74話 魔の神々
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黒く、暗く、そして何より深い、魔王達の集っていた場所よりもなお深淵に近い場所。
上、下、前、後、全てが漆黒に覆われ、地面があるのにそこに地面があるのかもわからない。
「クソッ!!何なのだ、あの者共はっ!?」
そんな空間に、漆黒が形どったの円卓を囲み、椅子に腰掛ける者の一人が苛立ちを隠そうともせずに円卓を叩きつける。
幾人かはそれを煩わしそうに、また幾人かは興味さえ示さずにいる中、その存在の隣で面白そうに笑う幼い声が響き渡った。
「何をそんなに怒ってるんだい!タージスクタ君??」
「貴様っ!」
心底楽しそうに、笑みを浮かべた少年に向けてタージスクタと呼ばれた存在は怒声を荒げながら腕を振り下ろす。
その威力に耐えられず、漆黒の形取っていた椅子は霧散し、あるのか無いのかわからない地面に亀裂が走る。
「あっ、そっかぁ〜!
魔王と人間に人形を壊された事を怒ってるんだね!」
しかし、直前まで椅子に腰掛けていたはずの少年は、ワザとらしく、挑発するようにそう言いながらタージスクタの背後から顔を出した。
「フッフフフ、魔王はまだしも人間ごときにしてやられるなんて、魔神の名が泣くねっ!!」
「あの人間はただの人間とは違う!!」
「あはっはっはぁ!人間如きにみっともないよねぇ」
嘲笑を含んだ笑みを浮かべる少年に対し、苦虫を噛み潰したような表情のタージスクタの言葉に、バカにするように少年は笑う。
屈辱にタージスクタは顔を歪め、少年はさらに笑みを深める。
「そのぐらいにしておきなさい、ハミミール」
その時、漆黒の空間に清廉な女性の美しい声が響き渡った。
それと同時に、空席であった円卓の最奥に鎮座された最も豪華な椅子の背後に禍々しくも品のある門が浮かび上がり、そこから一人の女性が現れる。
椅子に座っていた者達が一斉に立ち上がり、それぞれ礼を取る。
この漆黒の空間に似つかわしく無い白き輝きを放つローブを纏いフードの隙間からは美しい金の髪が覗いている。
この魔の神々の集う場に突如として現れた神聖な気配を放つ女性は礼を取っている魔の神々を満足げに一瞥しカツン、と音を立てて地面に降り立つ。
その瞬間、女性が放っていた神聖な白き輝きは黒く漆黒に染め上げられる。
「お姉様っ!」
タージスクタを罵っていた少年、ハーミミルはもう興味が失せたとばかりにタージスクタから視線を外し、現れた女性に向けて満面の笑みを浮かべた。
「フフフ、私は貴方の姉では無いわよ、ハーミミル。
それに、同じ魔の神どうし仲良くしないとダメよ。
では皆さん、席について下さい…始めるとしましょうか」
女性がそう言いながら自らの席に、最奥の席に腰を下ろすと、立ち上がり礼を取っていた者達も腰を下ろす。
「さて、今回皆さんに集まって貰った理由ですが、もう皆さん知っていると思いますが、先日のタージスクタの件です」
その女性の言葉にタージスクタの顔が苦渋に染まる。
「本当に、なっさけないよねぇ!」
ハーミミルの笑い声に、今まで黙って聞いていた者達も同調を示す。
「だよねぇ!もうこうなったらさ、こんな雑魚要らないんじゃない?」
「ふむ、確かにハーミミルの言う事にも一理あるな」
「そうよね、人間に負けるだなんて、ねぇ?」
ハーミミルの言葉に同意を示す声が上がり、笑みを深めるハーミミルに対しタージスクタは焦りを宿す。
もしこのハーミミルの意見が認められれば彼を待っている未来は死。
タージスクタの実力はハーミミルの少し上程度でこの中では良くて中の上程度、逃げる事も出来ずに殺される事は容易に想像できる。
「役に立たない者は必要ありません」
ただ微笑を浮かべて場の様子を見守っていた女性が冷徹に言い放つ。
「お、お待ち下さいっ!
どうか、どうかもう一度この私めに…」
必死に取り繕うタージスクタの声を遮り女性が楽しそうに笑みを浮かべる。
「フフフフ、冗談よタージスクタ。
今回集まってもらったのは、皆さんにも伝えてと思ってもらったのよ。
タージスクタの邪魔をした人間は高位の、シングルの加護を持っているわ」
「なっ!?」
その言葉に、魔の神々は驚愕を浮かべる。
それほどの神の加護を受けていたのであれば人間であったとしても神の力を借り魔神の人形を退ける事も不可能では無い。
ハーミミルも驚いた様子の表情を見せた後、つまんなそうにタージスクタを一瞥した。
「お姉様、それは本当なのですか?」
「ええ、私自ら確認したわ」
「それならば、タージスクタが人形を壊されても仕方ない」
「シングルの神ともなれば、我らでも危ういからな」
女性の言葉に魔の神々はそう意見を返す。
「ふん、幾ら高位の神の加護を持ってるとは言っても所詮は人間でしょ?
僕ならそんな奴、一瞬で殺せるよ?」
「ふむ、ハーミミルよ、確かに人間だけであればそうであろう。
しかし、その時の人間はタージスクタの人形を破壊するほどの魔力を加護を通して放っていたのだ。
脅威にはならんが、警戒はすべきであろう」
「貴殿の言う通りだ。
我らの脅威となる前に潰しておいた方がいい」
「ならば、私にお任せ頂きたい。
以前は人間と侮り遅れを取りましたが、次はありません」
女性は微笑を浮かべながら魔の神々、魔神達を一度見回すと、フードの奥から覗く金の瞳を怪しく輝かせる。
「わかりました。
では、あの人間の事はタージスクタ、貴方に一任します。
我々の脅威となる前に確実に始末して下さい」
「承知致しました。
私に恥をかかせてくれたあの人間は、この私自らの手で必ず殺してみせましょう」
幾ら高位の神の加護を持っていると言っても所詮は人間、悪神の上に立つ魔神である彼等にとって加護持ちの人間を殺す事は児戯に等しい。
人形を使うのではなく、タージスクタ自身が動くのであればその人間は死んだも同然。
「ふむ、では人間の事はタージスクタに任せるとして、そろそろ魔王供が鬱陶しいですね」
魔神の1柱がそう言ったときには彼等の中にその人間の事は既になかった。
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こっちは明日更新します!!
「伝説の吸血鬼となった商人は怠惰スローライフをお望みです」
そこそこ読める作品だと思うので是非読んでみてください!!