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第十五話 おっさんの結末

 

 「まったくっ。まぁたおっさんのせいで酷い目にあったっ」


 俺は息をまだ少し切らせながら校庭を歩き回ってた。

 さっきは辛かった。印南が追いかけてくるのから全力で逃げ回りながら、サッカー場を一通り走り入り口を探していたのだからまぁそれも無理はない。元凶のおっさんも俺が走り回ったので疲れたらしく息を少し切らせていた。

 そして結局、今まで入り口は見つからなかった。タイムリミットまであと約三十分。

 この最終地点―――校庭で入り口が見つからなかったらゲームオーバーだ。

 俺は少なからず焦りを感じていた。印南に告白だなんてそんなことは絶対にしたくないし、そして何よりこの不幸の元凶であるおっさんとしばらく共に生活しなくてはいけないなんて、そんなの身が持つはずがない。

 俺はなんとしてでも見つけようと校庭を彷徨き廻っては、必ずここにあることを心から祈っていた。

 しかし、そんなことを思いながら、俺はおっさんのことがふと頭に過ぎって、そしてあることに気がついた。

 ……そうか、見つかったらおっさんとももう会えないのか。

 当たり前っちゃ当たり前だし、それを何よりも望んでいるのは俺なのだが、しかし俺は少し寂しさを感じていた。

 確かに俺は平凡を望んでいた。それにおっさんが来てからというもの、とにかく散々な目にあった。意味の分からない噂がたつし、ズラ取ったし、スカート下ろすし、疲れたし……。

 しかし楽しく感じていた自分も何処かにいた。辛いだけだったのに。嫌だったのに。疲れたのに。良いこともこれといって無かったのに。

 そして気づいた。偶にやってくるそんな非日常もそれほど悪いものではないと。俺はもしかしたら平凡の中に非凡も何処かで求めていたのかも知れないと。

 そして思いだした。1年前、この東京に田舎から出てきたときも少し非日常も夢に見ていたことを。

 そんな自分の心に気づくと、暫く変化を望まなかった自分の中の時間がやっと動き出した気がした。

 そう、俺はただ変化をするのが怖かったんだ。きちんと変化を遂げられるかが怖くて、いつも一歩踏み出せなかっただけだったんだ。だから、東にもずっと告白出来なかった。―――振られるのが怖かったから。

 しかしそんな自分の臆病な部分に気づき正面から見つめた今、俺は少し勇気が湧いた。変化なんか誰だってきっと怖いんだ。それは辛くて、苦しいものかもしれない。けどそれを通り越した所にあるのはきっと笑顔や楽しいことのはずなんだ。ちょうど、このおっさんが来てからの変化のように。

 気づけば俺にそんなことを気づかせてくれたのはこの不幸ばかりを運んできた筈のおっさんだった。本人は全くそんな自覚はないだろうが、しかしおっさんは俺の心を少なからず救ってくれていた。……って、俺なんて事を考えてんだかっ。クスッ、気持ち悪ぃーっ。

 俺はこんな事を考える自分に笑いを零しながらも、しかし本当におっさんに感謝の気持ちを抱いていた。しかし、当然ながら俺はそれを素直に伝えられる筈がない。それを思って俺がおっさんのことを見ていると、それに気づいたおっさんがこちらを向いた。

