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76話 異常事態

翌日、勇者一行を含むメビウス魔導総合学園の生徒達は騎士達の護衛の元、迷宮アビス第15階層まで到達していた。


「ギギャギャ!!」


「どうやら何も起こりそうにないな」


そんな断末魔の悲鳴をあげるゴブリンを切り捨てながら駿が俺にそう話しかけてくる。


確かに、迷宮アビスに乗り込む前に学園長直々に魔王3名に加え司波の連れていた少女3名が遠征に参加しない趣旨が伝えられた事が気掛かりだし。


俺と駿、雫とあかりの4人が先行部隊として迷宮に入る事になった事を省けば、今回遠征の目標である第30階層までの半分を終え、特段大きな問題が起こる事もなく、ここまで来れたと言える。


そんな先行部隊である俺たち4人は現在、迷宮第23階層に到達している。


精強な帝国騎士の護衛に加え、そもそも上層部ではスライムやゴブリン、スケルトンなどの弱い魔物しか出てこない。


実戦経験が乏しいとは言え、帝国が誇る魔導学園に在籍している時点でエリートであり、彼らはその中でも選りすぐりの精鋭。


数々の死線を潜り抜けてきた騎士達の指導の中、魔導学園の最精鋭と言える彼らがゴブリンなどの下級の魔物達に遅れをとることはまず無い。


まぁ、もし仮に学園生達が及ばない相手がいたとしても、それは先行している俺たちが倒している。


勿論、この世界に来てから実戦で実力を磨いてきた俺たちにとってこの程度であれば全く問題無い。


そんな事情もあってかなりの速度で15階層まで至ることに成功していた。


「そうだと良いんだけどな」


俺は断末魔をあげるゴブリンを無造作に切り捨てながらそう返す。


「ちょっと、二人ともちゃんと集中してよ!」


そんな会話を駿としていると後ろからそんな俺と駿を叱咤する声が飛んできた。


「わかったわかった」


雫の注意に駿がそんな空返事を返すと、雫は目尻を釣り上げ額に青筋を浮かべながら微笑を浮かべる。


「まぁまぁ、雫ちゃん落ち着こうよ。ね?」


そんな雫に隣に立っていたあかりがコテンと、雫の顔をしたから覗くように首を寝かせながら声をかける。


「そうそう、所詮はゴブリンだろ?」


そんなあかりの言葉にこれ幸いと駿が襲い掛かってくるゴブリンを豪快に蹴散らしながら言い募る。


「はぁ、坂本っちは何にもわかってないよっ!

確かに、ゴブリンは単体では大した事ない雑魚だよ。

けど、ゴブリンの恐ろしい所はその繁殖力!数の暴力だよっ!!

そして何より、アイツらは人間の女の子を襲うんだよ!?

ゴブリン滅すべしっ!!」


熱意を燃やす雫の様子に、俺たちは苦笑いを浮かべる。


確かに、雫の言っていることは正しい。


ゴブリンはただの村人でも退治できるような雑魚だがその繁殖力は侮れない。


過去に数万、数十万と言うゴブリンの大群によって滅んだ国があったらしいし、通常種ならまだしもキングやロードとなると単体でもかなりの強さを持つ。


そして今、俺たちはそんなゴブリンの大規模な群れに襲撃を受けていた。


「まぁ、ゴブリンを滅ぼすのは無理だけど、雫の言う通りゴブリンを甘く見たらダメだ」


すると、普通の人なら持ち上げる事もままならない大剣を持ってゴブリンを蹴散らしていた駿が凄まじい勢いで俺の方に振り向いた。


「はぁ!?亮太まで何言ってんだよ?」


「確かにゴブリン自体は弱いけど、その数は十分に脅威だろ?

