3話
次の日
子猫は哺乳瓶でミルクを貰っては寝て
ミルクを貰っては寝て
を繰り返し
なんの病気にも感染していないことが分かったので、透明な箱から出して貰うことになりました。
(出してもらえたんだ。良かったな)
昨夜の白猫が、子猫の前にやって来ます。
(はい。でも、なんかまた箱の中でし)
今度は籠の中に入れられた子猫は、 仰向けになったまま白猫とお話しします。
(……どうして腹出して横になってんだ?)
(お腹さんがポンポンでし)
うん
こらしょっ
と身体を起こして見せましたが、足が短いせいか、お腹がポッコリのせいか床にお腹がつかえて、また
コロリ
と仰向けになってしまいます。
(……飲みすぎ)
お腹一杯の子猫は、そのままうとうと。
ネンネしてしまいました。
白猫も子猫の箱の前でくつろぐと、大きなあくびを一つしました。
「おや、レオ。子猫のお守りかい?」
レオの飼い主である動物のお医者様がやって来て、レオと呼ばれた白い猫の頭を撫でます。
ニャー
と同意したようにレオは鳴きました。
「あはは、たまにいるよな、仰向けで寝る猫」
黒子猫の寝相を見て、動物のお医者様は笑いました。
(あんたが飲ませ過ぎ)
レオは突っ込みをいれましたが、人間には猫の言葉は通じません。
大きな空色の瞳で、じっと見つめる飼い猫の背中を撫でます。
「夕方には飼い主になるレオナルトさんが来るからね。それまでお守りを頼むよ」
ニャー
と再び同意したようにレオは鳴きました。
──レオは知っていました。
昨夜遅く、この子猫の飼い主になるレオナルトと言う大きなオスの人間が、小さな塊を胸に抱いてやってきたことを。
レオナルトは雨に濡れてビショビショでしたが、胸に抱いた小さな塊を濡らさぬようタオルで巻いていました。
──自分の飼い主とヒソヒソ話。
レオナルトから小さな塊を受け取ったレオの飼い主は、奥の部屋へ行ってしまいました。
ぼんやりとその場に立ちすくむレオナルトの眼差しは、とても悲しい光を宿していました。
レオは知ってしまったのです。
レオは動物病院の猫です。
病院の中で起きる嬉しい出来事も
悲しい出来事も
他の猫よりずっと沢山経験しています。
喜ぶ人間も
悲しむ人間も
沢山見てきました。
レオナルトと言う人間の表情はよく分かりませんでしたが、瞳は悲しみ色でした。
ニャー
レオは彼に声をかけます。
「……やあ」
レオナルトはレオの頭を撫でながら言いました。
「あの子の兄弟……天に召されてしまった……その分、うんと可愛がらなくちゃな……」
レオは知っていました。
彼は
絶対にこの小さな黒猫をとても大切にすることを。
だから彼が迎えに来るまで、レオはこの子を彼の代わりに守ることを決めたのです。




