3話目
ようやく刑場を越えると、そこは上位の鬼や極卒の休憩場や飲食店が並んでいる。
私はここの居酒屋で給仕の仕事等をしている。
私が勤めているお店は飲食街の入り口から八番目にある。店の前に立ってあたりを見渡すとずっと奥まで飲食街は続いている。
店に入ってさっそく準備を進め、ある程度終わったところでだんだんと客が入り始めた。次第に席が埋まっていき賑わいを見せてきた。お客さんの出入りが落ち着いてきたところでカウンター席の仕事をしていると上級の鬼たちの会話が聞こえてきた。
「全く最近の囚人は太った奴が多いな、世俗の生活習慣病だっけ?たくさん食べるのに動かないとは欲におぼれているな」
「そうだなぁ でも人間ってそういう生き物だろ。だからたくさん食べるし、どんどん機械を開発して楽をしようとするだろ。その分、いろいろことを好き勝手にやるから、無駄が作られたり罪の形や重さも変化していくけど」
「確かに 昔から変わらんね。奴らは。」
「なんてたって100年も生きられないんだから、そりゃ必死になったほうがその人生の中ではお得だからな」
「まっ人間はそんなもんだよな」
鬼たちが声を合わせて笑った声が聞こえ、私は気になってついつい話しかけた。
「天下の鬼様も時の流れには形無しかい?」
「よせやい。俺たちだって無限に生きられるわけじゃないんだ。まぁ人間に比べれば長生きだといえるがな!」
私たちはいつもこんな程度の話をして盛り上がっている。
この飲み屋にはカラオケがついている。ここら辺は世俗に合わせていろいろ用意するから結構ごちゃごちゃだ。まぁこの店に限った話ではないが。
客が好きなように歌ったりするが、店員が歌って場を盛り上げることもある。
ちょっとした自慢だが私は歌うことが得意だ。いや自分ではそこまで気にしていなかったのだが歌を披露するとみんながほめてくれるからきっと私はそれなりに歌える者なのだろう。
ここ最近は閉店時間が近づくと、私が締めの歌を歌って解散になることが多い。
今日も私が閉める形になった。
さて今日は何を歌おうか、みんなは私の歌をよく褒めてくれるのはうれしいけど、私にとっては好きだから歌っている意味合いのほうが大きい。だからいつも歌う曲を決めるときはドキドキとしてしまう。ちょっとした隠し事である。
よし!この曲にしよう。皆さんにも大人気の和洋折衷ではねるような曲である。
みんなで楽しんだ後は、蜘蛛の子を散らすようにみんないなくなる。
皆、仕事だったり帰宅したりとさまざまである。
ちょうど閉店の時間になのでお片付けを始める。
片づけを終えるとちょうど深夜12時ぐらいだろうか。すべての業務を終えて一息つくと、
今日最後の仕事をこなすため店を出た。