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62話 頂点に立つ者

「して、今日は何の用できたのだ?」


あの後、俺たちの前に現れたネルヴィアに、このメイドがね……


と言ったら、ネルヴィアがメイドさんを鋭い目で睨みメイドさんが慌てて弁明しようとするも直ぐに案内しなかった事は事実なのでおどおどする。


というちょっとした意地悪をした後、冗談だと笑ってネルヴィアに言ったらメイドさんに鋭く睨まれたと言う事があったのだが。


ネルヴィアはそんな事は気にもならなかったようで、まぁ良い早く来い、と言ってたここに連れてこられた訳なのだが。


開口一番でネルヴィアが核心をつくそんな疑問をぶつけて来た。


因みに現在進行形で俺たちが向かい合って座っているソファーの隣では以前壁に激突して悶えていた執事がケーキなどのお菓子類が大量に乗ったカートでお茶を入れてくれている所だ。


今ネルヴィアの質問に答えたらあの、お茶とお菓子を楽しめ無い事になる可能性が高いのが非常に残念なのだが……


仕方がない、もうここまで来たら覚悟を決めるしかないだろう、おっしっ!頑張れ俺、お前なら出来る!!


「いやー、あの、実はね…そのぉ」


「何をしておる?早う要件を言わぬか」


くっそぉー、覚えてろよエラムセス王っ!!


「実は、魔導学園に行かなければならなくなったので、暫くは会えそうにありません」


言い切った!かなり早口で捲したてる様になってしまったが、俺はやり切ったぞ!!


ふぅ、さて当のネルヴィアは……


「ソータよ、お主今何と言った?」


視線を伏せ俯きながら、静かにそう言ってくる……あっれぇ?これって、まさか怒ってないパターンか?


「だから、魔導学園に」


「そこはどうでも良い、その後じゃ」


はい、来ましたー、ネルヴィアさん素のじゃ語尾になってますね。


うんうん、やっぱり怒らないはずないよな、執事なんて……


「皆の者、各員全力で防御態勢を展開せよ!

これは訓練ではない、繰り返すこれは訓練ではないっ!」


既に部屋の外に出て警戒を呼びかけてるしさ。


と言うか、あの冷静沈着そうな執事があんなに大声で叫ぶんだな。


「早う答えぬかっ!」


これから始まるであろう事に現実逃避気味にその光景を見ていた俺をバッと顔をあげたネルヴィアの声に現実に引き戻された。


そのネルヴィアの目尻には大粒の涙が浮かんでいる、そして、わなわなとネルヴィアから魔力が漏れ出している…


「暫く会えそうにない」


瞬間、俺の体が宙に浮いた。


そして遅れて炸裂する爆発音、まぁ、あれだ某戦闘民族が敵と戦う時の音を想像してもらいたい。


そして、その音の正体はネルヴィアが放った右ストレート。


着弾の瞬間、左手で受けながらも後ろに自ら飛び力を受け流すが、それでも威力を殺しきれずに部屋の窓を突き破る。


「よっと」


飛行魔法を発動し、完全に勢いを殺して空中で止まる。


ふぅ、俺が飛行魔法を使えなかったらこの高さから落ちて死んでたぞ、全く。


因みに今の余波で、部屋の中はめちゃくちゃになっている、アレを片付けるのは面倒臭そうだな、俺の屋敷じゃなくてよかった。


そんなことを考えていると、次いで左回し蹴りが飛んで来た、その蹴りが展開した防御魔法に衝突し、停止する。


が、俺の防御魔法にヒビが入る、そのままネルヴィアは体を回転させ回し蹴りを放ってくる。


先程と同様、防御魔法に阻まれるもそのまま脚を振り抜いたネルヴィアに吹き飛ばされる。


「チィッ」


くっそ、攻勢に出たいが、この城を潰したらそれはそれで面倒な事になるし……


飛ばされた俺の背後に、回り込んだネルヴィアの踵が振り上げられる、流石アレを喰らえばもうこの防御魔法はもたないな。


防御魔法を解き、自らの両手に魔力を集中、振り下ろされる踵を受け止めるが、今度は地面に向かって落下、空中で一回転し体制を整え着地。


どうやら、さっきのネルヴィアの回し蹴りで城の敷地外に出たらしく、今俺が着地した場所は草原だった様だ。


まぁ、その草原も俺が着地した衝撃で、地面が陥没してクレーターが出来てしまっているが…


上を見上げれば迫ってくるのは多様に見間違いそうに巨大な火球。


さて、どうするか水で相殺、


《大規模な水蒸気爆発が起こると予測されます》


それ却下だな、この状況で視界が遮られるのは避けたい、となれば…


「凍りつけ」


迫っていた火球が一瞬にて凍り巨大な氷塊と化す。


「リフレクト」


展開された魔法式に触れた氷塊が速度を落とさずに跳ね返るが、次の瞬間には氷塊は粉々になり、辺り一面にダイヤモンドダストとなって降り注ぐ。


感嘆の声が出そうな光景だ、ネルヴィアから迸る魔力が重圧となってのしかかってなければだが、これ、普通の人だったら死ぬ程の魔力だな。


「ソータのバカめっ!」


同じく地面に着地したネルヴィアが涙を浮かべならがそう言って地を蹴り殴りかかってくる。


うん、駄々をこねる少女が泣きベソをかきながら叩いてくる、非常に微笑ましい光景と言えるだろう、その一撃一撃に古竜を消し飛ばす威力が無ければ……


繰り出された拳を腕を斜め下から払い除ける、その勢いを利用して蹴りを放ってくるがそれを跳んでかわし、ついでに蹴りを放つ。


俺が放った蹴りがネルヴィアが展開した防壁に阻まれるが、ネルヴィアは後ろに飛び威力を殺して着地する、ダメージは与えてないが距離を取る事には成功した。


が、ネルヴィアが着地した瞬間には彼女の背後に赤い剣が多数展開される。


「無数の紅き劔によって貫かれるがいいっ!」


そのネルヴィアの言葉で展開されていた劔が一斉に飛んで来る。


《剣の個数は5000本程度だと推定されます》


これは、流石に捌ききれないな……だが


黒穴(ブラックホール)


