5話
ご主人様の名前はレオナルト・マルコなんとか・かんとかと言う長い名前で、わたしにはまだ覚えられません。
ご主人様にユウリと言う名前を付けてもらいました。
お友達のジャンさんが名前の由来を聞いたら
「雑誌から適当に」
と言っていました。
(雑誌って何でしょうか?)
ユウリと名付けられた子猫は首を傾げながらも、それが美味しい食べ物だったら良いなあと思いました。
「もう良いかな? お腹一杯になった?」
空っぽになった哺乳瓶をユウリの口から離します。
「出すもの出しちゃおうね」
レオナルトはユウリを猫トイレの上に乗せました。
只今、ユウリはトイレトレーニング中です。
ちょこんとお手製トイレの砂利の上に乗せられたユウリは(市販の猫用トイレは大きくて子猫ちゃんには無理なんです)
暫くご主人のレオナルトと見つめあっていましたが、飽きたのかトイレから出てしまいました。
「今回も駄目かあ……。お腹かお尻をマッサージして出すか……」
そう考え直し、ティッシュに目をやるとその上にユウリが乗っています。
「あっ」
と慌てて抱き上げるものの、すでに手遅れ。
ティッシュ箱の取り口にご不浄。
ティッシュ一箱全滅です。
「やってくれた……」
ミャー
となくユウリはご機嫌に見えました。
「猫用トイレにしないで、ティッシュ箱の上でしちゃうんですよ」
「間違えて覚えちゃったのか、ティッシュの肌触りが気に入ってるのか……」
動物のお医者様は、子猫の身体を入念にチェックしながら言います。
「便も出ないし……」
「今の猫用ミルクは消化が良いんだよ。五日間くらいは出なくても大丈夫」
「きょうがその五日目です」
お医者様はう~んと言いながら、お腹を擦ります。
「……あんまり溜まってないけど……肛門刺激してみようか?」
「お願いします」
綿棒にオイルを浸し、お医者様は子猫ユウリの肛門を刺激します。
ミャーミャー
(きゃー! 何でしか?こちょこちょしまし)
ミャー
(……何だかお腹さんがムズムズしまし)
ミャー
(う~)
ユウリの身体が震えだしました。
「あっ、出た」
ご主人のレオナルトに動物のお医者様は大喜びです。
その様子を、机の上で見ていた動物病院の飼い猫のレオは
(あの人間は俺の見立て通りの男だったな)
と
ニャー
と一声ないて再び瞳を閉じました。