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83話 重圧

「ま、マジかよ…」


先程の北山さんといい、静まり返っているこの空間に唖然とした坂本君の声が良く響く。


「さてと、多分ないと思いますが、皆さんお怪我はありませんか?」


「はい、大丈夫ですけど…」


私の問いかけに中村君が同じく唖然と目を見開いてい肯定の言葉を返してきた。


「良かったです。

それにしても……」


私を唖然と見つめている4人に軽く苦笑いを漏らしつつ、地面に倒れ込み気を失っているであろう坂東君に視線を向ける。


さて、どうしたものか?


通常であれば、帝国騎士を手にかけたのだから極刑は免れない。


しかし……仲間に致命傷を負わせ、帝国騎士を斬殺したとは言え、彼は異世界から召喚されたって勇者の1人。


本来であれば私がここで斬り捨てても問題無いのだが、彼の場合そうもいかない。


「あ、あれがSSSランク冒険者の実力かぁ」


「何て言うか圧倒的って感じだったよね!」


「あぁ、まさかあの状態の坂東を一瞬で……」


「流石は迅雷の剣姫です。

その名前に違わぬ強さでしたね!」


坂東君をどうするべきか1人頭を悩ませていると、楽しそうな4人の声が聞こえて来た。


どうやら私が色々と考えている間に衝撃から立ち直ったらしい。


しかし……


「き、北山さん、余りその2つ名を言わないで下さい……」


「えっ、何でですか?カッコいいじゃないですか?」


とてもいい笑顔で北山さんが再び私の2つ名を口にする。


「っ…!?」


自分の顔が熱を持ち、赤くなっていくのを感じながる。


迅雷の剣姫……私に付けられた2つ名をなのだが、私はこの2つ名が好きじゃない。


理由は簡単、単純に恥ずかしいのだ……


「学園長、1ついいですか?」


なるべく平常に努めながらも羞恥心に内心悶えていると、中村君がそう聞いて来ました。


「ええ、構いませんよ」


それを私は貴族や皇族の舞踏会やパーティーに参加する際に身につけたポーカーフェイスで何事も無いようにそう返す。


そうすると、4人の視線が自然と私に集まり…


「あれ?学園長、顔が少し赤…」


中村君が何やら言おうとしていたが、私はそれを視線で強制的に黙らせる。


「あ、あはは……それでですね。

さっきの攻撃、一体何をしたんですか?」


「雷神剣の事ですね。

わかりました、帰る道すがらご説明しましょう」


私がそう言って皆さんを促した時、一瞬にして場の空気が固まり、気温が下がるように感じられた。


『クックックックッ…まぁそう急ぐ事もなかろう』


何処からともなく聞こえて来た子の声を聞いた瞬間、背筋が凍りつき、心臓をその手に握られている錯覚に囚われる。


「何者ですか?」


『ほう、この重圧に平然と耐えるか』


その声はそう楽しそうに言っていますが、平然なんてとんでもない。


少しでも気を抜けばその場に膝をついてしまいたくなる程の圧倒的なプレッシャー。


出来るならば早急にこの場から退避したいのだが……


視界に映るのは、四つん這いになり身動きが取れなくなっている生徒の4人。


「やるしか無いようですね…」


『ハハッ、そう急くな。

面白い事を教えてやろう』


「面白い事、ですか?」


『ゴブリンロードとそこの人間が纏っていた魔力についてだ』


北山さんから受けた報告によると、ゴブリンロードも坂東君と同質の漆黒の魔力を纏っていたようですが……


『まぁ、少し見ていろ』


「どう言う事です?」


「ガァッァグギャギャャァ!!」


突然、響き渡った耳をつんざくような絶叫に背後を振り向く。


そこには、先程まで地に倒れ伏していたはずの坂東君が宙に浮き壮絶な絶叫を上げていた。


稲妻に服が焼かれ剥き出しになっている肌には赤黒い線がまるで血管のように浮き上がり蠢いている。


手の爪はめくれ上がり、目や鼻からは血が止めどなく流れ出す。


その壮絶な光景に思わず息を飲む。


「こ、これは一体…」


『我が魔力を宿したのだ、人の身体如きが耐えられるはずもなかろう』


何処までも楽しそうにその声はそう言い放つ。


そしてそれを証明するように、坂東君の身体を蠢いていた赤黒い線が彼の体表を突き破り噴き出した。


