序
あまり深く考えずに読んでいただけると嬉しいです。
完結を目指して頑張りまっす!
初投稿ドキドキ
「何故、エドアルド王太子殿下がいらっしゃるのだ?」
目の前には輝くばかりの金髪に澄んだ紫の瞳、そして整った容姿のこの国の第1王子にして王太子がいた。
―――確か私は婚約の申し込みがあったとかその方がいらっしゃるとかで、急遽実家に帰って来る羽目になったはず
「軍部以外ではお久しぶりです、シャルティエ様。大変長い間お待たせしてしまい申し訳ありません。約束通り私と婚約し、結婚していただけますよね?」
約束?なんだ約束って??覚えがない―――
それに家の者たちのこの生温かい目つきはなんなのだ?うっすら目じりに光るものも見え隠れするのだが
「・・・殿下がなぜ私のような『傷物』に婚約の申し込みをされるのが理解できないのですが。というか婚約者候補とかいましたよね?!」
「昔のように『エド』と呼んでください」
「話しを聞け!!――そもそも殿下とは17も歳が離れているのですよ?もっと相応しい年の近いご令嬢がいらっしゃるでしょう?!」
「貴族間での歳の差なんて関係ないではありませんか。私は昔から貴女しか見えてません!シャルティエ様しか考えられません!」
「離れすぎだ!!というかそもそも殿下は王太子であろう?ご自分の身分を考えているのですか?!」
「お待たせしてしまった分、幸せにしますからね!」
「だから私の話しを聞けぇぇぇぇぇぇ!!!!!」
私は猛烈に困惑していた。
*****
「第3班!貴様らは何をしてる!!!考えて動かんかーーーー!!!!!」
雲一つない青空の下に怒号が飛んだ。
シュルクーフ王国軍事演習場。
士官学校を卒業したばかりの若者たちが士官候補生として訓練-という名の扱き-を受けている真っ最中である。
「返事はどうした?!!!」
「「「イエス、マム!!!!」」」
息を切らせ、土まみれの候補生たちからはんばヤケクソ気味に返答が返る。
「まったく・・・」
演習場から少し高い位置で様子を見ていた教官役からため息が漏れる。
マム。
女性である。
グレイの濃い銀色の長い髪を無造作に束ね、青空と同じ色の瞳には険しさが見える。
白の軍服に身を包み凛とした佇まいからは女性らしさは全くと言っていいほど感じることはできない。
暫くすると、ゴーンゴーンと教会から昼を知らせる鐘の音が聞こえてきた。
「もうそんな時間か。演習やめーーーーい!!!」
と同時にどこかしこでわっという歓声が上がる。
それにまたため息をつきながら
「各自、今日の反省点を洗い直しておくように!!解散!!」
踵を返すと颯爽とその場を後にした。
*****
水場周辺では演習を終えた候補生たちが演習で付いた汚れを落としたり、腰を下ろし座り込んでいたりと皆ぐったりとした様子で話しをしている。
「はーマジ疲れたーー」
「今日も鬼だったなー」
「つか本気でアレ女かよー」
この国では士官候補生はほとんどが貴族なのだが、ここが軍であり周りも知った仲のためか大分砕けた感じでいる。
「いや、でも、美人の女教官に扱かれるのってなんかよくない?」
と1人が発した言葉に驚愕した顔で皆が口々に
「そりゃお前だけだっつーの!」
「確かに顔もスタイルもいいけどさーその顔に傷跡くっきりだぜー?」
「あれで一応公爵令嬢って令嬢の年齢でもなければ夫人でもないじゃん」
「「「ないない」」」
と談笑をしている後ろから威圧感のある声が
「ほう・・・」
さっきまで談笑していた候補生たちの顔がみるみる青ざめ硬直し始めている。
声の主はぽんっと1人の肩に手を置くと「ひっ」という声にならない声が上がるのも気にせずに
「貴様ら、演習の後だというのに軽口とは大したものだな。」
「「メ、メンフィス少将!!!」」
「今日でそれだけ元気があるのだ、明日の演習はもっと厳しくするか?」
「そ、それは・・・」
軍の上官にNOと言える人間がいるのだろうか?いやいないであろう・・・特に鬼教官と名高い彼女に対しては。
その周りで様子を見ていた候補生たちの顔も青ざめ始めてきた頃
「こちらにいらっしゃったのですか?メンフィス少将!」
小走りに彼女のもとへと駆け寄る女性将官の姿があった。
「アドミラ。どうした?」
「はっ!メンフィス大将がお呼びです。」
「・・・分かった。すぐに伺うと伝えてくれ。」
「了解いたしました!」
アドミラと呼ばれた将官はすぐに戻ろうとするも、周囲にいる候補生たちに向かい直し
「貴方たちもいつまでも油を売っていないで、早く食堂に行きなさい」
と、一言だけ残しその場を去っていった。
マジ女神!!!
候補生たちの安堵の表情に変わったのを見ながら
「明日も遅れるなよ」
彼女も一言残しその場を去っていった。
候補生たちの解放感は言うまでもない・・・