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憧れてはいた

作者: 高月水都
掲載日:2025/10/18

 テンプレもテンプレだろう。


【転生したら悪役令嬢なんて】

 

 使いすぎてネタ被りだろうと叩かれるほどのお約束。


 そんな悪役令嬢にわたくしは転生した。

「コーデリカ・サーティ・アルデバラン……」

 ゲームの内容は忘れたけど、第一王子の婚約者の公爵令嬢。生徒会の副会長として、ゲームの主人公をねちねち甚振る設定だった。


 甚振るも何も……。

「ただ、規則を破っている生徒に注意しているだけなのに……」

 つい漏れる愚痴。


「コーデリカさま。もしかして、またあの生徒ですか?」

 声を掛けられて、そう言えば今は友人たちを集めてのお茶会だったのを思い出す。


「あっ、ごめんなさい。ぼんやりしていたわ」

 謝罪を述べると隣の席に腰を下ろしていた第二王子の婚約者であるミーナ・スピカ公爵令嬢が気にしないでくださいと微笑む。


「コーディさまがお疲れなんてよほどなんですね」

 宰相子息の婚約者であるセナ・スコット伯爵令嬢がそっと甘いものを勧めてくれる。


「あのご令嬢に疲れるのは当然でしょう」

 一刀両断にするのはアイナ・ミリタリー伯爵令嬢。ちなみに将軍子息の婚約者である。


「異性相手と二人きりになってはいけない。かつて、それによって傷物にされたご令嬢が居たからできた校則。ましてや、婚約者のいる相手と一緒にいてはいけない。婚約を快く思っていない政敵が足を引っ張るために利用したことがあったからと言っても納得してくれず、ただのお友達とか言って……」

 アイナが何度も忠告したが、全く通じていなかった。こんな前例があると告げていてもだ。


「彼女のフォローをするコーディさまに疲労が溜まっているのも仕方ない」

 溜息吐いただけでそこまで言われるのは申し訳ない。


 本当は相手にしたくない。件の令嬢が乙女ゲームのヒロインで自分が悪役令嬢なのだ。相手にしたらどんな厄介ごとに巻き込まれるか……。


 だけど、放置をしているとどれだけの生徒が迷惑をこうむるか。それが分かってしまったから放置も出来ない。


 見事に悪役令嬢の道一直線なのだ。


「そう言えば……第一王子殿下が最近件のご令嬢と……」

「「セナ嬢!!」」

 セナの漏らした言葉に叱りつける二人。


 こちらを窺う様に何と言っていいのか笑って誤魔化す。


「そうね……そう言う話もあったわね。あら、このお菓子美味しいわね。アイナ嬢が持ってきてくださったのよね」

「はい。我が領地で最近作られるようになった野菜のクッキーで……」

 ああ。困ったと思いつつもお茶会の雰囲気を悪くするわけにはいかないので別の話題に変えて、話をしていくと。


「ミーナ」

 第二王子がお茶会に現れる。


「イクスさま」

「今、公務も終わったんだ。――淑女の皆様。お楽しみのところ申し訳ありませんが、ミーナを連れ出させてもらいます」

 挨拶をするとそっとミーナ嬢に手を差しだす。それを嬉しそうにミーナ嬢は顔を赤らめて手を重ねる。


 一枚絵のような光景。


「――綺麗ね」

 思わず言葉が漏れてしまう。このお茶会では誰かの婚約者が迎えに来たらお開きというコーデリカの趣味が反映されたお茶会になっている。


 前世からの憧れだったのだ。

 パワハラほどではないが、出たくもない飲み会やお茶会に出て居心地悪そうな状況の時に恋人が迎えに来て連れ出してくれる。まあ、別に出たくないわけでもなく楽しんでいるお茶会とかでも迎えに来てくれたら嬉しいものだ。


 愛されているんだなと実感できるから。


(他の攻略ルートだと悪役令嬢と言われるはずだけど、みんな婚約者と仲いいのよね。やっぱり、第一王子ルートなのかしら……)

 婚約者の第一王子……シルベスト殿下を思い出す。


 常に自信家で自分に出来ないことはないとばかりに新しいことに挑戦するさまを微笑ましく思いつつも危ない時はフォローをしていたつもりだった。


 案外、それが余計なお世話で心が通っていないのかと……。


 先日、久しぶりに二人とも予定がないのを確認してデートに誘ったのだが、

『コーディからの誘いを断るのは惜しいけど、急用ができたんだっ!!』

 などと告げてゲームヒロインと出かけてしまったのを見せつけられた。


「わたくしは何か足りなかったんでしょうか……」

 弱音が漏れる。

 破棄されるくらいならこっちから解消を求めた方がいいのだろうか。





 そんな矢先だった。

 学園の喫茶テラスでいつものメンバーと共にお茶会をしていたら。


「申し訳ありませんでしたっ!!」

 いきなり、件のご令嬢……ヒロインとシルベスト殿下が現れた。


「今まで副会長の発言が悪役令嬢の虐めだと気にしていなかったのですが、生徒会長に教えられて……」

 ああ、ヒロイン転生者だったんだ。いきなり謝罪されたから婚約破棄イベントがここで発生なのかと身構えてしまったけど、そうではなくて反応が遅れる。


「生徒会長を名前で呼んだら『馴れ馴れしい』と叱られて、気が付いたら生徒会長に振り回されて……。学園の校則を破った人たちの末路を後学のためにと実地に見せつけられて……。自分がいかに愚かだったかと思い知らされましたっ!!」

