第4話「それぞれの状況」
〜数日後〜
〜Square 休憩スペース〜
「はぁ………」
「──貴女は音楽を大切になんかしていない。」
「──本当に無駄な時間でした。」
歌奏は数日くらい経ってもまだ思い出していた。冥に「貴女は音楽なんか大切していない」と言われた日を。
「(まあ言われるのは妥当な事だったのかも。だって自分は…かつての母みたいに明るく音楽をやるのなんて不可能だから。)」
「(だけどあの人…譜久村さんの友達の筈なのに…なんで譜久村さんが尊敬してくれている自分を譜久村さんの目の前で批判したんだろう…)」
「(自分が批判されるのは別に良い。だけどファンの言っている事を理解できないって否定するのは…)」
しかし、その事を思い続けた後、歌奏の表情は悲しそうでは無くなった。
「…でもそんな事気にしていたら音楽活動なんて不可能だよね。」
「あ、今日は譜久村さんと木鈴さんと後…沢山の人のオーディション結果を送らないと行けないんだった。」
「よし。譜久村さんと木鈴さんの為に送ろう。」
歌奏は気を取り直して笑顔でオーディションの結果を音芽と香音に送った。
そして今、音芽達は──。
〜渋谷川学園〜
〜ⅡーC 廊下〜
「──皆さん、今日のクラブの練習はおしまいです。お疲れ様でした。」
「ふう〜かのんちゃん!練習楽しかったね!」
「うん!音芽ちゃん!流石、この学校でメインイベントとなっている音楽のクラブだけあるよね!」
音芽と香音のクラブはソフト吹奏楽部。渋谷川学園には吹奏楽部が大きく二つある。それがソフト吹奏楽部とハード吹奏楽部だ。ソフト吹奏楽部は音楽初心者でもやれる程度の練習やスケジュールだが、ハード吹奏楽部は音楽の専門学校を目指している人やプロの人向けの吹奏楽部で練習量もスケジュールもハード。かなりストイックである。
顧問もソフト吹奏楽部だと優しさが勝るが、ハード吹奏楽部だと厳しさが勝る。
音芽と香音は音楽を楽しみたいからソフト吹奏楽部に入った。
「うん分かる!『渋谷川学園音楽祭』とかに力を入れているだけあるよ!」
「渋谷川学園音楽祭」とは五月後半から六月中旬にあるイベント。その名の通り、ステージに立ってライブする。強制参加では無く見るだけでもOKである。
「だね!あ、音芽ちゃん!なんかスマホ鳴ってるよ!」
するとスマホの通知が鳴る。オーディションの結果が送られてきたのだ。
「あ!本当だ!内容は…オーディションの結果!」
「わ〜…私、緊張するな〜大丈夫かなぁ?」
「あ、それじゃあいっせいのーで結果見よ!それだったら緊張も解れると思うよ!」
「確かに!それじゃあ…」
「──いっせいのーで!」
同時にオーディションの結果を見る。
結果は──
「やっったー!おとめ、合格!」
「あ……私落ちてる…」
結果は音芽は合格で香音は不合格だった。
「おめでとう。音芽ちゃん。私は不合格だったけど…音芽ちゃんは憧れの人と同じユニットで音楽やれるね!」
しかし、香音は自分が落ちても音芽に嫉妬せず、音芽を賞賛した。
「ありがとう!かのんちゃん!かのんちゃんは悔しいけどおとめ的にはかのんちゃんかなり凄かったよ!」
「ふふ。ありがとう。音芽ちゃん。」
「…私、オーディション落ちたけどそんなにショックじゃないよ。あ、勿論少しは悔しいけど。」
「私はいつか音楽活動を通して色々な事を知ってきたいと思ってる!だからチャンスはこれから!」
「いつか音芽ちゃんみたいにオーディション受かるように頑張りたいな!」
香音の言葉を聞いて音芽は頷いた。
「うん!かのんちゃんなら大丈夫だよ!これからも頑張ろうね!」
「うん!」
二人は楽しい話をした。しかし──
「…可哀想ですね。譜久村さん。まさか音成歌奏のユニットのオーディション的なものに合格してしまうなんて。」
それは何処からか見ていた冥に聞こえてしまっていた。
「(絶対に合格するなら『α'βs』の方が絶対に良かったでしょうに。あの人達は音楽を真に大切にしていますから。)」
「(まあ今はわたくしが言うべきでは無いでしょう。音成歌奏の本性を。)」
「──姉さん?どうしたの?」
「莉衣?」
すると妹の莉衣がやって来た。
「こんな所でどうしたの?譜久村先輩を見ているの?」
「…ま、まあ。そうですね。」
