父の心境
前回のあらすじ。
・主人公に許嫁が出来た!
・あれー、なんか睨まれてるなー?
・でも可愛いから許しちゃう!
以上。
『神の啓示』とは。またの名を『神の悪戯』と言われており、神が遊び半分で行ったとされる未来予知のこと。
しかし、遊び半分と言えど、神の御業であることは間違いない。予知の精度は百発百中であり、一言で運命さえも操ると言われている。
よって、神の啓示を受けた者のことを総じてこう言うのだ。
───『神に魅入られた者』、と。
神に魅入られた者の運命は波乱万丈な人生を送ることになる。
何故なら、神はそうすることで人類の興廃を操作しているのだから。
魅入られた者は、必ず何かを成し遂げなくてはならない。それが運命であり、神の選択であるから。
もしも、仮に成し遂げられなかったとするのなら........例え輪廻を何度巡ろうとも、神の呪いが汝を襲うだろう。
───著 『古事記』より抜粋。
今日、私の息子が神からの啓示を戴いたらしい。
...そうか、息子が神に魅入られてしまったか。なんでも、二十年後に人の形をした悪魔が町を襲うらしい。息子が嘘をついているようにも見えなかった。
...つまり、そういうことなのだろう。
クソッ!ようやく、ようやく息子の未来が安泰だと確信できたところなのに新たな試練を与えよって。
恨むぞ、神よ。
取り敢えず息子には、夢だと説明したが...何時まで持つだろうか。自分で言うのもなんだが、息子は天才だ。恐ろしいことに、あの年で“総魔力量”がこの国で断トツだ。
確かに、我が息子なら英雄になれる器があるであろう。
しかし...今のヤツには『中身』が圧倒的に足りないのだ。広大で空虚な空間を埋めるにはどうしたらいいかと考えたが...一向に思い浮かばん。
魔法を鍛えるにも、基礎やら応用やらを含めるとまるで時間が足りない。化け物とやり合うなら魔法の一属性や二属性、極めてからが本番なのだ。
目には目を。歯には歯を。化け物には化け物を、だ。
私が戦うには...少々歳を取りすぎている。そもそも、私の病状次第ではいつ死んでもおかしくないのだ。
だが───まだ、まだだ。まだ、死ぬわけにはいかない。
息子に貴族のいろはを教えなくてはならない。
息子の誕生会兼、お披露目会をしなくてはならない。
息子と...遊んでやらねばならない。
ふふふ、まだまだやることが沢山あるな。それだけで私は生きていけるというものだ。
何処にいるか、そもそも存在しているかすらわからん神よ。しかと刮目せい!息子は───息子と私は、貴様なんかの運命になんて負けてやらないかな!
時間がないんです。
今日はとくに。