 するとそんな感謝を伝えたいと思ったはずのおっさんの気の抜けた顔を見て、俺はまた思わず笑いそうになった。こんなものに俺は救われたのかと思うと可笑しくて仕方がない。

 そう思った俺は、視線を離して何とか笑いを堪え、なんだかおっさんにちょっかいが出したくなって何となく独り言のようにぼやき始めた。


 「あぁーあ、入り口が見つかったらとうとうおっさんともお別れだなぁーっ」


 俺がそうぼやき始めると、それに気づいたおっさんがその言葉に同意した。


 「あぁ、そしたらお前ともお別れだなっ。その方が清々するけどなっ」


 「全くだっ。おっさんのせいで俺は今日どんだけ酷い目にあったことかっ」


 「それはもともとお前の運が悪かったからだっ」


 「いや、おっさんのせいだっ。いつもはもう少し運が良いもんっ」


 「いや、ぜってぇーおっさんのせいじゃねぇよっ?だって俺めっちゃ運いいもんっ、スーパーのガラガラクジ大会でティッシュいっぱい貰えんもんっ」


 「いや、それ全然運良く無いだろっ。俺はジュース一本くらい貰えんもんっ」


 「いやっ、でも一回うまい棒当てたことあるからな?」


 「それはティッシュの代わりだろっ。言っとくけど、俺サラダ油当てたことあるからなっ」


 「なっ、それ言ったら俺だって……、宝くじで300円当てたことあんもん……」


 「俺は1000円当てたことあるからな?」


 「はぁ!?嘘だぁーっ!お前がそんなのあり得るわけねぇだろーっ!?」


 「いや、当てたもんっ、本当だしー」


 「いやっ、嘘だしー」


 「いやいやっ、本当だしー」


 「いやいやいやっ、嘘だしー」


 「いやいやいやいや本当だしー」


 「いやいやいやいやいや……」


 「……もういい加減に止めろよっ!」


 そう言って俺たちはどうでもいいような争いで睨み合った。しかし、少しするとあまりに馬鹿馬鹿しくって止めた。そしてその後少し間を置いてから、その沈黙の後に俺はぼそっと呟いた。


 「……でもまぁ、なんだかんだで今日は少し楽しかったよっ、おっさんといて」


 俺がそう呟くと、おっさんはそんな俺の顔を見て少し驚いたように目を見開いた。そしてその後、おっさんもボソッと呟いた。


 「……疲れたけど、俺もまぁ少しは楽しかったぞ……」


 おっさんはそう一言言うと、ポケットの中へすっぽりと潜っていってしまった。



 それから暫くの間、俺たちは無言で探し回っていた。しかし、今だ入り口は見つからない。

 あと残り時間は二十分を切っていた。それを見て俺はかなり焦り始めた。なんとしてでも、なんとしてでも早く見つけ出さなくちゃいけないんだ。……あんなに恥ずかしい台詞まで言ったんだから、絶対に。

 俺は校庭を彷徨き廻っては、人目のつかなそうな場所を重点的に探し廻っていた。校庭の隅にの方に並んでいる木の根元や草花の中を探し回る。考えてみればここが一番怪しいんだ。今の時期体育の授業は体育館で行われているから、今の校庭の使用用途は運動部が少々走り込みをするのみ。入り口は学校内の特にあまり使用されていない場所に現れるというのだから、この無駄にだだっ広い校庭はその条件に最適なんだ。

 そして残り時間はあと十分を切った。それほど暑くなかったこの梅雨の日の夕方に、額からするりと汗が流れた。

 俺の足取りもさらに落ち着きが無くなり急ぎ始める。息も少しばかり荒くなり始めた。

 部活動の生徒ももうほとんど帰り始めてほとんど人が居なくなった校庭で。俺は一人焦燥に駆られながら校庭を駆け回っていた。入り口を早く見つけなくちゃ、見つけなくちゃ。なんとしてでも、何があっても。校庭にあることを心から信じて、そして必死に探し回る。

 ついに、残り時間は五分を切った。下校時間五分前のチャイムが鳴った。

 その時だった。

 焦りを浮かべる俺の目に、その時一筋の柔らかな光が映った。俺はその光を見つけると初めは驚きを見せたが、しかしその後まるでその光に引き寄せられるように光の方へと近づいていった。すると刹那、おっさんが突然声を上げる。


 「あった……っ!あったっ!あったぞ入り口がっ!」


 おっさんはそう声を発するとポケットから勢いよく顔を出して光の方向を見た。その光を見つかるとおっさんは嬉しそうにポケットを飛び出して、そして落ちそうになったところを俺の手に救われる。俺が地面に手を近づけてやると、おっさんはその穴に向かって一目散に走っていった。俺は、その光に唖然としながら暫く茫然とその光を見つめていた。

 それは鈍く、しかし優しそうに柔らかく光り続けながら、ひっそりと木の根元に咲いていた。とても綺麗な暖かな光りだった。



 「やったぞっ!これで帰れるっ!これで母ちゃん達にもやっと会えるんだっ!」


 おっさんは光りのすぐ近くまで行くと、その光りをしっかりと見つめながら嬉しそうにそう言葉を吐いた。俺はそんなおっさんを茫然とまるで夢のように見つめていた。

 するとそんな時、今度はおっさんとは別の声が響いた。


 「おっ!智裕(ともひろ)じゃねぇかっ!お前ぇ何処にいたんだぁーっ?嫁さんが帰って来ねぇって心配しとったぞっ?」


 俺はその声を聞いてびくっとした。とっ、ともひろ……?

