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プロローグ
地球ではないどこかの世界――その山奥にとある村がありました。
その村の名前はミスト村。ミスト神という神様を崇める独自の宗教が発達していて、ミスト神様の使徒として巫女様がいました。
巫女様はミスト神様と共に村を守ってくださる大切な方です。
巫女様がミスト神様の加護を授けてくださるからわたしたちは豊かな暮らしをすることが出来るのです。
さあ、ミスト神様様と巫女様に祈りを捧げましょう。
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目から一筋、涙が溢れた。
夢を見ていた。なんの夢だったかは覚えていないけど。
ただ、誰かが熱心にわたしの名前を呼んでいた気がする。
わたしに名前なんていないのに。
「巫女様? どうかなさいましたか?」
そうだ。わたしはこの村――ミスト村を守ってくださるミスト神様様の巫女。名前なんてない。
少し変な夢をみただけだ。ふる、と頭をふり、わたしは日の出の祈りのため支度を始めた。




