93話 説明1
「えー、では再開させてもらいますね」
結局あの後休憩を挟む事になり……って、まぁあんな状態じゃああのまま継続するって選択肢は初めからなかったんだけど。
取り敢えず、休憩を挟む事になった。
そしたら、ネルヴィアの奴が
「こうこんな時間だ、休憩を挟むと言うのであれば晩餐を開くとしよう」
などと唐突に言い出しやがったので、結局小一時間の休憩にするつもりが数時間は経ってしまった。
そして晩餐といえば勿論、酒も入る訳で……結局、日を跨いでしまった。
て言うか、なんで魔王と人類の希望とか言われてるSSSランク冒険者と勇者が一緒になって飯食ってんだよ?
学園長に至っては明け方まで魔王共と酒を飲んでいたせいか、かなり顔色が悪い。
「昨日は、その」
「いえ別に構いませんよ。
ネルヴィア達に勧められたとはいえ、晩餐が終わっても明け方まで学園長が飲み続けた事なんて全く気にしていませんので」
「…本当に、すみませんでした」
とまぁ、嫌味を言うのもこれくらいにしておこう。
昨日は学園長も色々あった訳だし、皆の命を危険に晒したとはいえ生徒を手にかけたのだし。
そりゃまぁ酒でも飲まないとやってやらないわな。
「ご主人様も一緒になって飲ん」
「何か言ったかなミラ君?」
「い、いえー何もっ!」
有無を言わさない笑顔で後ろを振り向くと慌ててミラが首を振って否定するが……もう遅い。
ミラの頭の上に大量の虫を落としてやった。
ミラの悲鳴が響き渡ったのは言うまでもない。
それでも着弾する前に結界で身を包み虫を弾いたのは訓練の賜物だろう。
まぁ、毒があったり危険性のある虫は落としてないのでもし着弾していても大丈夫だ、身体的には。
「あの様な幼子にこの所業、この鬼畜め」
ネルヴィアが隣で何やら言ってるが気にしない。
あと後ろで悪魔娘達が目を輝かせている、さすがは悪魔だな。
彼女達とは趣味が合いそうだ。
「ゴホン、では改めまして。
昨日も言った通り俺がワールドだと言う事ら理解して頂けましたか?」
「はい。
昨日はあまりの衝撃に我を忘れてしまいましたが。
考えてみれば貴殿の強さ、魔王達と知り合いという点でそうとしか思えません」
「学園長はこう言ってるが…悪いが俺は信じられない」
「俺もだ、そもそもお前がワールドだってんなら何で向こうでそれを黙ってたんだ?」
学園長は1日夜を開けて納得した様だが中村と坂本はそうもいかないらしい。
「お前達が信じないのは勝手だが。
そうだな、あえて言うと目立ちたく無かったから黙ってた、これが答えだ」
まぁ納得出来ないのであれば、後であかりやある程度知ってそうな広瀬にでも聞いてくれ。
「それで学園長は放心していて聞いていなかったと思うのでもう一度改めて言いますが。
俺はそこの4人と同様、異世界から召喚された存在です」
「ふむ、詳しくお願いします」
学園長が真偽を見極めようと軽く目を細めてくる。
「勿論です、では一から説明しましょう。
俺は、中村達4人や他の勇者達と共にこの世界に司波 翔太として召喚されました。
当然の流れですが、すぐにステータスを調べることになりましてね。
他のみんなが希少なジョブの中で俺のジョブは遊戯者。
理由は後で話しますが力を失っていた当時、勿論全員何も知らないので俺は無能扱いですよ」
おどけた様にそう言うと、中村が視線を逸らして地面に落とした。
コイツはクラスのまとめ役だっただけに俺に対するイジメに参加していた事を後悔しているのかもしれない。
俺に言わせればどうでも良かった事なんだけどね。
「無能ですか?
