75話 勇者の憂事
今回少し短めです
俺たちが、メビウス帝国の魔導総合学園に編入して明日で2週間になろうとしている。
勇者である俺たちの編入に初めこそはそれなりの話題を生んだのだが、今ではその関心は他の人達に向いている。
司波とアイツと一緒にいた3名の少女達、そして魔王二人と態度の大きい少女、とは言っても魔王達と対等に話す彼女も多分魔王だろうと思っているけど。
兎に角、この7名が現在の学園内にて人々の関心の中心となっている。
いや、学園に通う生徒だけじゃ無い、世界最高峰のこの学園はもともと世界中から注目を集めている場所だ。
そこに俺たち勇者一行が編入するとなって、その注目度はかなり高まっていたはず、となるとあの7人は世界中の注目の的になっている訳だ。
まぁ、初日にあった実技授業で勇者である俺達すら歯牙にも掛けない圧倒的な実力を示したのだから仕方ないと言えばそれまでなのだが……
もし、仮に彼らが編入して来なければその関心を向けられていたのが俺たちだと思うとなんとも言えないな。
魔王にこんな事を思うのは勇者としてダメだろうけど、あの7人には感謝しなければならないかな。
そんな7人の中で最も注目を集めているのが司波だ、なんと言ったってアイツは今いる世界で四人めのSSSランク冒険者だ。
これだけでも十分すぎる話題なのに三大国が一角の高位貴族にして若く独身と来た、アイツが今どれ程の注目を世界中から集めているのかは言うまでも無い。
各国の貴族達の中にはは自身の娘を婚約者にしようと躍起になっている者も少なく無いだろう。
それに、アイツは古竜2体を相手に圧倒したと言う眉唾の様な噂がある、婚約者どうこうを抜きにしてもどこの国もアイツを無視できない。
何せ、古竜と言えば単体で魔王に匹敵するとまで言われる存在、もし仮に噂が事実なのだとすればアイツの実力はSSSランク冒険者のそれを凌駕している事になるからな。
尤も、7人のうちの3名が魔王だと知れ渡ればそれは覆る事になるかもしれない…と言うより大パニックに陥るだろうけど。
今のところ、特に怪しい動きを見せようともしないし、何も問題には至ってはいないのだが。
問題なのは、俺としては彼らのおかげで大々的に注目されなくて良かったと思っているのだが、そうは思わない奴もいると言う事だ。
それに、明日は帝国が誇る迷宮アビスに遠征する事になっているし、何事も無ければいいが…
「中村っち、そんな辛気臭い顔してどうしたのさ?」
明日の準備のためにパーティーで集まっていたのだが、どうやら表情に出てしまっていた様で雫が楽しそうに聞いてくる。
「明日は、あの迷宮アビスに遠征の予定だから少し心配していたんだよ」
「う〜ん、確かにアビスの難易度はかなり高いと思うけど、騎士団の人達も来るみたいだし、そこまで心配する事ないんじゃ無い?」
「そうだぜ、亮太。
アビスに行くって言っても上層に行くだけで深層や中層に行くってわけじゃ無いしな」
雫と駿はそう笑って言う。
確かに上層部と呼ばれている30階層までであればこの学園の学生達でも足を踏み入れる事は可能だろう。
それでも危険がないわけでは無いが、30階層以降の中層に比べればそこら辺の草原と変わらない。
屈強な帝国騎士が追従するとなると余程のことがない限り何も起こらないだろうけど…
「俺も二人みたいに前向きに考えれたらなぁ」
「ふっふっふ、そうでしょうそうでしょう!
中村っちも勇者なんだから私を見習ってもっと前向きに行こう!」
「ははは、あの人達の強さを見せられたらね…」
胸を張ってそう言う雫に苦笑いを浮かべながらそう返すと、雫も苦笑いを浮かべる。
思い出される初日の実技授業、彼らの放つ魔法は常識の規模をはるかに凌駕し、そのスピードは全く目で追えず、パンチ1つで地面を砕く。
どこぞのゼットな戦士達を見ているかの様な光景に俺たちが苦笑いを浮かべたのは仕方のない事だろう。
「まぁ、あれ程の光景を見せられたらもう唖然ともならずに自然と乾いた笑いが漏れたしね」
雫がそう言うと、あかりと駿もあの時の光景を思い出したのか微妙な雰囲気になってしまった。
「大丈夫だよきっと、ミラちゃん達もいるし、皮肉だけど魔王もいるしね」
「確かに、魔王は当たり前としてミラちゃん達3人も帝国騎士よりも強そうだもんね」
微妙な空気を打ち消す様に微笑みを浮かべながらそう言ったあかりに雫がそう返す。
「そうだな、認めたくは無いが、あの6人がいれば安心できちまうしな」
「そうそう、何も起きないって!」
「まぁ、あの人達のことは置いておいて。
何事もなく終わればいいんだけどな」
少しでも『面白かった』『続きが気になる』と思ってくれましたら、
ブックマーク登録及び、下記の評価ボタンを押して頂けますと嬉しいです。
これからもよろしくお願いします!!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
こっちは明日更新します!!
「伝説の吸血鬼となった商人は怠惰スローライフをお望みです」
そこそこ読める作品だと思うので是非読んでみてください!!