第10話:村長の息子
長らくお待たせしました!まったり続けるのでそこんところゆたしくゆたしく!
「おりゃ!」
――ドンっ ドンっ ズン……グチャッ ――
「グピィィィィ」
「い、今のは危なかったなぁ〜」
「そうですね。あら、ジョーさん、腕から流血してますわ! 〔元気回復〕」
「お!ありがてぇ! サンキューな!」
俺たちは次の街、オベイルへ向けて王都から南下している。そこを拠点にこれからしばらくの間は活動するからだ。
俺とジョー、シーアの3人で向かうわけだが、道のりの半分を越えたあたりから思うようにすすめないでいる。
というのも王都の領域を抜けたあたりからそれまでウサギや小動物といった類の魔物の生息圏だったのだが、今ではイノシシやオオカミといったどう猛で好戦的な魔物が増えたからだ。それが一体なら難なく対処できるが、3、4匹で群れをなす種族がほとんどで、攻撃役が2人の俺たちは多勢に無勢なのだ。
「デューク! 茂みから離れろ!」
「なっ!!! 」
「グルルルゥ……ワオンッ!」
「クソ、次から次に鬱陶しい。〔五月雨斬り〕」
紅狼たちを鉄の嵐が襲う。
「光幕!!!!」
「ギャオンッ! クゥ〜ン……」
「2人ともどきなッ! 必殺ぅぅぅ、〔回転斬〕!!!」
剣撃と光で怯んだところへ渾身の一撃を放つ。うまくカザグルマが三体のレッドウルフを捉え絶命させていく。
「まったく…… 一瞬も気が抜けねぇなぁ。まぁこの俺がいる限り、おめぇらには指一本、いや、キバの一本も触れさせやしないゼェ! 」
「さすがですわ! ジョーさんさまさまです!」
「ジョー。 無駄口叩いてないでレッドウルフの毛皮を剥ぎ取るの手伝ってくれると俺は嬉しいなぁ」
魔物の毛やツノ、爪といった部位は加工して武器や防具、日用雑貨なんかを作る素材としてなくてはならないものなので、これをギルドや商人に持っていくと買い取ってもらえる。少しでも生活の足しにするために毛皮は必要だ。
「おーやおや。 どうやらデュークの旦那は忘れてやがるなぁ〜。 実は毛皮を剥いだ数は私、ジョーの方が多いんですヨォ〜。 17枚も剥ぎ取ったもんねぇ!」
そう言うとジョーは懐からナイフをだし、一振りする。するとものの10秒で肉と皮を両断していく。
「ほらな? 俺はサボっちゃいねぇーぜ?」
「やれやれ……」
こんなやり取りをしていると遠くに大きな門が見えてきた。
「二人ともあれを見てくれ! たぶんあの門がオベイルの入り口だ! 歩くペースを上げよう」
「「了解!」」
こうして俺たちは眼下に迫るオベイルへ向けて歩みを早めた。
◇
きらびやかな装飾が一切なく周囲を、防衛を目的とした堅実な作りの門をくぐり抜けるとそこには村全体が塀で囲まれており、異様な緊張感が漂う村が俺たちの目に映った。
「どうも。こんにちは。」
「ようこそオベイルへ! しかし旅の方、今来るのはなかなか間が悪いですなぁ……」
軽武装した門番は決まりが悪そうに答える。
「何かあったんですか?」
「いやぁ......なんと言いますか、原因不明なのですが、今は周囲の魔物の凶暴化や大量発生が起きていて、みんなピリピリしてるんですよ。見てもわかるように、周囲を塀で囲ってるんですが最近はそれを壊そうと夜な夜な魔物の群れが村を包囲するもんで、ほとほと困り果ててるわけですよ。」
「なるほど、ありがとうございます」
「いえいえ! では旅の方も気をつけて。」
なるほど。この様子だと、オベイル周辺でもなんらかの異常事態が起きているようだ。
今日は旅の疲れを癒し、夢の活動は明日から再開しよう。疲れは良くないしね。
「今日はまず、宿をとってしっかり休――」
「「きゃーーーーー!!!」」
「「助けてくれーー!」」
人々の悲鳴とともに、獣の唸り声が街にこだました。
俺たちは顔を見合わせると駆け出していた――
◇
「えい! やっ! すいさー! すいさー!」
そこには長めの棍でレッドウルフの群れを相手する一人の青年の姿があった。棍のリーチを生かした立ち回りでレッドウルフを牽制しているが多勢に無勢で攻めあぐねている。
「お兄さん! 助太刀するよ。」
「旅の方か。有難い! 私が隙を作るからそこを突いてくれ!」
そういうと青年の棍が紅い炎を纏いはじめた。
「〔壱の型・旋風陣〕 ゆいさっ! 」
紅蓮の棍が大振りに振られ、レッドウルフ達が怯んだ。
「旅の方よ! 今だ!」
青年に促されるままに俺は〔一閃斬〕を放った。剣は軌道上にいるレッドウルフ達を横薙ぎに斬り伏せ、見事にレッドウルフ達を絶命させるに至った。
「見事。旅の方よ、助力の程感謝致す。今回の一件の報告とお礼を兼ねて是非我が家に来て欲しい!」
「有難い申し出だが、あなたの家に行って何を報告するんだ?」
「すまない。私の父はこの村の村長をしているだ。それ故、報告しなければならないんだ。といっても簡単な質問と状況を説明するくらいさ。」
「なるほど、俺はデューク・タイガっていう名前だ。よろしく。」
「すまないな。自己紹介がまだだったか。私は、オバティコ・オバマ。こちらこそよろしく。」
そうして俺たちはオバティコと名乗る青年についていき、村長の家を訪ねたのだった。
オバティコの家に行くことが俺にとっての転機となることはこの時だれも知る由もなかった――
春って忙しいですよね。出会いや別れの繰り返し。めまぐるしく回る季節ですが、皆さんの出会いに幸あれ!ということで挨拶としときます。
初登場の特技
〔五月雨斬り〕 五月雨のように剣を縦横無尽に走らせ、広範囲にいる敵を切りつける技
〔壱の型・旋風陣〕素早く棍状の武器を振り回す技。スキル[棒術]で取得可能。
〔一閃斬〕一定範囲内を光のごとき速さで一薙する。中等片手剣術で取得可能。