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ライアー/ラブ  作者: 雨宮リュウドウ
4/5

弁当

投稿が遅れ、申し訳ありません。今回の話ではあまりストーリーが進展しませんが、続きをすでに執筆中ですので読んでみてください。


今後、全話共通のルールですが「○」で区切られた段落は暦ちゃん視点、「●」で区切られた段落は将太君視点で物語が進んでます。


一応、読んでもらえれば分かるように一人称なんかには気を配っていますが、何分素人の小説ですので、前書きで説明しておきます。


「ふぅ~、完成だ」


わたくし、或世暦は一仕事やり終えた達成感に浸っていた。


早朝五時起きで始めた作業が、ようやく終わったのだ。


長い長い道のりだった。


とても熾烈な戦いを潜り抜け、ついに私は偉業をなしとげた。



そう、私はいま………お弁当を完成させたのだ。



……ま、約束だからな。


昨日メールで弁当持って行くって言っちまった。


あの時は、これから将太君と親密な関係になっておけるようにと思っての提案だったんだが、よく考えれば私は料理なんてほとんでできないんだった。


もっと他の方法で高感度を上げればよかったが、あいにく恋愛の経験なんて私にはなく、パッと思いつくのが喰いモンを持って行くことだったわけだが。


まぁ、今日の朝、弁当を作り始めた時にはどうしようかと思ったが、結果的には、少なくとも形だけはまともなものに仕上がった。


さて、そろそろ学校に行かなければ遅刻してしまう。


私は鏡の前に立ち、身だしなみを整える。


もしかしたら、私はこの身だしなみを整える瞬間に一番気を使っている気がする。


自分で言うのもなんだが、私はガサツな方だ。


普段はタンクトップで居たりすることが多いし、髪に寝癖とか着いてても気にしない。


だが、学校ではそうはいかない。


なぜなら学校での私は、目だたないけれど清楚で清潔感のある、大人しく体の弱い女の子なのだから。


キャラクターがキャラクターなだけに、化粧やおしゃれはしなくていいのが私にとって救いだが、髪には念入りに櫛を通し、アイロンをかけた制服にはほこりや汚れが付いていないか、何回も何回も確かめる。


それから学校での自分、可憐な女子の表情で笑ったり、困ったり、悲しんだり、といった表情を作る練習をする。


馬鹿らしい話だが、これが非常に大事だ。


様々な組織、集団の中に、別人を演じて忍び込んだ経験は多いが、だからこそ言える。



どれだけ別人になる経験を積んでも、本人の個性や癖を完全に消し去る事はできない。



例えば、予想できない事態が突然起こった時、もしくはわずかに気を緩めた時、どれだけ意識しても咄嗟に自分自身が普段している動作を行ってしまうものだ。


だからこそ、別人として行動するときは念入りに準備をし、出来る限り個性を消さなければならない。


高校に入学して二か月になる。さすがにもう「ボロ」がでることはないと思うが、集団に溶け込んで満身した時こそ、気が緩んで素が出やすくなるのも確かだ。


妥協は許せない。


表情をころころ変える事五分。


最後に自分で納得できる、とびきり儚い微笑を浮かべる。


「よし」


偽装準備完了。外に出たら、私は完全に別人となるだろう。


服装同様中身を念入りに確かめたカバンと、小さな袋に入れた弁当を持ちドアを開ける。


「いってきます」


私以外に誰も住んではいないが、そう呟いて、私は学校へ向かう。



授業中、俺、霧ヶ峰将太は暦さんをちらりと見る。


暦さんの席は俺の席から右に三席の位置にある。


隣同士ではないが、お互いに顔を見合わせる事が出来る。


昨日から俺たちは恋人同士という事になっているので、緊張と好意、好奇心と期待の入り混じった複雑な表情を作って暦さんに視線を向ける。


むこうもちらりとこちらを見て、視線が合うと、さっと顔を背ける。


心なしかその顔は紅潮しているように見える。


ククク、むこうが、暦さんがこちらの思惑に気づいたそぶりはない。ま、当然か。


昨日の今日で、俺が彼女の遺産を狙っている事が露見するはずがない。


彼女は自分の親が遺産を残している事すら知らないわけだし、あの表情は完全に俺に惚れている目だ。


良い事だ。罪悪感を感じなくはないが、自分に好意を抱いている相手と言うのは付け入りやすい。


今日はお手製のお弁当まで作って来てくれてるらしいしな。嬉しい事だ。


先程、屋上で二人、弁当を食べようという内容のメールが送られてきた。



チャンスは、その時だ。



俺は机の下に目を落とす。


手のひらには、とても小さな、「おもちゃ」がある。


おれが即席で作ったその「おもちゃ」。


仕掛けるなら、昼飯時しかない。



ククク、あいつ完全に私に惚れてやがる。


授業中、ちらりと見た将太君の顔。


緊張と好意、好奇心と期待の入り混じった複雑な表情、まさしく初々しい恋人に向けるそれだ。


バカだな、こっちが演技をしているとも知らずに。でも、可愛いぜ、そういうの。


将太君には先程、屋上で一緒にお弁当を食べようとメールしてある。


メール作成の時に愛用している少女漫画が手元にないので、短いメールとはいえ作成に手こずったが、まぁ、なんとか学校での大人しい女子というイメージを崩さずに済んだだろう。



そこがチャンスだ。



今日、早起きして作ってきたこの弁当。


なにも高感度アップのためだけに、苦手な料理をしたわけじゃない。


ちょっとした仕掛けを作ってある。


食べた瞬間、文字通り骨抜きになる仕掛け。



その仕掛けは、卵焼きの中に。


ありがとうございます。

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