よん
「お金は後でちゃんと返すから」
「いーって、俺のバイト代だから奢ってやるよ電車賃ぐらい」
私は、お金も何も持ってなくて橘から電車代を借りた。まあ、全て橘のせいだから奢ってもらっとこうと思う。
「じゃあ、ありがとう」
「おう」
駅を出で歩こうとしたら、橘に止められた。ここで待ってろって言われたから私は、駅横のベンチで座って辺りを観てた。
懐かしい駅前の風景。友人達と映画に行ったり、遊びに行ったりしたっけ。橘とも花火の後、駅で一緒になって夜道を歩いて帰ったっけ。
確かお互いの夢の話とかしたな……あの頃色々あったけど、楽しい事も沢山あったな……
「わりー待たせたな。喉乾いたろこれやるよ」
「ありがとう。久しぶりかもこれ飲むの」
橘は紅とシルバーのお洒落な自転車と一緒に現れた。籠から私の好きなジュースを取りだしくれた。
久しぶりの炭酸飲料。そういえば中学以来飲んでないかもしれない……飲んでないわ。私は何を飲み食べていたのかな……
ペットボトルの蓋を開けて口をつけると、甘い香料の香りがする。喉を通る炭酸の刺激……懐かしい味だわ。
「行こうぜ、腹減ったから帰ろう」
橘はジュースを飲み干して、籠に入れ自転車に乗った。そして、私を待ってる。待ってる? えっ? 視線で後ろに乗れと言ってる?
「無理だって……」
「歩くより速いから乗れ」
「重いし」
「家まで坂道ねーから平気だって、乗れよ」
「……」
このまま居るのも変だし、仕方なく後ろに乗った。結構安定感あるかもって思った途端、自転車は走り出した。
「うわー! 落ちそうだけど!」
「落ちないようにどこか掴んどけよ。俺も初めて人乗せるからちょっと余裕無い」
「大丈夫なの?」
「ぐらつくからどこか取り敢えずもて」
私は、目の前にある橘の制服を両手で掴んだ。今は春だから、冬服を着てるから生地を掴めば大丈夫かなと思ってたら。
「中途半端だろーしっかり掴めよ」
言われて、肉も掴むことにした。
「いってー!掴みすぎだ!!!!!」
昔みたいに普通に会話できる事に不思議な感覚と、楽しいという感情が沸いた自分が怖かった。