15話
「たっだいま~。ロディ!」
梨琉ちゃんは帰ってくるなり、飼い猫のトラ猫ロディに抱きつきました。
ニャー
(何だ何だ?)
ロディはウザそうに横に尻尾を振ります。
夢見がちに潤む飼い主の瞳に、ロディは嫌な予感がしました。
「今日ね、とぉぉおおおっても素敵な人に会ったのお!」
(やっぱり……)
人間だったら溜め息を付くとこでしょうか。
「レオナルトって言う名前で~。背ぇ高くってぇ、ちょっと濃い金髪?かなあ? 青い目で~。笑顔がとぉぉぉっても、とぉぉぉっても素敵なの!」
ニャー
(名前が変わる以外、好きになる相手の特徴に変化無いよな、梨琉は)
「素敵な予感がするのよ~! 今度こそ間違いない気がする! わたしの運命の人かも!」
ニャー
(ケインっつーのはどうしたんだか)
「ロディもそう感じる? レオナルトさんって、どことなく品があってね、スーツもブランド品みたい。安っぽい光沢無かったもの。どこの国の人かなあ? 実は貴族の血筋だったりして! それでわたしは……」
日本の女子高生と貴族の末裔で由緒正しい生まれの彼。
勿論、わたしは未成年だから彼はわたしが成人するまで、キス止まりでずっと我慢してくれるジェントルマン。
でも、彼のご両親がわたしと彼との交際を猛反対。
何とか引き裂こうとするのを彼は必死に説得を続けるの。
でも、一族の長老とか言う強い権限を持つお祖父様が出てきて彼に試練を与えるんだわ。
ニャー
(その設定、出てくる男の名前以外全く変わってないよ)
──ケインの時は思い込みが珍しく長持ちしたのにな~。
ニャー
(あっ、告ってないからか)
ロディは自分を抱き締め、まだ妄想を展開している自分の飼い主の梨琉ちゃんを見上げます。
(惚れっぽくって、のぼせやすくて、自分に優しい奴にはすぐフラフラ付いていくからなあ……。それで、いつもフラれるんだ)
見た目はベビーフェイスで可愛いタイプの梨琉ちゃん。
どうも、恋愛事情には頭のネジがぶっとんでしまうようで……。
妄想激しくて、現実のギャップに突然気付き、一人でしょげたり
そのまま相手に突っ込み、撃沈。
──そればかり。
その都度ロディは、メソメソと泣く梨琉の涙を拭うタオルとなるのです。
(また、今回もタオルとなるかもな~)
そう言う勘はよく当たるロディ。
猫天気予報並みによく当てます。
(ま、仕方ないか。俺だけだしな、こう言う役割してやれるの)
そう思い、ロディはニャーと鳴きました。