第1話 全ての終わり
小説を書くのは初めてで、かなりの初心者です。
初心者なりに頑張りますので見苦しい文ではございますが、読んでいただけると幸いです。
意見やクレーム(クレームと言ったら言葉が悪いですが…)は遠慮なくお願いします。
では、どうぞ、お楽しみください。
今から遡ること約137億年前のことだ。その時、宇宙の始まりであるビッグバンが起こった。
ビッグバンの影響により、この宇宙は膨張を続けているという仮説も立てられた。しかし、2519年の現在、そのビッグバン説には少し誤りがあることが判明した。
2450年、我々人類は遂に地球環境を完全に保全することができた。フロンなどによるオゾンの破壊を食い止め、オゾンを再構築する技術が開発された。そのうえ、二酸化炭素の排出の原因となる石油、石炭なども鉄油、鉄炭という二酸化炭素が発生しない燃料へと変更され、世界中で至る所に原子力発電も行われるようにもなり、地球の環境はよりよいものとなっていた。
ビッグバン説の誤りが判明したのは、科学が自然に勝利し、自然さえも科学の力で復旧できると誰もが頭に刷り込まれていたこの頃だった。
とある、学者がそれを論文で発表したのだ。簡潔にまとめると、「ビッグバンの影響は衰え、今では宇宙は膨張しているのではなく、反対に収縮している」ということだった。
誰も、信じる者はいなかった。いや、信じたくなかったのかもしれない。今まで、反対されることのなかったビッグバン説。それが論文にきちんとまとめられ、さらに確固たる証拠も提出されたのだから。
しかし、その論文が正しいと完璧に証明されたのは2519年の現在だ。
我々人類は、新たな資源を得て、更に科学技術を進歩させようと、OHB56という地球からはるか彼方にある地球に似た天体の着陸を目的に計画を進めていた。これは世界各国、全ての国の共同事業だった。
その事業真っ盛りの時に、OHB56が突然姿を消したのだ。天体というものは、何かを軸にその周りを一定のスピードで回る。
だから、いきなり姿を消すことはありえないことなのだ。そのニュースは世界にざわめきを起こした。
天体感知器のレーダーが故障してるんじゃないか?
しっかりと確認したのか?
何度、確認してもその結果は変わらなかった。世界技術進歩計画委員会(World Technological Progress Plan Committee)WTPPCはビッグバンの影響による力は衰え始め、宇宙は収縮していて、137億年前の状態に戻ろうとしていること、つまり宇宙が収縮していることを正式に認め、その影響を受け、OHB56は消滅したと正式に発表した。
世界はそれに驚愕した。
科学者は必死に解決に向けて研究に没頭していた。
「やがて、地球も消滅する…」
俺はそれらが発表された記事を見ていた。
「遼河くん…」
その記事を見ていると後ろから俺の肩に手を回し、抱きついてきた。
「あ、綾……今日も早いお目覚めだな。どうしたんだ?」
「…だって地球、消滅しちゃうんでしょ?遼河くんとの時間を無駄にしたくない」
いっそう肩に回された腕が俺を強く抱きしめる。
「大丈夫だって。まだまだ先の話だろ」
そう、収縮してるとはいえ、まだまだ先の話。約100年後に地球は収縮されていく空間に飲み込まれ、跡形もなく消滅する。100年も経てば、俺達は生きていない。いくら科学技術が進歩したとはいえ、人間の寿命には限界がある。
「でも…」
「だーから、大丈夫だってば。綾はそんなにネガティブだから何時も暗いんだよ。もっとポジティブに!なっ!ポジティブにいこうぜ?」
「うん…」
俺が説得しようとしても、どこかしら綾には不安があるようだ。気分転換に、綾が前から行きたかったテニプロに行くことした。テニプロは簡単にいえば服屋で、この時代に服を手にとって見て選ぶというのはテニプロだけだ。今では、みんなパソコンの仮装空間に自分とそっくりのアバターを作り、そのアバターに服を着せたりすることで、サイズやデザインを確認できるのだ。
