9話 圧倒
第9話目になります!!
今後ともよろしくです!
空中に浮いている2名、龍王アヴァロスと魔王ヴァイスロギアその2名の登場で場は一気に凍りつき、準魔王クラスの魔物や魔人はその場に跪き、勇者一行と冒険者達はその圧倒的な存在感の前に何も出来ないでいる。
「やぁ、久しぶりだね。
僕が誰か覚えているかい?」
そう問いかけてきたのは、魔王であり妖精王でもあるヴァイスロギアだ。
彼はとても楽しそうに笑みを浮かべる。
「ヴァイスロギアか、こいつらはお前の部下か?」
俺はそう言って足元に倒れ伏す鬼人を指差し、ヴァイスロギアを軽く睨む。
するとかの魔王はニッタリと笑い軽く頷く
「覚えていてくれて嬉しいよ。
まぁ君の言う通り此処に押し寄せていた魔物達は全て僕の配下さ」
「それにしては全体的なレベルが低いな、それと鬱陶しいからその喋り方はやめろ」
「えぇ〜、子供っぽく見えていいでしょ」
そう言ってくるヴァイスロギアに向けてキッパリと言い切る
「やめろ」
すると、少し残念そうな表情を使った後魔王ヴァイスロギアの身体が白く輝き、そこから1人の人物が現れる、歳は25程度に見えるが実年齢は数100を優に超えている。
短かった金髪は肩口より少し下ぐらいにまで伸びており、150センチ程度だった身長も180センチを超えるほど伸びており、先程までとは打って変わってそこにはあどけなさを残した少年ではなく、美しい青年が立っていた。
「あの姿は結構気に入っているんだけどね」
「どうせ下らない理由だろ?」
「下らない?何を言うかね、幼い姿ながらもこの世界の頂点の一角に立つ力を備えた存在!
素晴らしいじゃないか!」
そう力説する魔王ヴァイスロギア、残念な事にコイツは少し残念な奴なんだよな…
そしてその様子を呆れたような表情で龍王アヴァロスが見つめている。
ついでに言うと俺も同じような目でヴァイスロギアを見ている。
そんな中居心地が悪そうに魔王ヴァイスロギアが口を開く。
「そ、そんな目で私を見るのはやめてくれないかな?
さてとアヴァロス取り敢えず下に降りるとしよう」
そんな事を言って慌てて誤魔化そうとするヴァイスロギアは空中から下降し始める。
だがそこで待ったがかかった、城壁の前で今まで唖然としていた勇者が声を荒げたのだ。
「おい魔王、勝手な事をするな!」
すると周りにいたクラスの奴らも騒ぎ出す、ハッキリ言ってうるさい。
「ん?
あぁ君は城にいた勇者君じゃないか、いつからそこにいたのかな?」
ヴァイスロギアも俺と同じ事を思っていたようで、少し挑発するように勇者をからかう、しかしそれが勇者…中村の琴線に触れたようで子供のように喚き出す。
「お、お前たかが魔王の分際で…ふざけるなよ!
俺は勇者だぞ!そこの無能の雑魚とは違う正真正銘の勇者なんだ!