それにキングやロードみたいな上位者は単体でも普通に強いしな」


「ふっふ〜ん、その通りだよ、まさしく中村っちの言う通りなのだよ、坂本くん」


「もう、雫ちゃんったらまたそんな言い方して…

でもゴブリンの大群によって滅んだ国があるほどですし、油断は禁物だと思います」


俺の意見を盾に、雫が偉ぶるようにニタリと笑みを浮かべ、そんな雫を窘めながらもあかりもその意見に賛同した。


「ちっ、わかったよ」


俺たち3人に味方されなかった事で、駿は不貞腐れながらも、次の瞬間には獰猛な鋭い視線を眼前に群がるゴブリンに向けた。


「さてと、蹴散らすとするかっ!」


怒号と共に手に持っていた圧倒的質量と存在感を誇る大剣を……手放した。


すると、今まで大きな存在感を誇っていた大剣が元から何もなかったかのように剣先から光の粒子となって消え失せる。


そもそも駿は武器を使った戦闘よりも素手での戦闘を得意とするのだから、今まで手を抜いていたことに他ならない。


とは言っても、クラス補正で武器を使った戦闘もかなりのレベルでこなせるはずだけど……まぁそれは置いておいてそれよりも…


「相変わらず、便利だよね坂本っちのスキルってさ!」


「確かに、坂本くんのそのスキルは反則だよね」


「俺もそう思うよ」


駿のクラスである戦王の固有スキル、武具創造。


仕組みを理解してさえいればどんな武具であっても創り出せると言う、まさしくチートスキル。


創り出される武具は駿の魔力を媒体に構築されており、今のように霧散させる事も可能、まぁ尤も霧散させた所で費やした魔力が戻るわけでは無いけど。


それに欠点がないわけでは無い、剣などの単純な物は簡単に作れても、銃などの構造が複雑なものは高校生であった駿が銃の構造を理解している訳もなく作り出すことが出来ない。


ちなみに言えば核兵器を作れたら勝てんじゃね?と以前、駿が言い出した事があったが、残念ながら爆弾などは武具とは認識されないらしい。


「ちょっ、お前らな…」


「はいはい、じゃ、展開してる結界を解くよ?」


「おうよ!」


雫の言葉に駿が頷く、その瞬間、俺たちとゴブリンを分け隔てていた結界が消え失せる。


俺たちがゴブリンの大群に囲われながらもこうして余裕を持って会話を繰り広げられたのも、周囲に雫が結界を張ってくれていたおかげだ。


しかも、外からの侵入と攻撃の一切を弾き、内からの攻撃は届くと言う反則のような結界…まぁだから駿は大剣を使っていたんだけどね。


「はぁっ!!」


そんな気合と共に魔力を纏わせた拳を駿が突き出すと、発生した衝撃波により射線上にいたゴブリンが吹き飛ばされる。


駿が拳を払えば直線上にいたゴブリンが吹き飛び、蹴りを放てば駿を中心とした十数メートル以内にいたゴブリンが弾け飛ぶ。


「ほんと、漫画見たいだよね」


「ああ」


「うん」


ゴブリンを相手にまさしく無双している駿の姿を見て俺たちがそんな会話を交わしたのは無理のない事だろう。


「グギャオオゥゥッ!!!」


凄まじまでの怒声が響き渡り、騒いでいたゴブリン達が静まり返り、駿も動きを止める。


「やっぱり、そんなに甘くは無いか……」


俺たちの視線の先には、ゴブリン達が明け渡した道の奥から2体の巨体が姿を現す。


「うっそ、あれってゴブリンキングじゃ無いの?」


「2体も!?」


現れたのはゴブリン達を統べる王、Aランク指定されているゴブリンキングが2体。


「おいおい、ゴブリンキングが2体って、どうなったんだ?」


俺たちの所に戻ってきた駿が開口一番尤もな疑問を口にする。


ゴブリンキングがこんな上層にいることは異常と言える。


「わからないけど、俺たちが先行しておいて正解だったな」


「そうだね」


「うん」


「だな」


Aランク指定モンスターであるゴブリンキングは学園生が太刀打ちできる存在では無い。


もし学園生達が遭遇していたらまず間違いなくそのパーティーは全滅していただろう、それは1ヶ月前までの俺たちでも変わらない。


だが、今は違う、今の俺たちなら油断しなければ勝つことが出来る相手だ。


「全力で行くぞ」


俺の言葉に、3人が真剣な眼差しで頷く。


「ふん、貴様らか?

我が下僕共を殺してくれたのは」


そして、そんな俺たちに向けそんな声が投げかけられた。


先程現れたゴブリンキング達が跪き、その後ろからゴブリンキングをも超える存在感を放つ存在が姿を現しす。


かつて国を滅ぼしたゴブリンの軍勢を率いた存在、Sランク指定モンスターであり、最弱の一種であるゴブリンでありながら準魔王級にまで上り詰めた存在。


王の中の王、王をも従えるゴブリンの頂点に位置する存在…


「ゴブリンロード……」


唖然としたそんな俺の呟きを知ってか知らずか、ゴブリンロードはニタリと獰猛な笑みを浮かべた。



少しでも『面白かった』『続きが気になる』と思ってくれましたら、


 ブックマーク登録及び、下記の評価ボタンを押して頂けますと嬉しいです。


これからもよろしくお願いします!!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

こっちは明日更新します!!


「伝説の吸血鬼となった商人は怠惰スローライフをお望みです」


そこそこ読める作品だと思うので是非読んでみてください!!

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