 俺はその声のした方向を見つめた。前方方向、入り口周辺だ。すると、その草の中からひょこっとおっさんのようなものが顔を出した。俺はその姿を見て思わず驚く。


 「おっ、おっさんがもう一人っ!?」


 俺がそう声を発すると、向こうも俺の姿を見てよほど驚いたようで悲鳴を上げながら逃げていこうとした。しかし、そんな姿を見て先ほどまで入り口をじっと見ていたおっさんが声を上げる。


 「昭彦っ!逃げなくて大丈夫だぞっ!この人間は俺をここまで連れてきてくれた奴だっ!怖がらなくても大丈夫だっ!」


 おっさんがそう声を上げると、逃げようとしたもう一人のおっさんが立ち止まった。そして怯えた声でおっさんに聞き返す。


 「ほっ、本当なんかそれはっ?あとここまで連れてきてくれたって、お前どうしたん?何があったん?」


 「それが訳あってレーダーが壊れちって、そんで此奴が俺の事を連れてきてくれたんだっ。だからそんなに怖がるでねぇよっ」


 おっさんはそう言って仲間らしいもう一人のおっさんに声をかけた。その声は俺と話をしていた時よりも幾らか訛っていた。どうやらだいぶ仲間を見つけて安心したようだ。

 

 「本当かっ?なら安心だぁ。いや、おらてっきりこの前健太と典明をテレビ放送した奴らみたいんかと思ってぇ。いやはやそれはすまんかったな人間っ」


 それを聞くとおっさんのようなものは俺に軽く頭を下げた。俺はそんなもう一人のおっさんにどう対応しようかと焦っていると、その時おっさんがまた少し大きめな声でその周辺に聞こえるように声を上げた。


 「おいっ!聞こえたろっ?そういうことだっ!みんな出てきても大事だぞっ!」


 おっさんがそう声を上げると、するとその後その周辺の草花がガサガサと蠢きだした。そして次の瞬間、その草花の中から何十人ものおっさんのようなものがそこからわさわさと現れた。うわっ!……正直気持ち悪ぅっ!

 俺が心の中で密かにそう思っているとそのおっさん達が安心したように声を発し始めた。


 「なんだぁーっ、おまん智裕の恩人かいな、心配して損したわぁーっ」

 「智裕の恩人なら心配ねぇなっ!ひゃー、驚いたっ」

 「いや、逆におりゃ心配だわっ、だってあの不幸の塊みたいな智裕と一緒にずっと居たんだろ?大丈夫だったんかぁー?恩人さんはっ」

 「あぁー、確かにそりゃ心配やなっ。でもここに生きておるんやから大丈夫だろっ」

 「大事じゃねか?生きてるんだし。生きてりゃなんとかなるべ」

 「まぁ、そりゃ同感さね」


 多少方言が入り交じっているのが気になるが、しかし安心したらしいおっさん達は俺の安全まで気にかけてくれるような優しい人たちだった。……生きてるっていう言葉に若干不安を感じたが。まぁ、盗人をやっているわりに中身はいい人ばかりのようだ。生計を立てるための盗人だからそれにも納得がいった。

