愉快な仲間たち
「というわけで、調べるのに奴さん全然尻尾を出さないんでかなり難航してたんですけど、この隣国との国境辺りの町ダイアスで何か動きがあることは分かりました。姐さんに報告してから向かってみようと思ってまして・・・」
「ダイアスか・・・確かあそこは鉱山で栄えている町だったな。奴の領内では活気のある場所だと聞いているが。」
「隣国にはほとんど鉱山はありませんからね。少し怪しいですね。」
私、ケルヴィン、アドミラで机の上に広げた地図を見ながら報告を聞いていた。
確かに隣国は鉱山が少なく、その代わりと言ってはアレだが農作物や森の資源などが豊富であった。まぁ我が国もその点は負けてはいないのだが。
「そ!なのでしばらくしたらちょっくら行って見て来ます!」
「待て。・・・今回は私も同行する。2週間後でいいか?」
「「え?」」
2人が同時に口を開く。
「何か気になる点でもありましたか?」
「姐さんが一緒だと目立つんだよな~」
と、またしても二人同時に言葉を出した。息がぴったりだな。
「いや・・・少しな・・・」
私が言い淀むと、ケルヴィンははは~んとニヤけた表情をして
「姐さん、もしかして逃げですか?逃げですね?!どんだけ婚約から逃げたいんですかーー?!」
「違う!家族総出の攻めからの戦略的一時撤退だ。」
いや、それ逃げてるだけだからーと笑うケルヴィンを睨み、そこまで婚約したくない相手とはどんな相手なのか?と疑問に思っている表情をしているも口に出さないアドミラに感謝した。
「話を戻す!とにかく2週間後にダイアスに行くぞ。アドミラには迷惑をかけるが、私が不在の間は軍部の事は頼んだ。感付かれると厄介だからな、公爵家の仕事で出かけていることにしておく。」
「かしこまりました。お任せください!」
軍式の礼をして応えるアドミラは実に良い部下だ。その部下に迷惑をかけるのは申し訳ない気もする。
それに比べてのケルヴィンである。
「まぁいいですけど。でもなんで2週間後なんですか?」
そして痛いところを突いてくる・・・
「少し所用があってだな・・」
「あ!もしかして例の夜会に参加するんですか?!」
「・・・お前、本当にどこまで知っているんだ?」
「そんなに褒めないで下さいよー」
「褒めてはいないからな。」
本当にその能力を私に使うのは勘弁してもらいたい。
するとアドミラが「夜会ですか!」と声を弾ませた。
「なんだ?夜会に興味あるのか?」
アドミラは民間から叩き上げで士官学校に入り軍人となり私の秘書官にもなった優秀な人物であるが、庶民のため夜会などの貴族の集まりには参加したことはない。
「いえ、私は夜会というより滅多に見られないメンフィス少将のドレス姿を拝見したいです!」
「確かに!えーじゃあ、アドミラちゃん俺と一緒に見に行く?これでも一応貴族よ?」
「え・・・ですが私は軍人ですが身分は庶民ですし、何よりケルヴィン様とご一緒はちょっと・・・」
「あれー?俺フラれた?」
「なんだケルヴィン、まだ実家から勘当されていなかったのか。頼むからおとなしくしていてくれ。」
どうしてこうもこの男は話を厄介な方向に持っていこうとするのだ。
思わず頭を抱えて項垂れてしまった。
「勘当なんてされませんーこれでも頼りにされてるんですー」
その後もぶつぶつと文句を言うケルヴィンを無視して、調査の件を再確認し話し合いの場はなんとか終わることが出来た。