腹を割って...話そうじゃないか 前編
うぐ...一時間クオリティなのを許しておくれ...
『魔法』
それは零から一を生み出すための手段であり、その用途は多岐にわたる。だが...やはり、どんな行為にも代償が必要なように、今や生活の要となっている魔法にもリスクは存在する。
それが『魔物』だ。
太古の時代に魔法と言うものを見付けた時から、今この瞬間さえも数千数億と世界中で使われている。
しかし、「魔法を使用する」という行為はどうにも自然の生態系に関わるらしく、その突然変異として生まれてきたものを総称して『魔物』と呼ぶ。
魔物の造詣は総じて醜く、例えようもなく、おぞましい姿をしている。
そして、そんな異形の者達を使役し、我々から世界を掠め取ろうとしている異形の王。
それを私たちは───『魔王』と呼ぶのだ。
△▼
最近、魔王とかいうのが暴れてるらしい。なんでも、妻を人間に殺されたとか。
それで人間の勇者と魔王がタイマン張って...なんだっけ、なんとかって言う勇者がボコボコにされて、色々と大変らしい。
まぁ、何故この話をしたかと言うと───その尻拭いが俺にも回ってきたからだ。
ふざけんな!俺は元から反対だったんだよ!父さんが倒れてる今、書類やらなんやらで忙しいのに...さらに仕事増やしやがって!ふぁっく!
山のように積み重なった書類達にファックサインを決め、また黙々と作業に戻る。うぅ...納期が....ああ、今日も寝れない........
ウチの屋敷は、公爵家にしては小さい方だと思う。デカイ屋敷だと維持費もバカにならないし、合理的といえば合理的だ。
そして、何故か小間使いを雇わない。そのせいで掃除洗濯料理等々は、昔から俺がやっている。家庭的な貴族ってなんだよ...
父さん曰く、最低でも一人暮らしが出来るように...って、どうして一人暮らしする前提なんだよぉ...
...うん。一先ずそんなことは置いといてね。
先月から色んなものに追われて...もう、精神的に参ってるのですよ。癒しが、癒しが足りない。
なんで成人もしてない10歳のガキにこんなにも背負わすんだよふざけんな!
当然、こんなガキが領地を回しているのだ。流石にボロも出てくる。失敗も続き、領民から不満の声も多々ある。
マジ、誰か助けて。この事父さんに泣きついたら「こう言うところで、成長が生まれるのだ。限界が伸びるのだ。ふぁいと」って言われたし...ふぁいと、ってなんだよ。ふぁいと、って。自分の年をよく考えろよ!
母さんはどこの馬の骨とも知れない奴とほっつき歩いてるしよぉ...はぁ、アズリア公爵家終わったかもね。本当に...はぁ。
と、言うことで。癒しを求めてローリエの部屋へ。
コンコン
「ローリエ、割りと真面目に話したい。開けてはくれぬか?」
いつになく厳かな声で語りかける。本当にコッチは限界を迎えそうなんだよ...可哀想な俺を癒して。
キィ、と木製のドア特有の音と共に、半分だけドアが開く。
「...ごめんなさい。今はお腹が痛くて...」
「案ずるな、胃腸薬を持ってきた。さぁ、語り合おうではないか」
ふっ、伊達に5年間断られ続けてないわ!...短時間で胃腸薬が効くのかは知らないが。
「...今、風邪気味なので...」
おっと、そうきたか。新しいパターンだ。だが、ある意味悟りを開きかけている俺には効かんぞぉ!
「どれ、体内の雑菌を滅ぼしてやるから少し体を外に出せ」
風邪?雑菌ごと燃やし尽くせばいいじゃない。
「いやっ、ちょっ...はぁ、分かりました。では、応接間へ行きましょう」
おい、今コイツ溜め息吐いたぞ。
だがそんなことよりも──久しぶりに長話が出来そうな事実に、俺は歓喜で打ち震えていた。
そんな俺のことを、無機質な瞳がただただ睨んでいたような気もしたが、きっと気のせいであろう。
「...それで、如何なご用がおありで?」
おっと、感動している場合じゃなかった。そうだよお喋りしないと!
「...あぁ。最近、俺が事務処理を引き継いだのは知っているか?」
最も、“まだ”正式には引き継いでないが。
彼女はポカーンとし、そして首を横に振った。呆けた顔も可愛い。流石俺の嫁。さすよめ。コッチは正式だからな!この前王宮にも提出したし!
「それでな...中々思うようにいかなくてな。少し慰めて貰おうと思って」
彼女の顔が露骨に嫌そうになる。
そんな顔も可愛──もういいか。
あぁ、でもコッチは割りと真剣な話だった。
「なぁ...お前って、正直俺のこと嫌いだろう?」
「はい」
...即答かよ。
受験が...受験が悪いんです...
あああああああああああああああああああ!!!
でも、予定より早く出せてちょっと嬉しい。