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そして夜会へ


「うふふ。こうしてお揃いのドレスで夜会に参加するのはいつ以来かしらね?とても楽しみにしていたのよ。」

「そうですよね~お母様。シャルちゃんたら全然つれないんだもの~」


 夜会へと向かう馬車の中で母と姉は上機嫌であった。

 デコルテの空いたAラインに上品にレースと刺繍をあしらった色違いのドレスに大変満足しているらしい。ちなみに髪型もサイドから編み上げハーフアップとお揃いである。

 母の品のある紫のドレスと姉の鮮やかな青のドレスはそれぞれを引き立てており美しいとは思うが・・・私がスカイブルーのドレスとは・・・並ぶとグラデーションだな。という感想は言わないでおいた。


 すでに私は朝からの侍女たちのはしゃぎっぷりで疲弊していた。

 驚いたことに「この日のために研究いたしました!」という侍女の化粧で顔や身体の傷跡が全く見る影もなく消え去っていた。

 素晴らしい技術だ。店でも構えたら世の女性たちにかなりの支持を受けるのではないだろうか?侍女だけにしておくのは勿体ないと考えている最中も母と姉の会話は止まる気配がない。


「でもお義姉様には申し訳ないことをしてしまったわ~」

「あら、大丈夫よ。元々エースだけが参加する予定だったし、それに皆シャルちゃんのこと心配しているのですもの!」

 そう思っているのならば自重してほしかった。

 突然家族総出で参加することになったため、父、兄、弟がそれぞれ母、姉、私をエスコートすることになったのだ。

 悪目立ちする予感しかしない・・・面倒だな。


「あら、着いたみたいね。」

「シャルちゃん行くわよ~!」

 乗り気の2人に引きずられるように馬車から降り、先に着いていた父たちにエスコートされ夜会へのホールへと足を踏み入れた。



 *****



「・・・やはり目立ちすぎだ。」

「そりゃ総出ですからね。シャル姉が参加することも珍しいし。」

 私をエスコートしているのは末の弟のオーリックだ。

 薄い銀髪に顔立ちは母上に似ており、歳をとってもどこか中性的な雰囲気を持っている。

 ある程度は戦うことも出来るが、頭が回るため戦時中は軍師として働き、現在は王宮の宰相補佐として働いている。


「でもシャル姉、顔の傷も見えないしドレスもとても似合っていますよ。」

「どこでそんな世辞を覚えた?」

「シャル姉は自分の外見の事に関してだけは過小評価ですよね?周囲の反応は面白いくらいなのに」

「確かにな。」


 こうして歩いている間にも耳を傾ければ貴族たちの会話が聞こえてくる。

「シャルティア様のお顔の傷が・・」「一家総出とはあの噂はやはり・・・」「華やかで良いですわね」

 など好意的なものから皮肉めいたものまで様々だ・・・他にすることはないのか?と常々思ってしまう。



 大体の参加者が揃ったところで、国王夫妻、王太子、第2王子、王女殿下が入場し陛下の開会の挨拶となり夜会が始まった。

 我が家族はまず陛下への挨拶へと向かう。

 王子たちは夜会が始まれば王族席から離れてそれぞれの社交へと移ってもよいことになっているが、今はまだその場に残っているようだった。



「まぁシャルティア様!お久しぶりですわ!!」

「お久しぶりでございます。しばらくお会いしない間にヴィヴィアナ様はますますお美しくなられましたね。」

「ありがとう!でも今日のシャルティア様もとっても素敵ですわ!」

「恐縮でございます。」


 王族席の前へ通されると王女殿下ヴィヴィアナ様が可憐なお声で私に話しかけてきた。

 艶やかでいてふわりとした金色の髪に、くりっとした緑色の大きな瞳が大変お可愛らしい。

 ちなみに公の場のためいつもの口調は流石に控えている。


「ちょっとヴィヴィ、はしたないよ?お久しぶりです、シャルティア様。」

「アーディ殿下もお久しぶりでございます。しばらく見ない間に凛々しくなられましたね。」

「私も来年からは士官学校に入りますからね。シャルティア様にそう言っていただけると鍛錬に身が入ります。」

「ふふ。楽しみにしておりますね。」


 第2王子のアーディ殿下も見事な金色の髪にまだ少し幼さの残る目元が印象的なお顔立ちだ。さぞ令嬢たちにおモテになるだろう。


「二人とも、私より先にシャルティア様と話しをするのはどうかと思うのだけれど・・」

「あら、いいじゃないお兄様。どうせこれから独占なさるのでしょう?」

「まぁまだ分からないけどねー。精々頑張ってよ兄様。」

 エド殿下も話しに加わるが、この会話の流れは・・・

「もしや、お二方ともご存じなのですか?」

「もちろんよ!シャルティア様がお義姉様になるのが楽しみですわ!」

「こらこらヴィヴィそんなに大きな声で言うものじゃないよ。でも私も楽しみにしているから兄様、本当に頑張ってよ!」


 なんということだ・・・殿下たちの年齢からすれば私は母親でもいい年齢なのに、何故どこもかしこもこんなに好意的なのだ・・・


「へ、陛下は反対してはいないのですか?」

「「「とっくの昔に説得済みですよ(わ)。」」」

 外見だけでなく中身も本当にそっくりなご兄弟だな。

 父たちと話しをしている陛下に視線を向けると、こちらに気付いたのかウィンクされた・・・

 なるほど。気付かない間に外堀はすでに埋まっているということか。

 はは、やるではないかッ!

 だがまだ私は絆されんからな!!




ここでさら~と人物まとめ?

<メンフィス4兄弟>

・長男エース(38)現公爵家長。3人の子供がいる

・長女スペルア(37)侯爵家へ嫁入り済み。子供1人

・次女シャルティア(35)軍人。独身。初恋もまだの恋愛初心者

・次男オーリlルク(30)宰相補佐。子供1人


<王族3兄弟>

・エドアルド(18)王太子。シャルティアと結婚したい

・アーディ(16)第2王子。現在学園生。来年から士官学校

・ヴィヴィナンア(12)末っ子王女。エドに協力的。シャルティアに憧れ


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