友人
短めです
ダンスが終わり、殿下と別れてフロアから抜けるとすぐに「シャル!」と声がかかった。
声のした方に視線を向けると友人の姿が見えた。
「クレア!」
私は足早にそちらに向かった。
「久しぶりだな。」
「うふふ。まさかここで会えなんて思ってもいなかったわ。」
「私もだ。」
クレアは学園時代からの唯一と言っていい大切な友人だ。
当時から他の令嬢たちと変わっていた私は遠巻きにされていたが、クレアはそんな私にも普通に接しており気が付いたら一緒にいることが多くそれを私も好ましく思っていた。
彼女は私が士官学校へ行ってからも変わることはなく交流は続き、戦地にいるときには私を心配してかよく手紙をくれていた。
その手紙のやり取りの中で彼女が伯爵家へ嫁だことを知り、式に参加できなかったことを悔やんでいた私は戻ってから真っ先に会いに行った。
嫁ぎ先の雰囲気は良く周囲にも夫となったクレセント伯爵にも大事にされていることが分かったので安心したのを覚えている―逆に私の顔の傷を見た彼女にはとても怒られたが―
今は2児の母となっているが学園時代から可愛らしかった面影は今も変わらない。
彼女の笑顔とピンクベージュの髪の色が私は昔からとても好きだった。
「それにしてもエドアルド殿下とダンスされるなんて、いろんな意味でびっくりしたわ。」
「私も正直驚きっぱなしだ。殿下は何がしたいのだ・・・」
「ふふ、相変わらずなのね。でもダンスとても素敵だったわ!それに顔の傷も消えているし、まるで昔のシャルみたいだわ!」
クレアは手を伸ばし私の顔の傷跡辺りに触れた。
「冗談を言うな。もうそんなに若くないだろう?傷跡は侍女が化粧で隠してくれたんだ。」
「あら!シャルは昔から綺麗よ!今でもスタイルがいいし私の自慢の友人だわ!ふふ、それにその侍女さんにも感謝ね!シャルをこんなに素敵に仕上げてくれたのだもの!!」
「やめろ・・からかうな。」
「あら照れてるの?もう本当にシャルは自分の外見の自己評価が低すぎるわ!」
「・・・何故か弟にも同じことを言われたな」
「もう!本当に相変わらずなんだから!」
「クレアも変わらず可愛らしいよ。」
「何言ってるのよ。子供が2人いるのだからそんなことはないわ。シャルのお化粧をした侍女さんに私も頼みたいくらい!」
私から見ると昔から可愛らしいのだが、まぁ人それぞれ思うところはあるからな・・・
「それなら今度・・・」
「お話し中失礼いたします。シャルティア・メンフィス殿。」
楽しく会話をしていたところに無粋に声をかけてきた輩がいた。
顔を向けるとそこにはグラーフ中将がいた。




