第1話「『Square』の音姫」
〜翌日〜
〜新宿未来大学附属高等学校〜
〜放課後〜
「ふう〜授業終わった〜だっっっるかったなー」
「はあ…和樹奈、今何年生?三年生でしょ?少しでも勉強しないと大学上がれないよ?」
「うっ!うるさいなぁ!」
余程、歌奏の言葉が刺さったのか和樹奈は焦りながら言った。
「そんな、別にアタシは別の大学行ければ良いし!ただ音楽をやれる所なら!」
「はいはい。いつも言ってるよね。それじゃあ自分は『Square』行ってくるから。」
そう言った歌奏は『Square』と言われる音楽スタジオ及びライブ会場に向かって行った。
「へぇ〜?カナってSquareに行ってるんだ?」
「アタシも行ってみようかな。」
〜Square ライブ会場〜
「こんにちは。『極ノ音』です。」
『極ノ音』とは歌奏ソロのユニット。歌だけだがその迫力のある声にはファンも多かったりする。
「まずは一曲。聞いて下さい。」
「えっと〜確かここがSquareのライブ会場だったけ?」
「(にしても観客多!そんなに人気なの?カナは。)」
「──!───!」
「!?」
その衝撃は和樹奈に伝わるのは早かった。歌奏の歌は激しくも優雅で誰もが虜になる音とファンから言われている。和樹奈はその虜となったのだろう。
「(何?これ…!本当にあのカナなの!?)」
「(信じられない…!あんな性格のカナが歌では器用な歌い方が出来るなんてっ!)」
「凄いぞー!歌奏ー!」
「ほんと憧れるよね!」
観客は歌奏の歌を絶賛していた。そして一曲目が終わり──
「ありがとうございました。」
歌奏は観客に対して礼儀正しくお礼をした。
──(パチパチパチパチ)
「また自分の歌を聴いてくれると嬉しいです。」
「いやー凄かったなー流石、歌奏!」
「.............」
殆どの観客は歌奏の歌を良い物だと感じていたが、一人だけ良い物だと感じていなかった。
「(...音成歌奏。あの有名な『SuZuMi』の娘。)」
「(納得できません。どうしてあんな人が皆さんから尊敬されているのか。"あんな事"に音楽を使う人がこれほどまでに。)」
その名前は世田谷冥。渋谷川学園という別の高等学校に通っている生徒だ。クラスはⅡーC。渋谷川学園とは渋谷川の近くにある中高一貫校であり偏差値は50くらいという普通の私立の中高一貫校。しかし、基本的に良い学校なので新未大附属より渋谷川を選ぶ人も多い。冷静で礼儀正しさがあるがそれ故に冷たさもある。妹に世田谷莉衣がいる。
「あのーめいちゃん?恐そうな顔をしてどうしたの?」
すると冥の隣にいた人が冥に話しかけた。彼女の名前は譜久村音芽。冥とは違って歌奏を尊敬している。学校は渋谷川学園に通っている。クラスは冥と同じ。明るい性格だが人の気持ちに寄り添えるタイプ。ただし冥の歌奏に対する気持ちは分からないらしい。
「ああ。ごめんなさい。何でもないわ。」
「…少しこの場を去りましょう。」
「…?どうしたんだろ。めいちゃん。」
音芽は冥の気持ちが理解できなかったが、彼女について行く事にした。一方、ライブ会場の裏では──
〜ライブ会場裏〜
「(…自分はまだ母と比べて未熟だ。)」
「(観客からも自分の歌は微妙だと言っている人ももしかしたらいるかもしれない。)」
「(まあ、と言ってももうライブは一応終わったから家に帰ろうかな。)」
歌奏はライブ会場裏からライブ会場の下から出て行った。すると、其処で見に来ていた和樹奈と出会う。
「──カナ!ほんとに凄かったよ!」
「ゲッ!和樹奈なんでSquareに来ているの…!」
「えー!?アタシ幼なじみなのに!酷い言われようだなー!」
「そりゃあいきなりストーカーされたらゲッって言うと思うけどな…」と歌奏は思ったがそれを口に出したら和樹奈は面倒な事になると感じて言わなかった。
「まあそれは良いとして!」
『歌奏』。アタシはほんとにカナの歌、凄いと思う。」
「え?そ、そう?」
いきなり名前で呼ばれたからか歌奏は驚きながら答えた。
「そうだよ~だってさカナ、基本的に不器用じゃん?」
「それは和樹奈もじゃないかな...」
「え~?酷いな~確かに割と勉強とか不器用だけどさー」
「だけどさアタシと違ってカナは不器用だとしても夢に向かって頑張っている。だからアタシ、純粋に凄いなと思って...」
まさか和樹奈がストレートに褒めてくれるとは歌奏も思っていなかったので、恥ずかしそうな顔をした。
「へ、へえ。和樹奈は変わってるね。自分より凄い人なんて沢山いるのに。」
「それでもアタシは幼なじみのカナの方が凄いって感じるよ。」
「で、もし良かったらさ。アタシと──」
「一緒に音楽やろうよ!」
「...え?」
歌奏は和樹奈が音楽に興味がある事なんて知らなかった。だから衝撃を受けたのだ。
「カナのユニット名?って『極ノ音』でしょ?アタシも『極ノ音』のメンバーになりたいんだけど良いかな!?」
「(まさか和樹奈がユニットに入りたいなんて言うなんて思ってもいなかった。)」
「(でも和樹奈は自分の"音楽をやる目的"を言っていない。もし仮に言ったら...)」
歌奏が音をやる目的は「母のやっていたことが正しいと母を馬鹿にした人達に見せること」。もしそれを言ってしまったら、純粋な和樹奈はその目的にドン引きすると歌奏は感じたのだ。
「カナ~?どうしたの?まさかアタシはユニットに入れてくれない感じ~?」
「"実力不足な奴は入れません"って言うつもりなんだ~」
「ああもう。仕方が無いな。分かったよ。和樹奈も『極ノ音』に入っても良いよ。」
「やっったー!!やっぱりカナは優しいな~」
ストレートな褒め方に歌奏は顔を赤くした。
しかし──
「あの人...まさかあの音成歌奏とユニットを...?」
「(名前は誰か分からない。だけど音成歌奏と音楽を組むのは絶対に辞めた方が良い気がしてしまう。)」
「(だって彼女は"音楽を楽しむ心"も"音楽を大切にする心"も何も感じられない...というか、無いから。」
「...いつかは隣にいる彼女も後悔するでしょうね。」
そのやりとりはたった一人、この場で歌奏を嫌っている人に見られていた──。
皆さんこんにちは。小山シホです。さて、主要人物である譜久村音芽と世田谷冥が登場しましたね。ともに渋谷川学園の生徒でかつ年齢も同じですが、歌奏への想いが違う二人。果たして二人は物語にどう干渉するのでしょうか。
次回予告
二人で音楽活動を始めた歌奏と和樹奈。練習の為にSquareに行くと和樹奈が「メンバーがもう少し欲しい」と言う。確かにと感じた歌奏はSquare内でメンバーを探し始めるが...




