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モリアーティ教授の手帖

影の証拠

作者: アヤ鷹
掲載日:2025/04/05

『仕組まれた罠』





“私が殺した”という証拠が揃いすぎている。



被害者の名はレジナルド・クロウリー。

政治家であり、金融界の大物でもある男。



そして今、彼は死んでいる。

——いや、死んだことになっている。




証人たちはこう証言する。


「モリアーティがクロウリー卿と口論していた。」

「彼が部屋を出た直後、銃声が聞こえた。」

「モリアーティが犯人に違いない!」



これほどまでに”完璧な証拠”が揃うのは、

意図的に仕組まれた罠だからだ。




私は確信した。

——誰かが、私を陥れようとしている。




そして、その誰かは、ホームズが私を追い詰めることを計算に入れている。




面白い。

ならば私は、ホームズの推理を逆手に取ってやる。











『影が落とす証拠』





「ホームズ、これは決まりだろう!」



レストレード警部が書類を叩きつけた。




「現場に残された足跡はモリアーティの靴と一致!

使用された拳銃は、彼の部下が持っていたものだ!」



私は黙って写真を見つめる。




「証言もある!クロウリー卿と争っていたのはモリアーティだった!」




ワトソンが眉をひそめた。


「ホームズ、さすがに今回は……」




私は手を上げて制した。


「“証拠が揃いすぎている”とは思わないか?」




レストレードが怪訝そうに眉をひそめる。


「それが何だ?証拠は多いほどいいだろう!」




「いや、あまりに完璧な証拠は、時として”捏造”の証拠となる。」


私は写真を指さした。




「ここに映っているのは”モリアーティの影”だが——

妙なことに、影の角度が現実と合わない。」



ワトソンが驚く。


「つまり、これは”後から作られた証拠”……?」




私は頷いた。


「何かがおかしい。この事件には”影”がある。」







『被害者のすり替え』





ホームズは気づくだろうか?


この事件には”死体”がない。




いや、正確には”ある”。

だが、それはクロウリー卿の”影”に過ぎない。



本物のクロウリー卿は、すでに別の身分で生き延びている。




彼自身がこの事件の”黒幕”なのだから。



私は最初から罠に気づいていた。

だから、先手を打った。




クロウリー卿は、私の部下に”殺されたように見せかけて”、姿を消した。

代わりに死んだのは、彼と体格が似た身元不明の男。



そして私は、“罪を着るべき別の駒”を用意した。




ホームズが推理を進めれば進めるほど、真犯人が浮かび上がるように。








『ホームズの逆転推理』






「クロウリー卿の死は、偽装だった。」



私はレストレードに向き直る。



「彼が生きている証拠がある。」




レストレードが眉をひそめる。


「そんなバカな……だが、確かに検死結果は不審な点が多かった。」



ワトソンが驚いた顔で私を見た。


「では、死んだのは別人?」




「そうだ。そして、そのすり替えを計画したのは——

モリアーティではなく、クロウリー卿自身だった。」



私は机の上に手紙を置いた。




「クロウリー卿の筆跡で書かれた”死後”の手紙だ。」




ワトソンが息をのむ。



「彼は新しい名前を手に入れ、どこかで生きている。」





レストレードが頭を抱えた。


「……ということは、モリアーティは……?」




私は肩をすくめた。


「今回に限っては、彼は”罠にかけられた側”だったということだ。」








『モリアーティの勝利』






私は微笑む。


「さて、ホームズ。どうする?」





ホームズは静かに私を見つめた。


「……今回ばかりは、お前の勝ちだ。」




「嬉しいね。」


私はゆっくりと立ち上がる。




「だが、次のゲームではどうかな?」


ホームズは目を細めた。




「次があるかどうかは、お前次第だ。」


私は帽子を取って一礼する。




「影は消えるが、また形を変えて現れる。

“影の証拠”こそ、真実を覆い隠す最高のトリックだからな。」


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