これからスマホを買おうとしてる貴方へ
既にスマホをお持ちの方はなるべく読まないでください。
そして僕はスマホを持ってません。それを前提に読み進めてください。
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「これを見て」
彼女はそう言って自分の指先を、僕の眼前に差し出す。
無数の傷痕。指先。剃刀の傷だ。間違いない。
特に深いのは親指だ。その傷は深く皮膚を切り裂き、えぐられた中から赤々とした筋組織の一部が、悲痛に顔をのぞかせていた。
「これがスマホよ・・」
僕は困惑した。指先の傷とスマホ。その関連性が、僕には理解出来なかった。
「スマホはスライドが命なの」
彼女はそう説明する。ボタンを押す事により操作を行う携帯。対し、スマホは多くの作業をスライドで行う。そしてタップ。彼女は言う。スライドミスは命取りなの。
「これを見て」
彼女は僕に一枚の写真を差し出した。"スマホ練習機" 写真には黒マジックでそう書きなぐってあった。
写真には横15センチ程度の木版。そう、スマホサイズだ。
そこに「1」「2」「3」・・と「1」から「9」までと数字の配列が並ぶ。恐らくスマホのボタンサイズの間隔なのだろう。
そして各数字の間と間には、鈍光を放つ鋭利な剃刀の刃先が、獲物を待ち構えるが如く顔を覗かせていた!
「この刃先に触れぬよう、指先をスライドさせるのが最初の訓練なの!分かるかしら?」
彼女は言う。これはスマホを使う者、全員が通る宿命的道のり。
そうだったのだ。生半可な気持ちじゃスマホは使用出来ない。この厳しい訓練を通過した者だけが、スマホの栄光に足を踏み入れる事が出来るのだ。知らなかった。
弱者は切り捨てる。それがスマホ世界。目を背ける事は出来ない。これが現実だ。
「次はこれよ」
と言って彼女が見せた写真には、池の真ん中に一本の丸太があり、そこに片足立ちで立ち、スマホを操作する彼女の姿が映し出されていた。横には無数のワニ。分かりやすい。そしてベタベタにベタだ。
「分かるかしら?電車、そしてバスなどで移動しながらスマホを操作するってのは、並大抵の集中力じゃ出来ないの!!! 私はこのスマホ合宿の "地獄丸太" の上で、チャコフスキー罪と罰、上下巻全文を打ち終わるまで、この丸太を降りることを許されなかったわ・・」
スマホ合宿。。。そんなものがあるのか。。。
その前に、ひとつ言っておく、罪と罰はチャイコフスキーでなくて、ドストエフスキーだ。そんなことはどうでもいい。とりあえず辛いって事だけは理解できた。
「最後はこれよ!!!!!」
すさまじい形相で、彼女は手にしたスマホの動画映像を見せてくれたのだが、そこには荒馬に乗って、無数の矢を交わしながらメールの送信をしている彼女の姿だった!!!!
「分かるかしら!!!!!!」
彼女の眼球が最強に充血してるのが分かった!そうか!スマホは今までの携帯電話より画面サイズが大きい!つまり歩きながら画面を見ていると、その視野の大半が画面に奪われる為、他のものが見えない、つまり危険!(←歩きながらメールとか打つと自転車にぶつかりそうになったりとか)だからこそ、視野を拡げるため、メールを打ちながら無数の飛び交う弓矢をよけながら進むという壮絶な訓練が必要なのだ!!!!
これがスマホなのか!!!!! これがスマホの世界なのか!!!
「スマホは命がけなのよ!貴様に分かるかしら!!!!この苦痛が分かるかしら!!!!」
・・・よく分かった。。。本当によく分かった。。。
彼女の目からひと筋の涙が流れた。苦難を乗り越えたものだけが見せる暖かい涙、切ない涙。
「・・・これがスマホなのよ。。。」
そういい放ち、彼女は充血した目を見せ、「貴方にその覚悟があるならば、いいわ。いますぐSoftBankショップに行き、スマホを手にしなさい!」といい放ち、背を向けて、店をあとにした。
彼女の着ていたTシャツの背中には「孫正義」と書いてあった。
AUのiPhoneは彼女には邪道なのだろう。そうだろう。iPhone以外のスマホなんてもってのほかだろう。そうだろう。
ちなみにぜんぜんどうでもアレですが、僕の古いパソコンは「スマホ」を打つと「須磨穂」と出ます。なんか「命名にがんばられすぎちゃった娘の名前」みたいですね。
でもって、これ書いたあとに、実際スマホ買ったのですが、いやー、別になんも難しくないッスねw ちょっと入力に手間取ったぐらいでw
えっと、終わりですw ごめんなさい。。w