こう言った状況を打破するために編み出した俺のオリジナル魔法で、重力魔法と時空間魔法を併用しその名の通り模擬的なブラックホールを地上に作り出す。


顕現したブラックホールが作り出す重力によってネルヴィアが放った剣が吸い寄せられ飲み込まれる。


因みにこの黒穴に飲み込まれた物は全て例外なく俺が作り出した異空間に飛ばされる。


それが物質であれば収納魔法に自動でなおされ、魔法などであれば自動的に魔力に分解されて俺に還元される。


これぞ、チート!


ちなみにこの魔法の効果を知っている存在はそれ程いない、しかしネルヴィアは知っている数少ない1人だ。


舌打ちをした後に展開していた紅い剣を消し去った。


「そんな魔法ずるいのじゃっ!」


と、駄々をこね始めるネルヴィア。


まぁ、確かにネルヴィアが言う通りズルイかもしれないが、実はこの黒穴、意外と使える場面が制限されてるんだなこれが。


まず、自分に向けられた攻撃出ないと使えない、つまりは結界や防壁を展開して閉じ籠もられて黒穴で結界を吸収とはいかない。


次に一定以上の質量の物は吸い込まない、例えばさっきネルヴィアが放ってきた火球なんかは質量が大きすぎて吸い込めないし、重力魔法など質量がない物も吸い込まない。


そして、何よりこの黒穴はそれなりに魔力を使う、まぁそれはそうだ、だって時空間・重力と両方とも難易度が高い魔法を掛け合わせて使っているわけだし。


それに吸い込む魔法自体が弱かったり数が少なかったりすると逆に魔力を消費するから、そこまでズルくもないと思うが、この場合では強い魔法だ。


「もう怒ったぞ!

お主がその魔法を使うのなら吾も本気で行くのじゃっ」


ネルヴィアから迸る魔力の質と量が跳ね上がる。


ネルヴィアが掌を上に向けるとそこに展開されるのは、先程と同じく紅い剣なのだが、さっきの紅い剣とは比べ物にならない程の質量を誇る。


しかも、その数は…


《個数200程と推定されます》


「全くバカげた魔力量だなおいっ」


ネルヴィアが展開した剣一本の大きさが直径50メートル級だ、これ程の大質量になると黒穴では防ぎきれない。


「だが、この程度の数なら避け切れる」


向かってきた巨大な剣を跳躍で躱す、すると……


地面に着弾した剣が凄まじい爆発を起こし、まるで隕石でも落ちたかのようなクレーターが形成される。


「マジかよ…」


しかもだ、ネルヴィアが使う紅き劔と名のつく魔法は全て血を元に形成された魔法で、それはこの巨大な剣も例外ではない。


爆散して飛び飛び散ったネルヴィアの魔力を大量に含んだ血液がネルヴィアの元に帰って行く、そして、その魔力が再びネルヴィアに戻る。


「ズルいのはどっちだよ全く……五聖天」


手をかざした前方に出現するのは各属性魔法最上位の炎天・蒼天・風天・地天・雷天を同じ割合で混合した魔法、直径5メートル程度の球体を10個展開する。


「行け」


俺の言葉に呼応し、飛んでくる剣を迎え撃つ。


五聖天が当たった剣がその場所から消滅する、この五聖天はホーリーすらも消し去るのだが、剣を迎え撃つに連れて徐々にこちらが削られていく。


ちょうど全ての剣を消し去ったと同時に俺の五聖天も限界を迎えたようでボロボロと崩れ去る。


そこに飛んでくるネルヴィアの踵落とし、半身になってそれを躱し回し蹴りを放つも腕で受け止められる。


さらにネルヴィアはその脚を持って投げ飛ばそうとしてくるが逆にそれを利用して反対の脚で蹴りを叩き込むが、その時にはネルヴィアは射程圏がに移動していた。


そしてまた向かってくるネルヴィア……



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



そのまさに世界の頂点に立つ両者の戦いを城から見ているもの達がいた。


勿論、それは吸血鬼達なのだが、本来であれば隔絶した力を持つ高位吸血鬼達がその光景をただ唖然と眺めていた。


「あ、あの人間は一体…」


そして、ソータに初めに声をかけたメイド吸血鬼もまた、ソータとネルヴィアがいた部屋からその光景を見ていた。


「ああ、貴女は知らないのですね」


「ムング様」


そこにいたのは先程2人にお茶を用意していた執事で、ムングとはネルヴィアに付いている執事の名前でありそれは400年前も変わらない。


「その昔、あのお方はネルヴィア様や妖精王、龍王と共に世界各地を飛び回っておりました」


「っ!?で、では…」


「貴女が驚くのもわかりますが、今はあのお二人の戦闘を見て起きなさい。

そこから得られるものは計り知れないでしょうからね」


「は、はいっ」


驚愕の表情を浮かべたメイドの視線の先では、激しい戦闘が展開されていた。


少しでも『面白かった』『続きが気になる』と思ってくれましたら、


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これからもよろしくお願いします!!


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明日、月曜日更新予定


「伝説の吸血鬼となった商人は怠惰スローライフをお望みです」


そこそこ読める作品だと思うので是非読んでみてください!!

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