 ……それはそうと……。

 しかし俺はそれよりもさっきっから気になっていることがあった。俺はそれを問いかけようとおっさんに話しかけようとする。


 「それはそうとおっさん、あのさ……っ!」


 「……ありがとうよっ」


 しかし俺の言葉はおっさんの言葉に遮られた。俺はその言葉に自分の話そうとした事を忘れて、思わずおっさんに聞き返してしまった。


 「……えっ?」


 するとおっさんは俺に背を向けながら恥ずかしそうに今度は俺に怒鳴るように言った。


 「……だからっ!ありがとうよっ!」


 おっさんは確かにはっきりとそう言った。俺はその言葉に衝撃を受けた。何故なら、おっさんがそんな言葉を俺に言ってくるなんて一つも思わなかったからだ。

 俺がそんなおっさんの言葉に驚き何も言葉を返せずに只立ち尽くしていると、おっさんが言葉を続けた。


 「……ほら、なんだ……。俺だけじゃ、きっとここまで辿り着かなかっただろうからなっ。だから……、そのお礼だっ」


 おっさんはそう言うと、さらに一歩踏み出して光りへと段々近づいていった。


 「……まぁ、なんだっ……元気でなっ!」


 おっさんはそう言うと、俺に背を向けたままこちらに手を振り、そして光の中へと吸い込まれていった。

 その後に、おっさん達が俺に感謝を述べながら光の中に消えていく。


 「じゃあな人間っ!智裕を助けてくれてありがとうよっ!」

 「見直したぞ人間っ!ありがとうなっ!」

 「智裕のことありがとうなっ!さいならっ!」

 「ありがとうなっ!じゃっ!」


 おっさん達が段々と光の中に消えてゆく。と、そんな時俺に声をかける者が現れた。


 「おいっ、そこの人間っ!」


 俺がそう言われて声のした方向を向くと、そこにはおっさんに確か昭彦と呼ばれていた者が俺を見上げていた。


 「……ん?何?」


 俺がそう尋ねると、そのおっさんは俺の言動をきちんと聞いていてくれたらしく、俺に親切に尋ねてきてくれた。


 「さっきお前智裕に何か言いかけたろっ。伝言なら俺があいつに伝えとくぞ?」


 そのおっさんは俺にそう尋ねてきた。その言葉に俺は俺が言いかけていたことを思いだして口に出す。


 「あぁ、あれは実は俺の名前もおっさんと同じともひ……いや、いいやっ」


 俺はそう言いかけて途中で止めた。おっさんがこちらを見て首を傾げている。俺はそれを見つめて、そして言葉を言い直した。


 「……じゃあ、おっさんにありがとうって言っといてくれ」


 俺はそう言うとそのおっさんに微笑み返した。

 するとその俺の気持ちを察したらしいおっさんは、俺に微笑み返すと光に向かっていった。


 「そうかっ、じゃああいつに伝えとくよっ。元気でやれよっ、人間」


 そう言うと、そのおっさんも光の中に吸い込まれていった。

 暫くして、その場にいたおっさん達がすべてその光の中に消えた。刹那、下校を知らせるチャイムが学校に鳴り響く。そんな人気のない閑散とした校庭に、俺は一人立ち尽くしていた。




 

 「やべぇっ!遅刻するっ!無遅刻無欠席記録がぁっ!」

 

 俺はある梅雨の日に珍しく寝坊をし、急いで学校へ向かっていた。いつもは十分は余裕に家を出るものの、今日はホームルーム開始十分前だというのに家を飛び出していたという状態で、俺は学校へ走って向かっていた。そしてチャイムと争うかのように教室まで走り出す。おかげでチャイム五秒前に教室へ滑り込むという離れ業を見せる羽目になった。しかし間に合ったからよしとしよう。

 昨日あれだけ噂が立ったというのに、今日は俺に関する噂は一つも流れていなかった。どうやらこの学校の人は飽きっぽいらしい。印南も全く昨日俺が散々な噂に見舞われた事なんか忘れたように、いつものようにどうでもいいような会話を持ちかけてきた。

 俺は、昨日のことが嘘のようにまたいつもの日常の中にいた。平凡で、平和な日常。

 しかし今日は今までの日常とは違かった。何故なら、俺は変化することを望んでいたからだ。

 俺は今日、一つの決心をしていた。おっさんと交わした約束。それを必ず実行するという決心を。

 そして俺は二時間目と三時間目の間の業間休みに東のもとまで行くと、あることを告げた。


 「昨日の話の続きがしたいんだっ。昼休みに昨日話をした場所で待ってるから、必ず来てくれるかなっ」


 俺がそう告げると、それを聞いた東が顔を少し赤らめながら頷き、盗み聞きしていたクラスメイトが冷やかし沸き立った。そしてそれを見ていた印南が驚いたような表情を見せてから、その後面白そうに微笑んだ。




