第2話:期待されし男デューク
デュークが職を得る時が来ました!
私もデュークとともに一からレベルを上げて行く所存です。
まぁ笑ってごゆるりと見ていってくだされー
「これより、成人の儀及び、転職の儀を行う。これから王自らの演説があるゆえ、皆粗相のないように!」
兵士長の挨拶の後に王国交響団のトランペットによる幕開けを飾る演奏が鳴り響いた。
そう。俺含め、今日成人を迎えるものたちが王都に集い、成人の儀を執り行うため玉座の間に集められたのだ。
トランペットのファンファーレが鳴り止むと、紅のマントに黄金の冠、虹色の玉のついた杖をつく紳士すなわち――王――が登場した。
「諸君。まずは、成人おめでとう。これからは大人としての自覚を持ち、我らが国の民の一員として、そなた等の力を存分に奮ってほしい所存であるぞ。 ふむ。今年の成人したものたちはほとんど冒険者になるのだろうな。余に目に映る汝らの顔にはギラギラとした渇望と、誇り高き自尊心がうかがえる。そなた等のような者を我が国は大歓迎じゃ。近年魔物の動きが活発化してきておるのは承知のことであろうが、あまり良くない噂も余の耳に入ってくる。そなた等には己が利益にだけうごかされることなく悪を払い、人々を救い、模範となるような冒険者となることを期待しておる。」
そして王はちらりと俺の顔を見ると微笑んで玉座へと戻っていった。
不思議に思ったのも束の間に、次は兵士長が前に出た。
「――――、アダム・ヴァレンタイン、マツィダ・クヌタァーカ、シーア・カレント、デューク・タイガ。以上、計19名の成人を認めるものとする。」
兵士長が言い終わると、拍手と同時に兵士たちの間でどよめきが起こる。
「タイガの姓って確か……あの伝説の聖騎士様と大魔法使い様の姓だよな?」
「ああ……ってことはあの青年も何か特別な職につくのだろうか?」
「きっとそうだろう。〔勇者〕や〔剣豪〕、〔賢者〕の職になれるのでは?」
こんな会話が俺のところまで聞こえてしまう。
やはり俺の両親は有名人であるようだ。
俺は親の七光りにだけは絶対ならないようにして行こうと心に誓った。
こうして無事に成人の儀は終わり、待ちに待った転職の儀にさしかかろうとしていた。
俺たちは兵士長とともに玉座の間をあとにし、別の部屋へと向かった。
部屋はとてもシンプルで、紫色のカーテンと部屋の中央に水晶玉があるだけだった。
だが、この部屋には神聖な気が満ちているのを肌で感じる。
「さぁ。これから転職の儀を行う。だがその前に職業の説明や歴史について話さなければならない。今は遠い昔。この地で魔族と人間が土地の支配を巡って争っていた。当時の人族は職業というものがなく、ただ武器を振り回すのみであった。それをみかねた、天空神ミーネイが人々に〔職業〕という形で力を授けた。これが今なお続く転職にまつわる由来だ。
そして、次は職業についてはなそう。
まず、人は必ず1人1つは各職業の適正を持ってる。近年は1人当たり平均して2〜3つの適正を持つ者がほとんどだ。そして、職業を得た後に、各職業に合った方法で熟練度を上げていくとスキルが成長していき、職業に見合った特技を習得してゆく。だが、時折別の職に就きなおしたいという輩がいるが、職を極める、又は試練を受ける以外転職のやり直しということはできない。
それに加え、王国魔法師団の報告によると複数の職業を極めると凡人ではなり得ないような上級職につけることがあるという。最近の研究で分かっているのは〔戦士〕と〔魔法使い〕を極めし者には〔魔法戦士〕なる上級職への道が開かれるのだそうだ。他にもさまざまなユニークジョブがあるゆえ皆自分の目で確かめるがいい!!!!