「これいいんじゃない?」
「うん…」
俺が気晴らしにと、テニプロに連れてきたが、どうも綾は気が進まないようだ。俺はつい、綾を引き寄せ抱きしめてしまった。
「大丈夫だよ。地球が消滅しようがなんだろうが、俺は綾の隣に居るよ。俺は綾の笑顔が一番好きなんだ。そんな顔、やめてくれ…」
俺の気持ちが伝わったのか、綾はニッコリと笑顔を見せた。
「じゃあ、これ試着してくるねー?」
綾は試着室に入り、試着する。少したってから新しい服に包まれた綾がひょっこりと出てきた。
「いいじゃん!それ!可愛いよ!」
その服はあまりにも綾に似合ってたから、つい声が出てしまった。
「そ、そう?」
綾は少し照れながら自分が着ている服を確認する。綾はその服を気に入ったので、その服プラス別の服も一緒に買ってやった。
綾と腕を組みながら家に帰っていた時だった。大通りを歩いていると、とあるニュースが流れた。
速報です。ビッグバン説の誤りを正式に発表したWTPPCは100年後の地球消滅に訂正いたしました。
繰り返します。…
「2週間後…だって?」
「遼河くん…!」
それを聞いた時、無意識に綾と抱き合っていた。
「大丈夫、大丈夫だよ、大丈夫だって」
最早その言葉は綾だけでなく、自分に言い聞かせるように言っていた。
「帰ろうか……ね?」
綾はそう言ったが、俺はまだ抱きしめていたかった。この温もりを忘れたくなかった。失いたくなかった。
「大丈夫だよ、きっと。あと2週間もあるんだよ?ね?帰ろ?」
さっきまで励ましていたのに、いつのまにか俺は綾に励まされていた。
俺達はそれからなにも話すことはなく、家についた。部屋は妙に暗く感じた。テレビはついていたが、先ほどの内容と同じニュースが永遠と流れている。
「遼河くん、私、遼河くんと一緒になれてすごい嬉しかったよ」
その言葉は俺の心を擽る。
「……やめてくれよ」
「ううん。ほんとだよ?遼河くんは優しいし、勉強もスポーツもできたじゃん?私が勉強で困った時とか教えてくれたりした。遊園地も行ったよね!あの時は、」
「やめてくれ!」
「ぁ……ごめん、なさい」
綾は一言謝ると部屋から出て行ってしまった。
(何をやってるんだ、俺は!)
俺は壁を殴った。綾も同じ気持ちのはずなのに、俺のことを思って言ったことなのに。自分の発言に嫌気がさした。そんな時、俺はふと、思い出した。
「そうだっ!」
俺は急いで家を出て、近くの小さな山を駆け登る。
「あった…!!」
俺が見つけたのは、俺が小学生の時に発見したもので、本当に困った時にはこれを見た。
「時空の狭間…」
今、俺のような20代がこのような言葉を使うのには抵抗はあったが、俺は小学生の時からこれを使っている。
人生で大きなつまづきがあったとき、困り果てた時に俺は幾度となくこの時空の狭間に助けられた。
この時空の狭間は、実はパラレルワールドに繋がっているのだ。パラレルワールドとは即ちもしもの世界。
俺は困った時、このパラレルワールドに入 ることによって、解決策を見出して来たのだ。
俺はそれを確認すると、家に真っ先に帰った。
「綾っ!!」
俺はドアを開けて綾のいるところへ向かって綾を呼んだ。その時綾は泣いていたが、袖で涙を拭い、我慢するようにして答えた。
「ぁ…ええっと…なに?」
「ちょっと、話がある」
「…え?」
俺はそう言って綾をリビングに連れて行き、椅子に座る。
「実は、助かる方法が一つ、あったんだ」
「助かる方法…?え?地球は消滅しちゃうんじゃ…」
不思議そうに首を傾げる。
「そうだ、地球は消滅する。でも、世界は消滅しない」
俺の言葉に、より一層不思議そうな顔をする。
「どういうこと?」
「時空の狭間を見つけたんだよ!パラレルワールドに繋がる道!」
場が一瞬、凍りついたように静かになった。
「私は…好きだから」
「?」
「私は、遼河くんが可笑しくなっても、愛してるから」
綾はそういうと、直ぐに立ち上がって部屋に帰って行った。やっぱり、こんな話を真面に聞いてくれるはずがなかった。