、あなたって結構強引に舌を入れるんですね」

「な、何言ってんだよ!で、俺のレベルは!?」

「わかりませんね」

「はぁ!?」

「まさか、本当にキスでレベルがわかると思いましたか?」

彼女はクスクスと笑い出す。

(こいつ、俺を試したのか…!)

「お、お前なっ!」

「私の初めてを奪ったんですよ?少しは御礼を言っていただいてもいいくらいです」

「…くっ。あ、ありがとう」

「…ふぅー、それにしてもあなたって騙されやすいですね」

俺はその言葉はあえてスルーした。

「そんなことより、実のところ、レベルってどうやったらわかんだよ」

「そうですねぇ…次は私とセックス、なんてどうでしょう?」

「なっ、何がどうでしょうだっ!」

「あれ?顔が赤いですよ?」

「……くぅっ」

彼女は俺をいじる度に微妙な微笑みを

見せる。

「冗談です。あなたのレベルはもうわかりました」

「どうやってわかったんだ?」

「あなたとキスしたとき、髪の毛を一本拝借しまして、レベル鑑定にかけただけです」

「…それ、キスする意味ないじゃん…」

ミカは俺の言葉を無視してそのまま続ける。

「レベルは157といったところです」

157か…基本、RPGではこれくらいのレベルではだいたい高いのだと思うが念のため、聞いてみよう。

「高いほうなのか?」

「はい、充分高いです。マスターのレベルが240ですので、かなり高めです」

「そうなのか」

やはりレベルは高い方だったか。

レベルが高いということは強いということ。この世界に来て一番の幸運といえるだろう。

「どうですか?倒したモンスターの前で女性に無理やり初めてのキスを奪う気分は?萌えでもしましたか?」

「お前がしてきたんだろうが!」

「責任を女性に押し付けるのですか。心が狭いですね」

(こいつ、うぜぇ!!)

彼女は人差し指で自分の唇を触る。

「まあ、いいです。あなたとキス出来ましたし。あ、それと、私たちの次の目的地は閉ざされた森ですよ」

「閉ざされた森…」

俺が聞き返したため、知らないと思ったのか、ミカは説明を加える。

「閉ざされた森はその名前の通り、今は完全に封鎖されています。私が冒険者だったころに、一度立ち寄ったことがありましたが…」

「どんなとこなんだ?」

「恐怖、逃走、死……この三つの感情が頭の中をぐるぐると巡り巡りました。正直、行きたくないです」

ミカはうつむく。きっとそのときに何かあったのだろう。しかし、俺には関係のないことだ。

「…俺は行く。俺はどんなことがあっても行くぞ」

「…そう、でしたね。では、まずはテミジカへ行きますか」

「テミジカ…?」

「はい。テミジカという大きな街です。閉ざされた森のすぐ近くにあります。そこで用意を済ませてから行きましょう」

「そうか、ならそうしよう」

俺たちは閉ざされた森を行く前にテミジカに訪れることにした。

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