 「……俺の好きな人は誰かって話だったよね?」


 「う、うんっ!」


 昼休み、俺と東は約束通り昨日の場所で話をしていた。それは紛れもなく、昨日の話の続きを最後までやり遂げることだ。

 しかしやはり緊張するものは緊張する。初めてだから尚更だ。

 だが俺は決心をして真っ赤な顔で言い放った。


 「俺の好きな人は……っ。……あっ東、東 美衣という女の子ですっ!東っ!俺とつっ、付き合って下さいっ!」


 俺は噛みながらも必死にそう言うと、真っ赤な顔を隠すように頭を下げて返事を待った。

 振られたって良い。気味悪がられたって良い。ぐちぐち片思いを続けるくらいなら、当たって砕け散ってしまえっ!そういう思いで挑んだ告白だった。振られるのは分かっている。でも、俺は東にこの思いを伝えられただけで十分だ。

 しかし、そう身構えていた俺に掛けられた言葉は、俺にとって予想外極まりないものだった。


 「……。……えっ!嘘ぉっ!」 


 東は最初驚きを隠せないような状態だった。まぁそれも無理はない。恋愛相談を持ちかけたはずが、そいつが自分の事を好きだったなんて予想外だろう。むしろそれが正しい判断だ。

 俺はいつノーの返事が来るのかとドキドキしていると、その時東が返事をした。


 「……はいっ!喜んでっ!」


 「……えっ?」


 俺はその言葉を聞いて思わず疑問符を浮かべてしまった。

 ヨロコンデ……?それはなんだ?どういう意味だ。

 俺が頭を混乱させていると、東も恥ずかしそうに顔を赤らめながらもじもじと告白をしてきた。

 

 「じっ、実はねっ、山本君っ。私の好きな人っていうのは、山本君の事だったんだっ!……ほっ、ほらっ!入学式の時講道館の場所を教えてくれたでしょっ!それに私が日直で黒板の一番上が消せなくて困ってるときに助けてくれたり……っ!他にもいろいろと助けて貰っちゃって……。それでね、私実はずっと山本君の事が気になってたんだよ?……って山本君っ!?どうしたのっ!?おーいっ!お――――いっ!!」


 俺は頭を混乱させながら、東の話を聞いている最中に気絶して倒れた。その日意識が戻った時にはもう放課後だった。

 そしてその後告白の返事がオーケーだった事を知って、再び嬉しさに昏倒することになったのは言うまででもない。




 「智裕君には絶対に負けないんだからぁっ!」


 「俺だって美衣に負ける気なんかしないねっ!」


 「なぬぅーっ!」


 「だってなんてったって今俺が持ってるゲームそれだけだから、毎日のようにやり混んでるもんねーっ」


 「わっ、私だって……一ヶ月に一回くらいは、弟とやって、負ける……ったりなんかしてないもんっ!」


 「はいはいっ、じゃあ、いつもみたいに負けたら罰ゲームなっ!じゃあ、今日は……」


 「負けたらおやつ抜きでっ!どーんとこーいっ!」


 「……おやつ持ってないんだけど、それってもしかして俺がおやつ買わなきゃいけない……」


 「どーんとこーいっ!」


 「何かずるいぞっ!負けても勝ってもダメージ受けるし、それに絶対おやつ美衣が持って帰っちゃうだろっ!」


 「うぇっ!?そっ、そんなこと、考えてないもーんっ!」


 「うっそだぁーっ!」


 そんな会話を交わしながら、俺は東―――めでたく俺の彼女となった美衣と共に俺の家に向かっていた。今日は待ちに待ったデートの日であり、今日は前々から約束していたゲームで一緒に遊ぶ予定である。因みに、デート地が俺の家であるという点は、……俺の財布の中がすっからかんだからという理由が含まれている事は秘密である。……あーぁ、来月からもっと節約しなくちゃ……。せめてバイトが出来たらなぁー……。(俺の高校はアルバイト禁止)