ボコ、と嫌な音が聞こえたと思えば、坂東君の身体が膨張していき……弾け飛んだ。


円形状に肉塊と共に血液が撒き散らされ、彼の身体があった場所には宙に浮かぶ漆黒の球体が1つ残る。


『ふむ、これはなかなか……フフ、フフフ、フハッハハハ!!光栄に思うが良い、貴様らはこの我自身がさらなる絶望を与えた上で殺してやろう』


すると、宙に留まっていた漆黒の球体が、突如膨張しこの空間に一つの穴を構築する事が直感的に分かりました。


渦巻くように凝縮していた漆黒の球体が突如消失し……


「お初にお目にかかる。

我が名は魔神タージスクタ、死ぬまでの短い間でしょうが、お見知り置きを」


その場に現れた存在、魔神タージスクタはニヤリと邪悪な笑みを浮かべた。


「魔神、ですか?」


そう言う自身の声が僅かに震える。


「クックック、恐怖するのも無理はない。

貴女は本能的に悟ったのです、我と自身の生物としての次元の差を」


魔神は笑みを浮かべたまま一度指を鳴らす。


それだけで、周囲に散らばっていた血液と肉塊が黒か染まりチリとなって一瞬のうちに魔神の前に収縮し先程のものよりも小さな球体が出来上がる。


「少量と言えど、我の魔力を含んだものですからね」


普通の人であれば触れようとしただけでも消し飛びそうな程の高密度の魔力体を魔神は何事も無いように握りつぶし取り込んで見せる。


「自身を神と名乗りますか、傲慢ですね」


「クックック、貴女がそう考えるのであればそれで結構」


魔神と会話をし時間を稼ぎながら、立ち上がる事ができない4人と退路の位置を一瞬視界に捉える。


「ですが、逃げる事は諦めた方がよろしいでしょう」


その言葉に、心臓が大きく跳ね上がり、嫌な汗が頬を滴り落ちる。


まさか、こうも簡単に見透かされるとは……


「無駄な努力程、虚しいものはありませんからね」


「これは……逃げきれそうにありませんね」


魔神から立ち昇る魔力を目にしてそう悟らされてしまった。


まさか、この私が生徒を連れて逃げる事すら出来ないとは。


「これが、神と言うと存在ですか……

中村君、立てますか?」


「は、はい、何とか」


私が声をかけると、同時に中村君を含め4人全員がフラつきながらも立ち上がる。


「ほう……結界を用いて我のプレッシャーに抗うとは」


その様子を見て魔神は感心したようにそう呟く。


「では、私が可能な限りヤツを引き止めておきますので、逃げてください」


「なっ!?」


私の言葉に、中村君は驚いたように声を漏らす、見渡すと他の3人も同様に納得出来ない、と言った表情をしています。


「今の貴方達に何が出来ると言うのですか?

貴方達がここに残ったとしても無駄死にするだけです」


「そ、それは…」


私の言葉に、中村君が言い澱む。


「ほう、ならば自身であれば無駄死にはしないと?」


その代わりに魔神がニヤケた顔でそう問いかけてきました。


「ええ、そのつもりです。

確かに、私はこの場で命を落とすことになるでしょう」


私のこの言葉に中村君達は悲痛そうな顔になる。


「ですが、今はまだ未熟な次世代の者を生かすこと程度はしてみせましょう」


雷神化を使い全身を稲妻とかし、笑みを浮かべてみせる。


「ふむ、多少は出来るようだが……

面白い、では貴方の言う通りそのもの達を逃がしきれるかどうか試してみるとしよう」


獰猛な笑みを浮かべる魔神はゆったりと腕を組んだまま動かない。


しかし、その身体から放たれる重圧は増していき……


「おいおい、人様の庭を何勝手に荒らしてくれちゃってんの?」


プレッシャーが決壊しそうになった瞬間、場に似つかわしく無い軽い声が響き渡りました。


少しでも『面白かった』『続きが気になる』と思ってくれましたら、


 ブックマーク登録及び、下記の評価ボタンを押して頂けますと嬉しいです。


これからもよろしくお願いします!!


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「伝説の吸血鬼となった商人は怠惰スローライフをお望みです」


そこそこ読める作品だと思うので是非読んでみてください!!

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