狂いだす運命
ちまちまやっていこうと思います
十七年前、『アズリア公爵家』に新たな生命が芽吹いた。
名は、「ファイラー・アズリア」。
金髪碧眼の可愛らしい少年だった。
彼の家...『アズリア公爵家』では、代々優秀な火属性魔法使いを多く排出している名門中の名門だ。
その中でも彼は、非常に優秀であった。御隠居をもってしても『過去最高』と唸らせざるを得ないほどに。
“魔力総量”、また“魔力操作”が共に幼い頃から特出していた。
少年時代で既に火属性最上級魔法である『不死鳥』を日に何度も連発出来るほどに、彼の性能は色々と壊れていた。
そして、彼が5歳の頃だ───運命が動き始めたのは。
運命の歯車が──動き出す。キィキィと身の毛もよだつような騒音を立て...儚く回る。何時までも、何時までも。
その身が滅びようとも、永遠に。
「ほら、ローリエ。公爵様にご挨拶を」
「...よろしくお願いします」
そう言い、ペコリと頭を下げる少女──ローリエ。
今日は父が珍しく上機嫌だったため、何があったのかと聞いたところ。「楽しくなるのはこれからだぞ」と、意味不明なことを言ってきた。
で、言われるがままに着替え、寝癖を直し、連れてこられたのは........何故か食堂。しかも先客がいる。あれは...『ゾイド侯爵』じゃないかな?しかも隣にいる銀髪美少女はゾイド侯爵の娘さんでは...?
そして先の挨拶に戻る。
はて、いったい。
「ほれ、ファイラー。お前も挨拶せんか」
「え、えぇ。よろしくお願いします」
しん、と静まり返る食堂。そして親二人は何故かニコニコとしている。意味わからん。
誰か、誰かこの状況の説明を...!!
俺の願いが通じたのかどうかはさておき、ようやく父が話始める。
「えー、この度はアズリア公爵家へようこそ。そして...この話を受けてくださったゾイド侯爵家へ、感謝を」
「いえいえそんな。お子様の噂はかねがね聞いておりまして...そこにあの話が来たら、此方としても嬉しいものでしたので」
あの話...なんだ、何を企んでいるんだ!?怖いのだが!!やめて、侯爵様。そんなにまじまじと見ないで!
「ウチとしても...ファイラーに許嫁は少し早いかなとも思ったものですが...」
い い な ず け ?
待ってよ父さんなんの話も聞いてないよ。僕の将来の相手を勝手に決めな───
チラッと銀髪美少女を見る。
...いやいやいや、ないない。僕があんな別嬪さんと?ありえない。どうせ僕はどこの馬の骨とも知らない奴と結婚するんだ。SEIRYAKU結婚なんだよ。いや、この子と結婚したとしても結局政略結婚には変わりないのだが...
チラッと銀髪美少女を見る。
もしなー、もしあの銀髪美少女だったらな...夢が広がりますねハイ。
むふふ...いやなんでもないです。
チラッと銀髪美少女を見───目があう。
「...何か?」
コテン、と小首を傾げる銀髪美少女──長い。ローリエ。
ふん、そんな可愛く見せようったって俺には通用しないよ!
本音:可愛ええええ!!ヤバイ、ヤバイって!萌え死んじゃうよ!
「う、ううん。なんでもなき...」
噛んだ。舌がぁ...
「.........」
なんだろう。とてつもなく冷めた目で見られている気がする。なんかすみませんでした。
俺達の会話(?)を微笑ましく見ている親二人は着々と話を進めている。
「なんでも、娘さんはゾイド家過去最高傑作だそうで」
「いえいえ、ファイラー様には劣りますよ!」
「ご謙遜を。二つ隣の領地とは言え、よく風の噂で聞きますぞ、『水属性魔法で彼女の右に出る者など賢者様くらいだ』とな!」
今日の父さん、やはり機嫌が良いな。なんだろう。やっぱり本当に許嫁って─────
「では、許嫁の話は決定と言うことで...?」
「ええ、末長くよろしくお願いします」
何かが決まったらしい。あれー、俺の意志はー?
「ローリエ」
「...はい」
「此方はお前の許嫁となるファイラー様だ」
「........はい」
タメ長いなおい。
それは置いといて。えっ、えっ、えっ........マジ?マジなの?こんな絶世の美少女と将来結婚出来んの?
........ヤバくね。最高じゃね。フォォォォォー!!!
来た!遂に俺の時代が来たんだ!なに、「あなた~」「なんだい、マイスウィートハニー」とか言っちゃうの!?
この時の俺は、馬鹿みたいなことを考えていて気がつかなかったんだ。彼女の瞳の奥で、途方もない憎しみの炎が渦巻いていることを。そのときは───気づけなかったのだ。
その日の夜........俺は神の啓示を受けた。
それこそ──運命が完全に狂ったことを、何よりも雄弁に語っていた。
次話は...未定です。
頑張って早めにしたいです。