5話目
林道を抜け、海が見えたところで一度立ち止まった。
霧が立ち込める海は浜辺に近づくにつれ、波の砕ける音がする。
海はあの川から水が流れている。
波は灰色で、小さく繰り返している。
波打ち際に近づくと沖のほうからいろいろな形をした船や箱が一つの明かりを灯し、こちらへやってくることが見えた。
この明かりは世俗で川に思いを載せて明かりを流す行事として行われているらしいが、
その思いはしっかりと流れ着いている。
明かりはやがて二列で並び始め、照らされた道ができた。
私はこの道が沖の方まで続いていることを確認してから海へ歩き出した。
私の最後の仕事は海の上でなければ行えない。
川から注いだ海の底に沈む生命の輝きを使うからだ。
海水に足をつけると、水面に6回ほど波紋がたち消えていく。
ずっと歩くと浜から離れ、だいぶ沖に出た。ちょうど照らされた道も途絶えている。
今日はここら辺で最後の仕事をしよう。
そう思い両腕を下ろし、目を閉じた。
明かりの火は乗り物に移り、より大きな炎なった。ゆらゆらと移動を始め私の周りを四角形に取り囲む。
しばらくすると海に流れ着いていた囚人の輝きが海の底から現れ、足元に渦巻き始めた。やがてそれは私の脚を中心に回りながらゆっくりと水面から浮き上がり始めた。
いつも不思議に思うのだが輝きが水面から離れるとき、そこに白い彼岸の花が咲いてまた枯れる。以前上級の鬼に理由を聞いてみたが、輝きの持つ生命力に海水に混ざった花の種子に影響を与えているとかいないとか。
私は登ってきた輝きを、ちょうどおなか部分に置いた両手の間に集めていく。
どんどんと集まっていき、いつの間にか輝く大きな玉となった。
私はそれをゆっくりと空中へ放つと、玉はひとりでに飛んでいった。
これは一度だけ聞いたことがあるが次の命ために必要らしい。
私はいつもこれで終わりなので、あの玉がどうなっていくは知らない。
見えなくなるほど高くなったことを確認すると浜へと帰った。
これで私の仕事は終わり、明日はまた門番だ。またいつも通りやろう。