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ライアー/ラブ  作者: 雨宮リュウドウ
2/5

彼女の事情

今回の話と次回の話は、あらすじにまとめている内容を文章にしたものです。


少し退屈かも知れませんが、よろしくお願いします。

私、或世暦あるせ こよみが霧ヶ峰将太きりがみね しょうた君に告白した、その日の夜。


私は信頼できる情報提供者に、電話をかけていた。



「よう、上手くいったぜ。作戦通り、ターゲットの恋人になった」



これが本来の私の口調。学校では内気で病弱、読書が好きで通っているが、それは演技だ。


そう、はっきりと言えばあの告白も演技。


私が彼を好きだと言うのは嘘だ。


もちろん、告白し、付き合い始めたのだから、しばらく将太君と私は恋人同士。


それは納得しているし、そもそも私はそうなる事を狙って告白したのだ。


「にしても本当なのかよ?あの将太君の親父さんが莫大な遺産を残しているってぇのは」


そう、私が彼に告白し、恋人になろうとした理由がこれ。


遺産……はっきり言えばお金を手に入れるためだ。


『ああ、確かな情報だ。しかも、当の霧ヶ峰将太自身は、自分の親がそんなとてつもない額の遺産を残しているって事を知らないらしい』


チャンスだ。


将太君は自分の親が残した遺産について何も知らない。


という事は、霧ヶ峰君にバレないように事を終わらせれば、なんの事件や問題にならずに、大金を手に入れる事が出来るってわけだ。


『だが問題なのは、その遺産がどういうものなのか、どこにあるのかが分からないって事だ。推定価値10億ドルというのは確かだが、それが現金なのか、美術品や宝石の類なのか、それともどこかの大国を脅かすような機密情報なのか、薬や武器なのか、それがどういう方法で保管されているのか。まったく調べがつかない。なんとか日本国内にあるらしいという事まではつきとめたんだが』


「問題ねぇ。なにせ10億ドルだ。最悪、長期戦も覚悟している。それにいままでも、そういった得体の知れないモンを探し出して来たじゃねぇか」


そのために告白までしたんだ。演技とはいえ、さすがに恥ずかしかった。


だが、どこにあるのか分からない遺産を見つけるには、関係者に近づく必要がある。


この場合、親の遺産の関係者といえば……息子、霧ヶ峰将太君に他ならない。


「ま、情報サンキュー。報酬はいつも通り、儲けの二割って事で」


『了解。成功する事を祈っているよ』


そういって、電話を切った。


「よし、明日から本格的に行動開始だ」


今日、将太君に教えてもらったアドレス宛てにメールを一通作成する。


お金儲けのためにいろんな事をしてきた私だが、実はこういう普通の女の子っぽい事をするのが一番苦手だったりする。


「え~と、今日はどれを参考にするかな……」


そんな時、参考にするのは少女漫画。


私の趣味としては少年漫画が好きなんだが、少女漫画はテンプレート的な女の子の行動が書かれていて参考になる。


といっても、最近は突飛な設定の少女漫画も増えてきているらしいが。そのあたりは良く知らない。


「よし、これでいいか」


一冊の少女漫画、その一場面を参考にメールを作成する。



『暦です。夜分遅くにごめんなさい。明日、お弁当を作って持って行こうと思います。二人分用意するので、よければ食べてみてください❤』



「まぁ、こんなもんだろ」


最近の女子のメールは長いと聞くし、もう少し長く文章を書いた方がいいかもしれないが、私にはこれが限界だった。


私自身、連絡事項は簡潔明瞭の方が嬉しいし、なにより偽りの関係とは言え、恋人相手に甘いセリフなんてメールであっても浮かんでこない。


「霧ヶ峰……将太君、か」


信頼できる情報筋である中年の親父から送って貰った霧ヶ峰将太の個人情報、その中から写真を取り出し眺める。


…………正直、結構タイプなんだよな。


これは本心。


漫画じゃないんだ。人間は人間をいきなり好きにはならない。


今日、私が霧ヶ峰君に告白するまで、高校入学から二か月が経過している。


事前に『遺産』について情報を得ていた私は、ターゲットである霧ヶ峰将太君に近付くために、彼と同じ学校に入学し、彼の好みそうな人格を偽ってきた。


そして、二ヶ月間。彼を見てきた。


おおっぴらな監視は控えてきた。恋人になるまでは、不要な警戒心は与えたくなかったからだ。


だが、教室内にいる時や、廊下をすれ違う時、帰り道で偶然見かけた時など、できるだけ彼を見るようにした。


そうして彼を見続けてきた二ヶ月間で、私が彼に好意のようなものを抱いているのは確かだ。


学校での外面は別として、私の本性は自分でいうのもなんだが男勝りだ。


こんな悪巧みみたいな事をずっとやって生きてきたんだ。当然、修羅場も越えてきた。腕っ節にも自身がある。


だから、男に守られたいとは思っていないし、期待していない。


むしろ、私は私が守ってあげたくなるような男子が好みだ。


そういう意味で霧ヶ峰将太という男子はストライクゾーンど真ん中だ。


繊細そうな細い指、やわらかそうな髪、大人しめな性格。


なにより顔が可愛い。


だから、本当ならこのまま付き合ってもいいかな?なんて思うところだけど。




「ま、世の中一番大事なのはやっぱりお金でしょ」




ターゲットの持つ宝物を盗む際、ターゲットと恋に落ちそうになったことは、いままでにも何度かあった。


だが、それでも或世暦は誰かのモノにはならない。


だって私にとって『金』より重いものはないのだから。


自分でも酷い女だとは思うけど、この生き方は変えられない。


残念だったな、将太君。私に惚れても無駄なんだ。


まぁ、来世あたりに出会ったら、次は本気で付き合ってやってもいいかもな。


「よし、今日はもう寝るか」


ベッドに横になった。


だが。


「…………」


思い直して携帯を開く。



『暦です。夜分遅くにごめんなさい。明日、お弁当を作って持って行こうと思います。二人分用意するので、よければ食べてみてください』



まだ送信していなかったメールの本文から『❤(ハート)』を消して、それからようやく送信ボタンを押した。


いや、その……さすがにハートは恥ずかしすぎる。


読んでいただき、ありがとうございました。

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