 そんな思いを胸に抱きながら、俺は家の前に着いたので鍵を取り出してがちゃがちゃと開け始める。


 「まぁ、少し汚いけどそこは許せよー」


 実は昨日だいぶ散らかっていたのを慌てて片付けたのだが、それは言わずにそんな事を呟いて俺は扉を開ける。


 「まぁ取り敢えず入ってくつろいでてよっ、俺はお茶注ぐからさっ。テーブル辺りに居てくれると助かるかなぁーっ。はいっ、どうぞ遠慮しないで入ってー……えっ?」


 扉を開けたのに、東は一歩もその中に足を踏み入れようとしなかった。そればかりか、顔が恐怖に引きつっているように見える。

 俺は何事かと思って家の中を見た。すると、そこにあったのは信じられないものだった。


 「……おっ!ひさしぶりーっ!よっ、元気にしてたかぁー?」


 なんと、そこには我が家のように何食わぬ顔で俺ん家にくつろぐおっさんの姿があった。しかも、そればかりか周りに何人か他のおっさんも見える。

 美衣はその光景を見て驚きのあまり立ち尽くしており、俺もその光景を見て口をぱくぱくさせていた。


 「は、はぁ!?なっ、なんでおっさんがここに……!?」


 俺がやっとの思いでそう呟くと、おっさんがスルメを囓りながら思いだしたように現状説明をし始めた。


 「あっ、あぁ。まぁ、何かとこの世の中物騒だろっ。だからな、山本の家の近くに出てきた時は、ここを拠点にしようってなってよ、俺が案内して勝手にくつろいでるぞっ。俺らのことは気にしなくていいからさ、存分とくつろげよっ。今日はデートなんだろ?あーずまちゃんと」


 そうおっさんが説明してくれたので俺は理解した。そして靴を脱いでおっさんに近づいていくと、おっさんを握りしめてベッドの上に投げつけた。


 「くつろげるかぁーっ!!あと俺の恥ずかしい台詞返せぇ―――っ!!」


 俺がそう怒鳴っている最中に、美衣は驚いたように顔を強張らせながら家の中を指さして、


 「……もっ、もしかして、浮気相手っ?」


 とぱくぱくと呟いていたがそれは出来れば聞かなかった事にしたい。

 おっさんが目を回し、その周りにいたおっさん達がぎゃあぎゃあ騒ぎ、そして美衣が驚きのあまりずっと立ち尽くしている。

 今日は初デートの日。

 まだまだ俺の望む平凡で平和な日常は、暫くの間来そうにない。






 あとがきっ!


 この度は、『ちっさいおっさんみぃーつけたぁっ!』を読んで下さり、誠にありがとうございますっ!感想はいろいろとありますでしょうが(文章書くの下手過ぎとか、ぐだぐだ過ぎとか、しまりがないとか)、何でもいいので感想を頂けると嬉しいですっ。

 この話は、何となく只茫然と最初っから最後まで巫山戯てるコメディーものが書きたいと思って衝動的に書き始めて、一時のテンションに身を任せて投稿してしまったものでしたっ。その為に好き放題やりすぎて大変くだらない作品が出来上がってしまいましたっ。投稿するときは、きちんと話を考えてからするものですねっ。(深く反省。そりゃそうだ)

 この話の発生は、テレビで小さいおじさんの都市伝説を観たところから始まりましたっ。それから只漠然と、田舎から都会に出てきた少年がおっさんと遭遇する、という話を思いついて、そしてその漠然な話を基盤として暴走して出来上がったのがこの作品でしたっ。

 前回の連載作品『こっちにおいでっ!』でもそうでしたが、この話は主要人物の名前が最後まで出てこないという前代未聞の作品でしたっ。実を言うと、考えて無かった事もありますが、紹介するタイミングを失ったことも一因でしたっ。次からは気をつけます……。そして何人かは気づいていらっしゃるでしょうけど、おっさんと山本の名前である『智裕』は適当につけましたっ。そしておっさんと山本の名前が同じという設定は、入り口が見つかってから思いつきましたっ。(←とんだいい加減な作者だっ)

 途中で何を伝えたかった話なのか全く分からない意味不明の作品になってしまいましたが、しかし最後までこのくだらない作品を読んで下さった方々に感謝の気持ちを捧げたいと思いますっ。

 本当にありがとうございましたっ。

 それではまた機会がありましたらお会い致しましょう。

 さようならっ!


 迫り来る単語テストの畏怖に震えながら(勉強しろよっ!)


 


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