 ああ。婚約者がいるのに他の女性と親しくなって婚約破棄された男性(炭鉱行き)を見せたり、異性と二人きりになった女性(精神病棟行き)を見せたんですね。


 かなり怯えたように何度も謝罪して、去って行く件の女性の後ろ姿を見ていたが、

「コーディが苦戦するなど珍しいからな。俺が何とかしてみせたんだっ!!」

 ドヤ顔で告げてくる。どうやら、いつもフォローをしているわたくしが苦戦をするなんて珍しいと思ったから挑戦心の塊であるシルベスト殿下が何とかしようと動いたようだ。その考えは嬉しい気持ちもあったが、

「それでわたくしを放置して女性と一緒にいたんですね。婚約者を放置して……」

「うっ!!」

 恨めしくなって責めてしまうのも悪くないだろう。じっとそんな気持ちで睨むとシルベスト殿下はあたふたと慌てだす。


「い、いや……たまにはコーディが困っている時に助けて感謝されたいと……でも、やり方を間違えたんだな。すまない」

 落ち込んだように頭を下げてくる様に、そう言えば、前世のゲームの第一王子は傲慢で俺様な性格だった気がするが、少しだけ性格が変化している。


「いえ……わたくしも彼女にどう対応すればいいのか困っていたので」

 感謝しますと伝えると嬉しそうに顔を上げる。


 ああ、そう言えば、ゲームのコーデリカは第一王子のすることなすことを毎回貶して止めて……それで第一王子はますます意固地になってという流れだった。


(わたくしは挑戦したいことはさせて、そのフォローをしていましたからね。まあ、わたくしもしたいことをさせていただきましたし)

 お茶会などはその代名詞だ。


「なら、よかった。――ところで」

 そっと手を差しだされる。


「コーディはお茶会を開いて、お茶会に婚約者が迎えに来るのを眺めるのが好きだと言っていたので、遠慮したが……その主催者を迎えに来てもいいだろうか……」

 そっと手を差しだされる。


「えっ、確かに憧れますが……」

 片づけをしないとと後ろを振り向くと、

「ここは学園の喫茶テラスで片付け専門の従者もおります」

 セナ。


「いつも片付けさせて申し訳なく思っていたので」

 アイナ。


「殿下がお迎えしたいからと相談されたので、会場をここにしてほしいとお願いしたのですよ」

 ミーナのそれぞれの言葉に信じられない想いで聞いてしまった。


 どうやら、前回のお茶会で溜息を吐いたことで心配されてこんな事態になったようだ。


「行こう。コーディ」

 誘われて手を繋ぐ。


「――シルベストさま」

 嬉しい気持ちでつい言ってしまう。


「わたくし迎えが来るのを見るのも好きですが、迎えに来てもらうのも好きなんですよ」

 そう微笑んで告げるとシルベスト殿下は、

「じゃあ、次回からしていいんだね」

 嬉しそうに笑った。

転生者ヒロイン。ゲームの記憶はあるけど、常識は備わっていた。(最初は悪役令嬢の嫌がらせだと思い込んでいたが、そうではないと知ったら自分の行いが黒歴史)

第一王子。ゲームでは反対されるから意地になっていた俺様。だけど、肯定されるとそこまでの心境に至らなかった。

他の悪役令嬢ら。主人公がいろいろ溜め込んでいた物を聞いてアドバイスをあげていたので皆良好。

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「友人たちを集めてのお茶会」に同席する仲なのに公爵令嬢は「コーデリカさま」 伯爵令嬢が「コーディさま」で公爵令嬢の方が遠そうなのが気になる。 単に教育の爵位差で精神的な距離は同等かのかもだけど。 あ…
第一王子のキャラがゴールデンレトリバーの駄犬みたいだしストーリー全体は意外性あって面白かった。 ですが、、 とりま、 自称ヒロイン役の転生者に常識は備わってた。が 気になりました。 常識備わってたかな…
転生ヒロインについて後書きで常識が備わっていたとありますが、この世界の常識は備わっていなかったからこんなことになったのでは? 常識があればそもそも注意を受けなかったのでは? ※「甚振る」の根本は注意さ…
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