7話
「さっ、中へお入り」
キャリーにユウリを入れて、レオナルトは外へ出掛けます。
今日は会社の出勤日です。
まだ手のかかる小さな猫のユウリを置いて、会社に出るのがしのびない飼い主のレオナルトは、先日契約したペットホテルに予約をしたのでした。
なんせ、予防接種もまだな子猫です。
一部屋一部屋ずつ隔離している所の方が良いだろうし、何かあったらお隣は行きつけの動物病院です。 安心できます。
猫は環境の変化に酷く弱い動物ですが、まだ子猫のうちはそうでもないようです。
それでも、大好きなご主人から離れて、随分と狭い箱のお部屋に入れられてユウリは悲しくなりました。
小さなお部屋は端から端まで歩いて、二十歩もありません。
上を見上げれば近い白い壁。大きな窓から見えるお空に浮いている、ふわふわ流れる美味しそうな白い物も見えません。
暫く吊るしてあるオモチャや、床に置いてある、ぬいぐるみで遊んでいましたが、ウキウキしませんでした。
そのうちに眠くなってしまい、瞳を閉じ、そのまま寝入ってしまいました。
ユウリはその真っ黒な瞳を開け、辺りを見渡します。
おねむから覚めても、殺風景な箱の中。
外を覗くと、自分以外の違う姿をした動物達が自分と同じように様々な箱の中にいます。
ご主人様の姿はありません。
探したくても、この箱には柵があり出ることが出来ませんでした。
ミャー
(ご主人様)
呼んでみても、ご主人のレオナルトはやって来ません。
ミャーミャー
(ご主人様、出してください)
黒みのある金髪を揺らし、いつもお空のような瞳で自分を見つめるご主人様は、ユウリが何度も呼んでもやって来てはくれませんでした。
ミャーミャー
(ご主人様、ご主人様)
灰色の空
空から落ちてくるお水
寒くて
お腹が空いて
ビショビショで
寂しくて
悲しくて
温かかったご主人様の腕の中
あたしはまた一人ぽっち?
ミャーミャー
(置いてかないで下さい)
ミャーミャー
(ご主人様、ひとりは寒いでし)
ミャーミャー
(ユウリはもっと良い子になりまし)
一生懸命に大好きなご主人を呼びます。
(うるさい。チビ)
聞き覚えのある声に、ビックリしたユウリはピタッと鳴き止みます。
真っ白で伸びやかなその姿。
「レオさんでし」