94話 説明2
「2つの世界に起こっていた事、ですか?」
「ええ、その通りです。
2つの世界、俺達が召喚される以前にいた世界と、今いるこの世界の事ですが……そうですね。
簡単に言えば、魔王であるコイツらを含め俺達は全員、何者かの掌で踊らされていたんですよ」
「どう言う意味でしょうか?」
怪訝な表情になる学園長と中村達4人、まぁそうなるわな。
「学園長は当然知らないでしょうが、俺達が元いた世界には〝アース・ワールド・オンライン〟と言うゲームがありましてね。
通称AWOと呼ばれるそのゲームは世界中の人々が認知していたと言っていい程の代物で。
勿論、そこの4人も含めこっちに召喚された全員が知っています」
軽く視線を向けると俺の言葉を裏付ける様に4人が頷く。
「そのゲームの中では地名や場所、世界の成り立ち、固有名詞に至るまでがこの世界と一致しているんですよ」
「まさか…」
流石は学園長、察しがついたご様子で。
それに比べて勇者4人組は……はぁ。
そもそも、君たちの方がゲームの事を元から知っていてヒントが多いんだよ?
温室育ちの高校生と弱肉強食の世界で生き抜いてきた学園長のこれが人生経験値の差ってやつか……まぁ、単純に年齢の差もあるとは思うけど。
「ソータくん?」
睨まれた。
なんか知らんけど学園長が一瞬凄い怖い目で睨んできたんだが。
今は聖母の様な笑顔だが、俺にはわかる!
目が全く笑ってない事が!!
それに、さっきまでは敬称が〝殿〟もしくは〝さん〟だったのに今は〝くん〟だし……
コレは、アレなのか?
異世界転移した主人公達が何故か一度は口にすると言うあの言葉!!
学園長はエスパーかっ!?
「…すみません」
なんか知らんけど誤ってしまった。
まぁ別にいいけど……ってか誤ったんだからその笑顔の圧辞めてくれませんか学園長!!
「何に対しての謝罪なのかわからないけれど、まぁいいでしょう。
それよりも、今の話が本当だとすれば……黒幕は魔神タージタクスでしょうか?
あれ程の力を持っていたとすれば不可能ではないかもしれません」
「そうですね……少なくともタージタクスは」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!」
「どうかしたのか?」
全く突然大声を出さないでもらいたいものだ。
それに人の言葉を遮るとは……可哀想に中村は貴族社会では生きていきにくいだろうな。
「お前やリティエジーナ先生はわかっていても、俺達には何の事か…」
そういや、コイツらはまだ理解出来てなかったんだっけか?
すっかり忘れてたわ。
「そうだなぁ。
中村は召喚された時みんな、この世界はAWOの世界だと言ったのを覚えてるか?」
「あ、あぁ確かに言ったと思うけど」
「お前らもすぐに気づいたはずだ、ここはAWOの世界だってな。
けど、それっておかしいと思わないか?」
「おかしい?」
「何で俺達が向こうの世界で起動したゲームで仮想空間ではなく現実に実在するこの世界に行き着くんだ?」
「そ、それは…」
「確かに、言われてみれば妙だな」
俺の言葉にハッとなり言葉を詰まらせる中村に思案顔になる坂本。
女子2人は思考が付いてきていたいのか微妙な表情をしているな。
けどまぁ、こればかりは納得してもらわないと話が先に進まない。
「そもそもだ。
いくらゲームだと思っていているとはいえ、実在する異世界に飛ばされて誰も違和感を抱かないなんてことありえると思うか?
数万人程度の規模だったら限りなく可能性は低いがありえなくはない。
だが……AWOはプレイヤーの数こそ少数だがその映像は世界中に配信されていたんだ。
誰一人として何の違和感も抱かないなんて不自然だと思わないか?」
全世界数十億という数の人々の目に映っていたのにもかかわらず誰も違和感を感じない。
ネット上でリアル過ぎないか?と言った議論さえ展開されない。
明らかに不自然すぎる。
そ話しかけるNPC一人一人が話しかける時で違う受け答えをし。
地球と同等かそれ以上の広大なフィールドを展開。
さらには後漢の再現も完璧ときたもんだ。
あの女神にあってから初めて考えたが、そんな超スペックのハードは現代技術としては進み過ぎている。
多分、そんなものは実在していなかったんだと思う。
そう考えれば不自然なまでに運営のことに対する情報がなかった事もわからないでもない。
「しかもだ、こっちの世界ではワールドは実在した過去の人物と認識されている。
ここまで言えばわかるだろ?」
「司波…じゃなくてソータ君、それってつまり」
広瀬は苦笑いを浮かべているが、全くもってその通りです!
正解です。
よくわかりましたね、花マルをあげましょう。
「そう、両方の世界の人々に全く何の違和感を抱かせる事なく認識を欺いていた奴が存在するって事だ。
だから最初に言ったろ〝俺達は全員、何者かの掌で踊らされていた〟ってよ」
「しかし、本当にそんな事が……私達であればともかく。
魔王であるネルヴィアさん達に一切悟らせずに欺くなんて芸当が出来るものなのでしょうか?」
「認めたくはないが……実際に為されていたのだから認めるほかあるまい」
忌々しそうにネルヴィアがそう答えてはいるが、頬の緩みを隠せてないぞ。
「なるほど、その黒幕が魔神タージタクスだったて事を言ってたんだ」
あかりが納得って感じて頷いているが、うん、人の話は最後まで聞いてほしいな。
「さっきも学園長に言おうとしたんだが。
黒幕はタージタクスじゃない、断言してもいい」
「なっ!?」
それまで生徒の成長を優しい目で見守っていた学園長が驚愕の声をもらした。
「そもそも、あの程度のヤツじゃあ丸々世界2つなんて事出来ないだろうし。
もし仮に出来たとしてもアイツの技量じゃあコイツらが絶対に気づきます」
「そ、それでは…」
「えぇ、黒幕は別にいます。
それもタージタクスとは比べ物にならない程強いヤツが」
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こっちは明日更新します!!
「伝説の吸血鬼となった商人は怠惰スローライフをお望みです」
そこそこ読める作品だと思うので是非読んでみてください!!