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モリアーティ教授の手帖

影の証拠

作者: アヤ鷹

『仕組まれた罠』





“私が殺した”という証拠が揃いすぎている。



被害者の名はレジナルド・クロウリー。

政治家であり、金融界の大物でもある男。



そして今、彼は死んでいる。

——いや、死んだことになっている。




証人たちはこう証言する。


「モリアーティがクロウリー卿と口論していた。」

「彼が部屋を出た直後、銃声が聞こえた。」

「モリアーティが犯人に違いない!」



これほどまでに”完璧な証拠”が揃うのは、

意図的に仕組まれた罠だからだ。




私は確信した。

——誰かが、私を陥れようとしている。




そして、その誰かは、ホームズが私を追い詰めることを計算に入れている。




面白い。

ならば私は、ホームズの推理を逆手に取ってやる。











『影が落とす証拠』





「ホームズ、これは決まりだろう!」



レストレード警部が書類を叩きつけた。




「現場に残された足跡はモリアーティの靴と一致!

使用された拳銃は、彼の部下が持っていたものだ!」



私は黙って写真を見つめる。




「証言もある!クロウリー卿と争っていたのはモリアーティだった!」




ワトソンが眉をひそめた。


「ホームズ、さすがに今回は……」




私は手を上げて制した。


「“証拠が揃いすぎている”とは思わないか?」




レストレードが怪訝そうに眉をひそめる。


「それが何だ?証拠は多いほどいいだろう!」




「いや、あまりに完璧な証拠は、時として”捏造”の証拠となる。」


私は写真を指さした。




「ここに映っているのは”モリアーティの影”だが——

妙なことに、影の角度が現実と合わない。」



ワトソンが驚く。


「つまり、これは”後から作られた証拠”……?」




私は頷いた。


「何かがおかしい。この事件には”影”がある。」







『被害者のすり替え』





ホームズは気づくだろうか?


この事件には”死体”がない。




いや、正確には”ある”。

だが、それはクロウリー卿の”影”に過ぎない。



本物のクロウリー卿は、すでに別の身分で生き延びている。




彼自身がこの事件の”黒幕”なのだから。



私は最初から罠に気づいていた。

だから、先手を打った。




クロウリー卿は、私の部下に”殺されたように見せかけて”、姿を消した。

代わりに死んだのは、彼と体格が似た身元不明の男。



そして私は、“罪を着るべき別の駒”を用意した。




ホームズが推理を進めれば進めるほど、真犯人が浮かび上がるように。








『ホームズの逆転推理』






「クロウリー卿の死は、偽装だった。」



私はレストレードに向き直る。



「彼が生きている証拠がある。」




レストレードが眉をひそめる。


「そんなバカな……だが、確かに検死結果は不審な点が多かった。」



ワトソンが驚いた顔で私を見た。


「では、死んだのは別人?」




「そうだ。そして、そのすり替えを計画したのは——

モリアーティではなく、クロウリー卿自身だった。」



私は机の上に手紙を置いた。




「クロウリー卿の筆跡で書かれた”死後”の手紙だ。」




ワトソンが息をのむ。



「彼は新しい名前を手に入れ、どこかで生きている。」





レストレードが頭を抱えた。


「……ということは、モリアーティは……?」




私は肩をすくめた。


「今回に限っては、彼は”罠にかけられた側”だったということだ。」








『モリアーティの勝利』






私は微笑む。


「さて、ホームズ。どうする?」





ホームズは静かに私を見つめた。


「……今回ばかりは、お前の勝ちだ。」




「嬉しいね。」


私はゆっくりと立ち上がる。




「だが、次のゲームではどうかな?」


ホームズは目を細めた。




「次があるかどうかは、お前次第だ。」


私は帽子を取って一礼する。




「影は消えるが、また形を変えて現れる。

“影の証拠”こそ、真実を覆い隠す最高のトリックだからな。」


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