表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
猫恋  作者: 鳴澤うた
7/16

7話


「さっ、中へお入り」

 キャリーにユウリを入れて、レオナルトは外へ出掛けます。


 今日は会社の出勤日です。


 まだ手のかかる小さな猫のユウリを置いて、会社に出るのがしのびない飼い主のレオナルトは、先日契約したペットホテルに予約をしたのでした。

 なんせ、予防接種もまだな子猫です。

 一部屋一部屋ずつ隔離している所の方が良いだろうし、何かあったらお隣は行きつけの動物病院です。 安心できます。



 猫は環境の変化に酷く弱い動物ですが、まだ子猫のうちはそうでもないようです。

 それでも、大好きなご主人から離れて、随分と狭い箱のお部屋に入れられてユウリは悲しくなりました。

 小さなお部屋は端から端まで歩いて、二十歩もありません。

 上を見上げれば近い白い壁。大きな窓から見えるお空に浮いている、ふわふわ流れる美味しそうな白い物も見えません。

 暫く吊るしてあるオモチャや、床に置いてある、ぬいぐるみで遊んでいましたが、ウキウキしませんでした。


 そのうちに眠くなってしまい、瞳を閉じ、そのまま寝入ってしまいました。


 ユウリはその真っ黒な瞳を開け、辺りを見渡します。

 おねむから覚めても、殺風景な箱の中。

 外を覗くと、自分以外の違う姿をした動物達が自分と同じように様々な箱の中にいます。


 ご主人様の姿はありません。

 探したくても、この箱には柵があり出ることが出来ませんでした。


 ミャー

(ご主人様)


 呼んでみても、ご主人のレオナルトはやって来ません。


 ミャーミャー

(ご主人様、出してください)


 黒みのある金髪を揺らし、いつもお空のような瞳で自分を見つめるご主人様は、ユウリが何度も呼んでもやって来てはくれませんでした。


 ミャーミャー

(ご主人様、ご主人様)


 灰色の空

 空から落ちてくるお水

 寒くて

 お腹が空いて

 ビショビショで


 寂しくて

 悲しくて


 温かかったご主人様の腕の中


 あたしはまた一人ぽっち?


 ミャーミャー

(置いてかないで下さい)


 ミャーミャー

(ご主人様、ひとりは寒いでし)


 ミャーミャー

(ユウリはもっと良い子になりまし)


 一生懸命に大好きなご主人を呼びます。



(うるさい。チビ)


 聞き覚えのある声に、ビックリしたユウリはピタッと鳴き止みます。


 真っ白で伸びやかなその姿。

「レオさんでし」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