10話
──夢だ。これは夢だ──
レオナルトは寝ている自分の胸の上に座っている、人間の赤ん坊を見てそう思いました。
起きなきゃ──そう思うものの、身動きが取れません。
これが金縛り
レオナルトは初めての経験に少々焦りぎみです。
──どいてくれ──
懸命に声を出します。
胸の上にいる赤ん坊に声が届いたのでしょうか?
ミャー
と返事をしました。
……ミャー?
「ユウリ……?」
レオナルトはようやく覚醒して、胸の上にちょこんと乗っかり、こちらを覗き込んでいる黒子猫を見つめます。
部屋は闇。
真っ黒なユウリは、闇にまみれてまっくろけ。
見えるのは、光る目二つ。
それでも闇に慣れてきたレオナルトの瞳は、自分の胸の上でくつろいでいる、自分の飼い猫をはっきりと確認し
はー
と、安堵の息を付きました。
ひょいと持ち上げると無邪気に鳴く子猫に、自分の胸をポンポンと叩いて言います。
「ユウリ、ここは止めておくれよ。うなされるから」
ミャー
「分かってんのかなあ……」
レオナルトは苦笑しつつ、ユウリをいつもの寝床に連れていきます。
浅い果物かごに、よく抜け毛が付いて良いとおすすめのフリースを敷き詰めたユウリ専用のベットです。
「じゃあね、お休み」
ユウリの小さな頭をナデナデして、再び自分のベットに入りました。
やれやれ
小さく息を付き、瞳を閉じると
ミャー
とまた、ベットの下から声がします。
そしてベットに上がる気配。
「……ユウリ」
ミャー
枕元まで来て鳴くユウリ。
そっと手を差し伸べると嬉しそうにスリスリして
コロン
と横になりました。
猫は気分屋です。
しょっちゅうお気に入りの寝床が変わるものです。
ユウリの場合、初めてのホテルでのお留守番が心境の変化を促したのでしょうか?
「……まあ、良いか」
レオナルトは身体をベットの真ん中からずらし、子猫が誤って床に落ちないようスペースを作ってやると、ようやく眠りについたのでした。
ムーンで書いている方の執筆の為に、また暫く休載します。