69話 再会
連続投稿!!
3日目になります!
「し、司波君…よかった」
大粒の涙を浮かべながら、よろよろとこちらに歩を進めるあかり。
「えっ?
ユーピルウス殿、勇者殿達とが知り合いなのですか?」
俺を見た元クラスメイト達の反応を見ていたメーシスさんが少し驚いたようにそう聞いてくるが、さてどう答えたものか。
まぁどの道、俺と勇者達との関連性を認めるわけにはいかない……あれ?
確固とした立場を手に入れた今、俺が召喚者だと隠す必要はあるのだろうか?
う〜ん、まぁ別に関連性を認めたとしても俺に得はないしな、よし、バレたらそれはそれで仕方ないが、こちらからそれを言うことも無い、このスタンスで行くとしよう。
「いえ、彼らとはここで初めてお会いしましたよ。
お嬢さん、何か勘違いをされているのでは?」
「えっ?」
その言葉にあかりが唖然となるが、悪いが今俺の正体を明かす気は無いので仕方がない。
「メーシスさん、こちらのお嬢さん方が?」
「ええ、こちらの方々が勇者殿達になります」
「えっ?う、嘘だよね、司波君なんでしょ?」
「残念ながらお嬢さん、先ほども言いましたように、俺の名はソータ・ユーピルウスですよ」
うん、嘘をついて騙してるようで、と言うよりもまんまその通りなのだが、少し罪悪感があるな。
「で、でもっ!」
「取り敢えず落ち着こうよ、あかり!」
それでもなお言い募ろうとした、あかりを止めたのは彼女の親友でもある守護者・広瀬 雫なのだが、彼女の俺を見る目は明らかに怪しんでいるな。
「ははっ、おいおい何でここに無能がいるんだよ?」
そして訪れた僅かな静寂を打ち破る声が上がる、その声の方に視線を向けると、そこにいたのは何時ぞやのクラスメイトA君じゃないか。
いや〜、顔を見たら名前ぐらい思い出すかなって思っていたが、もともと名前も知らないんじゃ仕方がないよな。
それにしても、無能か……懐かしいな、とは言っても所詮は1ヶ月と少し前程度の事なんだけどさ。
てか、再会するの早すぎじゃないか?
それに俺たった1ヶ月で濃い時間を過ごしすぎじゃないのかな?
しかしまぁバカだよなコイツ、俺は全く気にしてないがここにはそうじゃない人が約2名存在する。
「なっ、何て事を!?
どうか彼の事をお許し下さいユーピルウス殿」
クラスメイトAの言葉を聞いてメーシスさんが焦ったように言ってくる、全く俺ってそんなに信用されてないのだろうか?
「いえいえ、私は気にしておりませんよ」
ほら、こうしてちゃんとして外聞を気にしないとダメな相手と話すときはしっかりと一人称を私にしているし、結構礼儀正しいはずなんだけどな。
「くっくっく、ソータを無能と呼ぶとは、これではどちらが無能かわからぬな」
その様子を見ていたヘルが楽しそうに笑い声をあげた事でヘルに元クラスメイト達とリティエジーナの視線が集中する。
そして、見て取れる反応は3つ。
リティエジーナさんはヘルの実力が読めなかったのか軽く驚愕の表情。
そして元クラスメイトの女子達はヘルを見て可愛いっと言ってまるで猫などの小動物を見るような表情。
最後に元クラスメイトの男子諸君のヘルを見る目は確実に鼻の下を伸ばしているのが見て取れる。
さっきの元クラスメイトA
《個体名、坂東 彰です》
もとい、坂東君なんてヘルやその隣にいたミラやリーナまでも舐め回すような視線を向けている……まさか俺の元クラスメイトにロリコンがいたとは。
「へぇ、ヘルティアって言ったかな?
