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81話 新たな脅威

遅れてすみません!!


聖剣の一撃によって浄化され消え去ったゴブリンロードに俺たちの間に立ち込めていた緊張感が一斉に途切れる。


「ふぅ」


「かぁー終わったっ!」


思わず息を吐き出しながら腰を落とすと、それと同時に駿が地面に大の字に倒れ込む。


それに伴い、聖剣解放が解除され聖剣が宙に溶け込む様に消え失せ、駿の手にあった大剣も同様に消えていった。


「中村っちも坂本っちも気を抜け過ぎー」


「そうですよ、まだ此処は世界最大のダンジョンの中なんですよ?」


そんな俺たちを雫とあかりの2人が諌めながら近づいて来るが、その表情は晴れやかなものがある。


何だかんだ言っても、2人もゴブリンロードと言う脅威を退けた事に安堵しているのだろう。


確かに、あのゴブリンロードは通常のゴブリンロードと比べてもかなり強い個体だったと思うもう。


それを退けたのだから多少気が緩むのも致し方無いと言えなくも無いが、此処はあかりの言う通りダンジョンの中だ。


「わるい、ちょっと気が緩んだ」


そう謝罪しつつ、立ち上がり聖剣では無い通常装備の剣を鞘から抜き放つ。


「どう?」


「うん、大丈夫みたいだ」


そんな俺に少し心配気味に聞いてきたあかりにそう返事を返す。


俺がしていたのは剣の刃こぼれが無いかどうかの確認だ、常に聖剣を出すことが出来ない以上、俺の主装備であるこの剣の点検は怠れない。


もし、刃が欠けていたりすればそれだけ斬れ味が落ちることになる。


尤もこの剣は刀とは違い斬ると言うよりは叩き潰すと言った感じだが、斬れ味がいい事に越したことはない。


確認を終えた剣を鞘に戻すと大の字に倒れ込んでいた駿が起き上がる。


「それにしても、いちいち手間が掛かるよな」


駿が言っているのは、勿論剣のことだろう。


「お前な、武器創造なんて出来るお前がおかしいんだかんな?」


武器を作り出すことが出来る駿がおかしいのであって、俺がやっている事が普通なのだ。


「まぁ、取り敢えず学長先生たちと合流しよう」


「そうですね、幾ら()()を入れたと言っても少し不安ですし」


俺の提案に、あかりがそう返し駿と雫も反対する事なく頷く。


ちなみに報告と言うのは俺と駿が有象無象のゴブリンを殲滅している時にあかりが遠隔通話魔法を使い学長先生にしていたのだ。


あかりの報告を受けて、恐らく学園生達は避難を始めているはずだ。


「それに、少し逃しちゃったもんね」


「まぁあの程度であればどうとでもなるんじゃないか?」


雫の言葉に駿がそう返す。


まぁ確かにあの程度の数であれば、低位の冒険者でも対応可能だろうし、総合学園に入学できるエリート達であればまず問題ない。


帝国騎士もいるし何よりあの学園長がいる、万が一もあり得ないだろう。


「確かに駿の言う事も一理あるが。

今日のダンジョンは何かおかしい、そもそもゴブリンロードなんてこんな浅階層にいるはずが無い。

それに…」


「あの黒い魔力ですか?」


あかりの言葉に頷く、駿もそれは同じ様で真剣な面持ちだ。


「確かにアレは以上だよね」


「ああ、だから出来るだけ早く皆んなに合流したい」


ゴブリンロードがこんな浅層にいる事自体が異常なのにあの黒い魔力だ。


何か他にも想定外のことが起こっていない保証はどこにも無い。


「じゃ、早く行くとしようぜ」


駿の言葉に一度頷くと俺は指示を飛ばす。


「俺と駿が前衛、雫は結界、あかりは魔力探知で周囲の警戒を頼む」


「了解」


「オッケー」


「わかりました」


普通なら、前衛、中衛、後衛と3つに分けるべきなのだが、今回は全速力で行くつもりなので背後からの攻撃を想定していない。


それに、万が一背後から奇襲を受けても雫の結界があるので余程でなければ対応が可能だ。


「よし、じゃあ行くぞ」


「何処にだ?」


この場にある筈のない第三者の声、そして俺たち4人には聞き覚えのある声だった。


「なぁ、教えてくれよ。

中村ぁ、一体何処に行くって?」


この場所は大きな広場になっていてそこから繋がっている道は2つ。


先に進む道と戻る道、そしてその声の主は俺たちが向かおうとしていた方向からやって来た。


つまり、先に進む道ではなく戻る為の道から…