「にしては何か暗い顔をしていたような…?」
莉衣は冥の表情に気付いた。
「…それは……」
「実は譜久村さんが『極ノ音』というユニットに入る事になって…その中のメンバーに何か…良くない人が居るんです…」
「『極ノ音』?確か有名なSquareで活動しているユニットだった筈だけど…」
「ええ。そのメンバーの音成歌奏が本当に良くなくて…」
「え!?確か本名は音成凉って言う人の娘さんが『極ノ音』のメンバーなの!?どうりで苗字を聞いた事あるって思ったわ。」
涼は莉衣も知っていた。実は全盛期の涼はネットに自分の作った音楽を投稿していた。それも要因となって知っている人が多いと考えられる。
「まあ、流石に『SuZuMi』さんは有名でしたし、何より音楽を大切にしていましたからね。……音成歌奏と違って。」
「え?」
少し不穏な空気が流れる。下手したら音芽に聞こえるような位置でそれを言ったからだ。
「ど、どう言うこと?姉さん?あたし、色々な人達から音成さんの事聞くけど皆凄いって言ってる気がするけど…」
「まあ確かに歌唱力は悪くないと思います。ですが、如何せん音楽を好きだと言う気持ちが無い。」
「もし、譜久村さんが音成歌奏のユニットに入ったら彼女は譜久村さんなどのメンバーも大切にしないと思います。」
冥は偏見で歌奏を悪く言う。だが莉衣は冥の意見を全否定する事は無かった。
「ふーん。姉さんにはそんな風に見えているのね?」
「まあでもどのユニットに入るかは別に譜久村先輩が決めれば良い話だから姉さんがそんなに言っても…って感じじゃない?」
「まあそれもそうですね。すみません。そんなわたくしの話を聞いてもらって。」
「良いわよ!それじゃああたしはちょっとアイドルの仕事に向かわないと行けないから!」
そう言った莉衣は去って行った。
「(………莉衣にもわたくしが思っていた事を言ってしまいました。)」
「(わたくしももう少し言葉遣いに気を付けないと。)」
一方、歌奏達は…
〜Square〜
〜練習スタジオにて〜
「ねえねえカナ!そろそろ新曲作らない!?」
「新曲…?ああ、譜久村さんも加わったからね。確かに新メンバーが入った記念に作るってのも大事かも。」
「でしょ!それじゃあまずは曲のタイトルからにしようよ!で、アタシ凄い名前思い付いたんだけど言って良い!?」
歌奏は嫌な予感がした。
「はぁ……和樹奈の考える案が良いと思った事あんまり無いけど…まあ言ってみて。」
「ありがとう!カナ!新しい曲の名前はね──」
「『新メンバーの演奏がまじでうますぎたので皆にもこの曲で披露させます。』!」
「長過ぎ…『かきましょう小説』?」
『かきましょう小説』は『小説をかきましょう』というサイトで投稿された小説の通称。基本的に長いタイトルが多い。
「ってそんな呆れた顔しなくて良いじゃん!こんな長いタイトル冗談冗談!」
「じゃあその本当のタイトルは?」
「──『Experience New SensationS』!」
「か、もしくは『E ʻike i nā manaʻo hou』!」
「──『Experience New SensationS』で。」
「即答なの!?」
和樹奈も驚く程の早さで答えた。
「だって後者は何語か分からないから。」
「えー?ハワイ語だよ!ハワイ語!」
「…何で貴方が知っているの…」
「え?適当に調べたから。」
「はぁ…まあでも一旦、曲のタイトルは決まったね。と言っても譜久村さんがそのタイトルが嫌だったら変えるつもりだけど。」
「そうだね〜。音芽さん気に入ってくれるかな〜?」
そう言って二人はやるべき事が終わったので家帰って各自やるべき事をしたのだった。
歌奏は残っていた宿題を、和樹奈は教師に増やされたプリントを。
皆さんこんにちは。小山シホです。さて今回はオーディションの結果が分かる回でしたね。結果としては音芽合格、香音不合格でした。しかし、その様子を莉衣に見られてしまい彼女は合格した音芽の事を可哀想と言います。そこに莉衣が来た事により、その話をする事は無くなったのですが…(というか本当に冥しつこい)
次回予告
『極ノ音』に合格してから初めての活動をする音芽。合流するとどうやら歌奏が何か言いたげで…?