それを、それをまるで道端の石ころのように扱いやがって」
「はいそうですか、では正真正銘の勇者君、私は今感動の再会を果たしているところなのです。
それを邪魔しないでいただけますか?」
「ヴァイスロギアそれでは私がなかまはずれみたいではないですか、そこは《私達》と言うべきでしょう」
「む、それもそうですね」
「俺はお前達に会いたくなかったよ…」
俺はそう言ってため息をこぼす。
「お前ら…この俺をこの世界で最強である勇者の俺を無視したんじゃねぇ…
死ね!雑魚どもが!」
そう言って中村が魔法を構築し始める。
「聖なる光の精霊よ、我が刃となりて敵を討ち滅ぼさん《神聖獣》!!」
そう言って発動された魔法は地球の神話で言うところの麒麟のような姿になってこちらに突っ込んでくる。
そしてこの弾道は確実に俺にも当たる弾道だ、しかもだ、ハッキリ言ってこの中村が放ってきた魔法はどうとでもなる。
しかし、中村が魔法の発動を準備し始めるのと同時に他の連中も魔法を構築し始め、中村の攻撃と共にこちらに向かって大量の攻撃魔法がこちらに飛んできている。
これら全てに対処するのはめんどくさい、こういった時は避けずに受けるのが俺の戦闘スタイルだったのだが、流石に今のレベルで受ければ無傷では済まないだろうし…
さてどうしたものかこの場合、今の俺が取れる最も楽な対処は上位転移魔法でワープする事
その他には、同レベルの魔法で相殺する、結界で防ぐとか…
よし面倒だしこのままワープして旅にでも出る事にしよう。
そして俺は再びその場からかき消えた。
その瞬間、勇者達が放った魔法がその猛威を存分にふるった。
凄まじい爆発が巻き起こり土煙が巻き起こる、
その様子を転移先である王都から少し離れた小さい丘の上から眺めていたが出てくる感想は、あぁそうである。
確かに凄い威力の攻撃だった、だがさっき俺が放った魔法の半分程度の威力にしかなっていない
そのせいかあまりすごく見えないのが何というか、とてもいい気味だ。
それにあの程度の魔法ではあの2人にはダメージを与えるのは無理だろう。
案の定土煙が晴れた時さっきと全く変わらない位置で無傷では空中に浮いている魔王ヴァイスロギアと龍王アヴァロスが現れた。
その事を確認した勇者の顔が困惑に囚われている、まぁこれであいつらも自分の思い上がりが理解できるだろう、この場を生き残れたらだが…
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勇者サイド
俺が現在放てる最高の魔法が他のクラスメイト達が放った魔法とともに化け物2人と無能に直撃した。
その瞬間凄まじい爆発が巻き起こり圧倒的な威力に勝利を確信する。
その隣であかりが青い顔をして崩れ落ちる。
「あかりっ!どうした?
あの化け物達に何かされたのか?」
俺は咄嗟にあかりに駆け寄り尋ねる、しかしあかりは激しく取り乱しそれどこではない。
「亮っちはあかりのこと何もわかってないよ」
悲しそうにそう俺に向かって言ってきたのは雫だ、俺があかりのことわかって無い?
「雫何言ってるんだ俺はあかりの幼馴染だぞ、俺があかりの事を何もわかってない筈ないじゃないか」
すると雫は呆れたような顔をする。
「あかりしっかり立てる?」
「雫ちゃん、私、わたし…」
「取り敢えず部屋まで戻ろう」
そう言って雫はあかりの肩を抱いたまま歩き出す、そしてちらっと顔をこちらに向けてその動きを止めた。
「勇者君、よくもやってくれたな…」
「はぁ、また振り戻しですか」
土煙が晴れたその場には無傷では浮いている魔王と龍王がいた。
「うそ、だろ…」
俺はそう呟くことしか出来ない、さっきの魔法は俺の最高の魔法だ、それを無傷なんて…
「はぁ、興がそれた、アヴァロスもう今日は帰るとするよ」
そう言って魔王はまたあの扉を開き跪いたままだった魔物達とどこかへ行ってしまった。
「全く、勝手な人ばかりですよ」
そう言って首を振りながら龍王がこちらを見てくる。
「では、私も今回はこれにて失礼されていただきます」
そして風雅に一礼し魔王と同じように扉を出現させる。
「ま、待てこんな事をしておいて逃げられると思っているのか?」
そうクラスメイトの誰かが叫んだすると龍王はこちらを振り向き一睨みする。
たったそれだけで凄まじい殺気がばら撒かれクラスメイトの殆どが意識を手放し崩れ落ちる。
「せっかく再会できたのに邪魔をされて私は少しイラついているのです。
またあの方を探さなければなりませんからね、次に私を引き止めるなら容赦しませんよ」
そう言って今度こそこの場から龍王が去って行った。
その瞬間俺は力なくその場に崩れ落ちる、
この時、俺は知った自らがどれほど思い上がっていたのかを…
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