そして、その道から姿を現した人物、俺達と同様にこの世界に召喚されたクラスメイトの1人。


そして、司波達に憎悪を目を向けていた人物、坂東 彰。


その姿を視界に捉えた瞬間、俺は剣を抜き、駿はその手に大剣を作り出し、警戒を強める。


本来、仲間に取るべき態度では無いが、坂東のその姿が俺たちをそうさせた。


俺たちが4人でパーティーを組んでいる様に他のみんなも4人で3つのパーティーを組んでいる。


そしてこの場に現れた坂東は返り血に濡れ、血が滴る漆黒の長剣を右手にぶら下げていたのだから。


「坂東…これはどう言うつもりだ?」


「これ?

それは俺がここに来た事か?それともこの血、この長剣の事か?

それとも、その全部かな?」


ニヤリと笑みを深め坂東はそこで言葉を一度切る。


「冗談じゃ無いか、そう睨むなよ。いいぜ、全部教えてやるよ。

まずこの血の事だが、お前らの想像どうりさ」


脳裏に浮かぶのは坂東とパーティを組んでいた3人、織原、二宮、桐ヶ谷の顔…


「お前、織原達を…」


唖然と呟く俺をよそに軽く肩を竦め、再び言葉を紡ぐ。


「殺しちゃいない、まぁ運がよけりゃ助かるんじゃねぇか?

あー、そんでだ俺がここに来た理由とこの長剣は一緒に説明できる」


坂東はそう言うと徐ろに左手を前に突き出し手のひらを上に向ける。


「まさか…」


奴の姿を見た時から予想は出来ていたがそう呟かずにはいられなかった。


ゴブリンロードと共に霧散した漆黒の霧が坂東の手の上に収縮し1つの球体を作り出す。


「俺がここに来た理由は()()だ」


その様子を満足げに眺めながら俺たちにそう言い放った。


そして、その球体が坂東の手のひらに沈み込む様に吸収される。


その見た目は変わらずとも、内容する魔力の量が先のゴブリンロードとは比べ物にならない程桁違い。


「なぁ中村、圧倒的な力を持っている存在は1人でいいと思わないか?」


「どう言う事だ?」


「これ程の力があればSSSランク冒険者も、魔王も、司波にも勝てるっ!

この力さえあれば世界を支配する事さえ可能……

わかるだろ、中村?お前は邪魔なんだよ、なぁ勇者様っ!」


咆哮と共に坂東が漆黒の長剣を一振りすると、眼前で雫の結界が砕け散る。


「チィッ!どうする亮太!?」


「くそっ!」


悪態をついてもどうにもならない、こうなってしまった以上、戦う以外に道は無い。


「雫、多重結界を展開、あかりは強化魔法を頼む!

駿、やるぞ」


「ああ」


「行くぞ、限界突破・聖剣解放っ!!」


再構築された多重結界の中で俺が眩い光に包まれる。


「ハハッ!面白れぇ、何処までやれるかな?」


坂東が剣を振り上げ、そこにこれまでの比じゃ無い量の魔力が収縮していく。


「まずいっ!!」


そして、莫大な漆黒の魔力を纏った感が振り下ろされる。


その一撃は一瞬で雫が展開していた多重結界を破壊する。


その直後、聖剣の力を全力で放出し次の瞬間、坂東の放った斬撃と俺の魔力がぶつかり合い爆風が巻き起こる。


今の一撃は何とか防いだが…


「くそ…」


聖剣の光が霧散し、身体から力が抜けていく。


倒れこみそうになるのを何とか踏ん張るが、片膝を地面についてしまう。


「おいおいどうした勇者様?拍子抜けだなおい。

はぁ、もういいわ、クラスメイトのよしみだ。せめて苦しまない様に一撃で殺してやるよ」


そう言いつつ、先の爆風によって地面に転がされた俺たちに向けて坂東は再び剣を構え、魔力が収縮されていく。


「じゃあな、勇者様っ!!」


そして、振り下ろされた剣に俺たちは成すすべなく呑み込まれ……


「物騒な事してますね。

それにしても、間に合って良かった」


土煙が晴れた時、俺たちを追い詰めていた坂東はダンジョンの壁に突き刺さり、そして俺たちをかばう様に学園長が無傷で佇むんでいた。


少しでも『面白かった』『続きが気になる』と思ってくれましたら、


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これからもよろしくお願いします!!


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「伝説の吸血鬼となった商人は怠惰スローライフをお望みです」


そこそこ読める作品だと思うので是非読んでみてください!!

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