では、説明はこんなものにして転職の儀を始めようか。
先程、王に名を呼んでもらったものから水晶玉に手をかざすのだ。さすれば水晶に己の適正職が表示られるだろう。あとはなりたい職を強く念じることだ。先に言ったように、職を変えるには熟練度を積み、極めることが必要になるから、皆心して選ぶように。」
そうして、兵士長に促されるまま1人目の男が水晶へとかけて行った。
――まぁ俺は戦士一択だから悩む必要はないな――
そんなことを考えていると、最後に俺の番が回ってきた。
「さあ始めようか!」
俺は無意識につぶやいていた――
俺が水晶に触れると不思議な何かが奔流となって身体中を駆け巡った。
そして、水晶に目をやると、文字が浮かび上がってきた。
「なッ!!!!!!!!!!!!」
俺は驚いて固まってしまった。
すると、兵士長が目をキラキラさせて寄ってきた。
「どうだ? あのタイガ家の子だけあって〔勇者〕や〔賢者〕のエクストラジョブでも出たのか???」
いや、ある意味ではそうなのだが、まったくもって嬉しくない。
なぜなら――――
「ん??? ん!! うおぉぉぉ!!!!汝は両親から稽古を受けなかったのか?」
「いや! そんなことはない!6歳の頃から剣を振りつずけてきた。魔法に関しても初級程度は嗜んできた。なのに……」
「なぜだ、なぜ〔遊び人〕なのだ? これはきっと水晶の不具合に起因するに違いない! おい! そこの新兵! 今すぐ替えを……」
「いや、よしてくれ兵士長殿。俺にはわかる。これは不具合なんかじゃないんだ。水晶に触れた時、不思議な魔力が体に流れてきて出て行ったんだ。きっと正常だと思う。」
「た、たしかにそれは正常に作動している証拠だ…… だが、どうするつもりだね?」
まぁ、遊び人なんて職業は適性に現れることは珍しいくせに戦闘もできない。
加えて、生産系の職業の補正もかからないから何をやっても凡人。
そんな評価をされているのが遊び人であって、決して聖騎士と魔法使いの間から生まれるわけはないはず。かといって父さんは愛妻家だし母さんも今でも父さんに溺愛しているのだ。あっち方面でのせいという確率は限りなく薄い。
「まぁ、遊び人以外の職がないってことは、なるしかないんだろう。」
そして俺は習わしに従って願った――遊び人になりたい――
◇
「酒場は確かこの辺りか?」
あのあと兵士長としばしの言葉を交わした後、冒険者登録のために酒場を目指して出発した。
転職の儀を行った後のステータスは……
職業: 遊び人
レベル: 1 / 70
HP: 110 / 110
MP: 225 / 225
力: 50
守り: 30
素早さ: 46
賢さ:120
運: 255
スキル:
〔初等片手剣術: MAX〕
〔中等片手剣術:MAX〕
〔初等基礎魔術:MAX〕
〔遊ブ者: 1 〕
パッシブ:
〔天下遊覧: 戦闘力の低下を招くが、強運によりある程度の範囲内において確率を操作できる。〕
正直言って弱い。クソ弱い。
レベル1に戻ったといえど、10年かけて培ってきた俺のステータスは一瞬にして凡人に毛が生えた程度のものと化してしまった。
唯一の救いは賢さとMPの高さだ。
このアドバンテージは現時点で他のレベル1の駆け出し冒険者の中でも群を抜いていると思われる。
だが俺が使える魔法は初等のみで、中等以上の呪文は本物の魔法使いなど、魔法職でないと習得できない。
それは剣術も一緒で高等以上の剣術を身につけるには戦士などの戦闘職に就かなければならない。
そんな自分の弱さを悲観していると――
「ここが酒場か。今日は冒険者登録と飯を食って宿を取るか。」
――ギィー。バタンバタン――
扉を開けた瞬間鼻をつくエールの匂い。もうすぐ日の没する時間だからだろうか? 冒険者たちがこぞってエールやビールを片手に語り合っている。話の内容は、今日の転職の儀に関すること。
もっと言えば、自分の職業の自慢だ。
「やれやれ。その話は俺の中で禁句なんだがなぁ 」
自慢し合う連中の横を毒づきながら歩いていく。
ジト目で睨まれた俺はそそくさと酒場の受付嬢に冒険者の登録をしてもらうために向かった。
「今日はなにがご希望ですか?」
「今日成人したばかりなんだ。冒険者登録を頼む。」
「はい! わかりました! では、こちらに職業を記入してください!」
やはり職業を記入しないといけないのか。俺は自分の職業をどうしても人には明かしたくない。なぜなら……
「え! まさかあなたの職業は[遊び人]ですか!?!? 」
受付嬢の一言に酒場にいた誰もが俺を見つめた。
「まぁ、わかりました。我々冒険者ギルドは来るものは拒みません。あなたの冒険者登録を認めます。ギルドIDは130910、デュークさんで、〔遊び人〕ですね。たしかに受け付けました。」
俺はこの時間が永遠かのように思えた。
遊び人だと目の前のアマが大声で叫ぶせいで、周りから白い目で見られてしまった。
今日はもう飯でも食って宿を取ろう。
そう思った時だった――
「へいそこのあんた。あんた〔遊び人〕なんだって? すげぇな! そんな職業で冒険者になろうなんて、俺なら考えつかないね〜。まぁそもそも俺は遊び人なんて職選ばないけどね!!!。 ダーハハハハハッ。アヒっアヒっヒヒヒフフフフ」
男につられて酒場内の野次どもまで笑い出す。
「なぁなぁ。俺がよぉ〜あんたのこと試してやるよ。俺に負けるようならやめちまった方がいいぜ? なぁみんな!!」
「「そーだ。そーだ。」」
窓辺に座る1人の男と受付嬢を除いてその場にいる誰もが俺を嘲笑い、負かそうとしている。
「さ! 始めようぜ! 決闘。デュエルだよ、デュ・エ・ル!! やるの? やんないの?」
俺は無作法かもしれないと思いながら、奴のステータスを調べた。
職業:戦士
レベル: 7 / 50
HP: 155 / 155
MP: 30 / 30
力:110
守り: 74
素早さ: 53
賢さ: 25
運: 7
「いいぜ。いいぜ。俺のステータスを見たっていいんだぜ〜にいちゃん。でどうだい?」
「ああ。わかった。その決闘受けよう。」
「いいねー! そうこなくっちゃあ!!!」
「にいちゃんに先手はくれてやるぜい!」
「なるほど、ありがたくそうさせてもらう」
そう言って俺は背中の剣の柄に――
あれ? ないぞ! しまった! 装備は明日買うつもりだったから銅の剣すら持っていないのだ! さすが遊び人と言ったところか笑笑
そうして俺は対人戦で初の「呪文」を使っての戦闘にシフトチェンジした。
そして俺は体全体で魔力を練りあげ、右手に集中させた――
いかがだったでしょうか?
剣も魔法も使えるとはデュークは魔法戦士の下位互換ですね笑笑
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