そんな役立たずの無能と一緒にいないで俺と一緒に来ないか?」
そして坂東君は何故か自信に満ちた表情を浮かべながらそう言い放った。
その言葉に顔面蒼白になるメーシスさん、彼も可哀想にこんなバカの面倒を見る立場となるとそれはもうストレスが溜まるんだろうな。
今度、エラムセス王に売りつける予定の育毛剤を差し入れしてあげよう。
「それにしてもソータよ、妾は非常に嫌な予感がするのじゃが」
はいスルー、ヘルティアさんそれは流石にちょっと佐藤君が可哀想だわ、完全なる無視だよこれ。
はい、ミラさん笑わない…まぁかく言う俺自身も軽く笑ってしまったので無理もないけど、さ。
ほら、無視された当人である坂東君なんて俯いてプルプル震えてしまってるし。
けどまぁ、ハッキリ言ってコイツのことはどうでもいい、それよりも今はヘルの言ったことの方が重要だ。
「ああ、俺も同感だ。
リティエジーナさん、先ほど言いかけていた3名とはどう言うことでしょうか?」
それに3名と言うのが気がかりだ、もしだ、もし俺の想像通りのことが起こっているとすればその人数にも納得が行くのだが……
いや、それでも一体如何やったのかは不明だが、取り敢えずもし、万が一にも俺の想像通りなのだとすれば……あの時の事も合点が行く。
「あら?陛下からお聞きになっておりませんか?」
あ、ヤバイ、嫌な予感がする、これを聞いてしまってはいけないと俺の本能が警鐘を打ち鳴らしている。
だが、ここで聞かないわけにはいかないのだ、どの道その3名はもうすぐこの場に来るだろう、その時の為に覚悟を決めていた方が俺が受けることになるであろうダメージは低くてすむはずなのだから。
「実は、ユーピルウス殿が皇城を訪れる前日にある国から編入させたいものが3名いると連絡が入ったのです」
「その国というのは?」
俺は渾身の覚悟を決めてそう返した。
「十魔王が一柱、獣王バロニスが治る、獣王国アヴァロンです」
「……ははは、やっぱりそうですよね」
そう答える俺の目はこの前のエラムセス王への説明時よりも、より一層死んだ魚のような生気の抜けた目をしていら事だろう。
「あ、あのどうか、いたしましたか?」
「いえ、ただこれからの学園生活に軽く絶望しただけですよ」
だって、その3名が誰だかわかってしまったのだから。
「ご、ご主人様があそこまで憔悴した顔をするなんて、ろくな事にならない気がするわ」
「わ、私も心配です」
「妾は、これから良くない事が起こる予感がするのじゃ」
ふっふっふ、お子様3人衆の言っている事は実に正しい、今はその様子を訝しそうに見ているメーシスさんにリティエジーナさんそれと勇者達もじきに理解できるだろう。
「って、おい!
この俺を無視するんじゃねぇよっ!」
ショックから復活を遂げた坂東君が何やら叫んでいるが、悪いけど今は君にかまっている余裕は無いんだよね。
「それで、リティエジーナ殿。
その3名はいつ頃こちらへ?」
「そうですね、そろそろ着くはずなのですが」
「おいお前、何調子乗っちゃってんの?
お前ごときがこの俺を無視していいと本気で思ってんのかぁ?」
「それにしても、まさか魔導学園の学園長さんが女性の方だとは思わなかったですよ」
「あら、こう見えても私、強いのですよ」
そう、リティエジーナは楽しそうに笑う、うん何というか、お子様三人衆にはない大人の魅力があるな。
「ユーピルウス殿、こちらのリティエジーナ殿は我がメビウス帝国が誇る3名のSSSランク冒険者のお一人でして、陛下から名誉伯爵の爵位を授けられております」
「それは驚きました、まさかここで私と同じSSSランク冒険者に出会えるとは」
「ふふふ、けれど私ではユーピルウス殿には敵いそうにありませんわ」
「おい、お前いい加減にしろよ」
そう言って坂東君が俺に向かって歩いてくる、さてどうするべきか。
面倒だから無視していたが、流石に害をなすというのであればそれ相応の報いを受けて貰うことになるのだが…
う〜ん、でもコイツって一応、各国評議会で保護されてるんだよな、さてどうしたものか。
「おいおい、どうした。
怖くて言い返せもしねぇのかぁ?」
あっ……どうやらコイツのことにかまってる時間が本当に無くなったようだ。
視界の端でヘルもピクッと反応したという事は気づいたのだろう。
メーシスさんと勇者一行は論外、ミラとリーナに加えリティエジーナさんも気づいてないか。
「ヘル感じたか?」
「う、うむ。
しかし…こ、これはマズイのではないか?
この感じ、妾でも太刀打ちできぬぞ」
「それは大丈夫だ、アイツらも俺の知り合いだからな」
「調子に乗るなって言ってんだよ!」
「来たぞ」
叫ぶ坂東君を無視してそう呟いた俺の言葉にヘルがゴクリと息を飲む。
そして応接室の扉がノックもなしに開かれる、そこにいたいきなり開かれた扉に騒いでいる坂東君に集中していた視線が一斉に集中する。
そして、そこから応接室に入ってくる人物を目にし勇者たちがその顔に驚愕を浮かべる。
「くっくっく、5日ぶりだなソータよ」
扉から入ってきた銀髪の少女は悪戯が成功した子供のように楽しそうに笑みを浮かべた。
「久しぶりだね、ワー…いや、ソータ」
「お久しぶりです、ソータ様」
その少女続いて応接室に入って来たのは、金髪の少年と、黒髪の青年。
「はぁ、やっぱりこうなったか。
久しぶりだな」
驚愕に目を開く勇者達をよそに、吸血姫ネルヴィア、妖精王ヴァイスロギア、龍王アヴァロス……ここに、この世界の頂点に立つ三柱の王が顔を揃えた。
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「伝説の吸血鬼となった商人は怠惰スローライフをお望みです」
そこそこ読める作品だと思うので是非読んでみてください!!