ワールドであった貴方がですか?」
「遊戯者のジョブについてもまた後で話しますが、当時の俺は兎に角目立つのが嫌でしてね。
理由は、まぁわかるとは思いますがコイツらです」
俺はそう言って隣に座るアホな子を含む魔王3柱を指差した。
「俺がもしこの世界にいると知られれば面倒ごとになる事は容易に想像出来ました」
現にそうなっているので、これに関しては間違いない。
「とまぁ、そんな訳で目立たない様に全盛期の力に少しでも近づけようとしていた矢先、邪魔が入ったのです」
「龍王と妖精王による王都襲撃ですね?」
「ええ、どこで知り得たのか。
コイツらは俺の事を嗅ぎ付けて、しかもわざわざご丁寧に魔物の大群を引き連れて王都に来ましてね」
俺の嫌味にケラケラと楽しそうに笑うヴァイスロギア。
よし、コイツにはしばらくゲームを禁止してやろう。
「あの魔物の中には今の世界から見ればそれなりの強敵もいました。
学園長であれば何とか出来たでしょうが、残念ながらあの場に大きな気概を出す事なく事態を収集できる人材はいませんでした。
勇者達も多少強くなったとはいえ所詮は一般人に毛が生えた、精々がCランク冒険者上位と言った程度。
アストラル王国最強の騎士、騎士団長ゾルフ・ハースベルでも、あの数を相手にどこまでもったか」
「成る程、確かにあの王都襲撃には鬼人と言った上位魔人もいたと聞きます。
よくても半壊、最悪王都は壊滅していたかもしれませんね」
「ええ、お陰で俺が出る羽目になりました。
尤も、先ほども言ったように既に俺の事はバレていたようなのでヤケになった節も多少ありましたが。
幸い、それなりには力を取り戻していたので魔物達はどうにかなったのですが。
この2人が戦場にまで乱入してきましてね」
「酷い言い草だなぁ、僕達は早く君との再会を果たしたかっただけだってのにー」
「それに、ソータ様であればあの程度どうとでも出来たでしょう」
「と、コイツらは言っていますが。
その通りです、ある程度の力を取り戻したと言っても全盛期には程遠い俺でも実際にどうにかなりましたからね」
この言葉に学園長が苦笑いを浮かべる。
俺が、お前らの配下は大したことがなかったと言外に言ったことがわかったのだろう。
「話を戻しますが、現場にこの2人が出てきたことで予想外の事が起こりました。
龍王と妖精王が殺気を向けたことで焦ったのか、中村が俺を巻き込む形で魔法を放ってきましてね」
学園長に凝視された中村達4人が非常に気まずそうに顔を伏せる。
「まぁそれがきっかけとなり、その場に集まった全員で集中砲火ですよ。
とは言っても、それは俺にとっても願っても無い事態でした」
ほんと、アレが無かったらもっと面倒なことになってただろうしな。
例えば、あと状態の俺をもしネルヴィアが見たりすれば……俺はストレスで禿げてしまっていたかもしれない。
「あれ程の魔法が吹き荒れる中であれば流石のコイツらでも俺の魔力だけを特定するのは難しい。
つまり!俺がコイツらから逃げるとすればあの状況下しか無かったという訳です」
まぁ、あの集中砲火が無くともどうにかやって逃げたとは思うけどな。
「そして、案の定コイツらに捕捉される事なく俺は転移魔法で姿を隠すことが出来たという事です。
尤も、アストラル王国は俺は魔王襲撃の際に死んだ事にしたようですが。
その後はミラとリーナと出会いエラムセスに、あとは学園長の知っている通りです」
「そんな事が……貴殿が死んだ事にされたのはやはり?」
「ええ、勇者の看板に魔王に動転して人間を殺した何て傷をつける訳にはいかないでしょうからね」
「なるほど、ソータ殿がこの世界に来てからのことはある程度理解できました。
しかし、ソータ殿はワールドなのですよね?
ですが、ワールドは数百年前にこの世界に存在した人物ですよ?」
学園長の言葉にハッとした顔になる中村達4人。
どうやらそこまで考えが回ってなかったらしい、まだまだ子供だねぇ。
「その通りです。
では説明しましょう、この世界に…いえ、二つの世界に起こっていた事態を」
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こっちは明日更新します!!
「伝説の吸血鬼となった商人は怠惰スローライフをお望みです」
そこそこ読める作品だと思うので是非読んでみてください!!