SS 04話 勇者達3
やって参りました久しぶりの勇者回です!
皇帝陛下との謁見の後、皇居の外に既に待機させられていた黄金やら宝石の装飾が施された、絶対に注目を浴びるであろう馬車に大臣さんとともに乗り込んだ。
ちなみに馬車の数は全部で5個あってアストラル王国に残ったクラスメイト達がここに居たとしても余裕で乗ることができるほどのサイズだ。
まぁ、実際にはこの場にはクラスの約半数しか居ないなで全員がゆったりと馬車に乗ることが出来る。
馬車に乗り込んでからは一言も喋らない大臣とかなり気まずい空気の中、数十分馬車に揺られると言う拷問のような時間を過ごし、そろそろしんどくなってきた頃、馬車の揺れが止まった。
「皆様、こちらで御座います」
馬車に乗って以降、大臣が初めて発した言葉に従い、目の前に見えるまさに豪華絢爛を体現したかのようなホテルに入る。
見た目通りの規模を誇るホテルは地球で見ても上位に入るほどのものだと思う、エントランスでホテルの従業員に引き継ぎをし大臣さんは一礼したのち帰って行った。
そして、案内された部屋だがこれがまた凄かった。
アストラル王国の王城に住んでいた時と同じ規模の部屋を個人に用意されていた。
流石は、三大国1の国力を誇るメビウス帝国と言ったところかな?
一概に三大国と言えど、その国力にはしっかりとした差が存在する、トップに帝国が入り、次いでアストラル王国、そしてエラムセス王国と続く。
帝国はその軍事力と迷宮アビスを持っており、アストラル王国も商業の中心地と言える国でどちらの国も力のメビウス帝国、金のアストラル王国と言われる特色を持っている。
そんな中、エラムセス王国は和のエラムセス王国と呼ばれ、平和を特色とする国だ、穏やかな場所らしいが他の2国と比べて国力で劣るのは言うまでもないだろう。
まぁ、これでエラムセス王国がSSSランク冒険者を持っていたら話は変わってくるだろうけど、残念ながら今のところエラムセス王国にSSSランク冒険者はいない。
「はぁ」
「あっれぇ?中村っち、ため息なんてついてどうしたの?」
俺のため息にからかうように笑みを浮かべて雫がそう言ってきた。
「いいよな、お前らは気楽でさ」
「亮太、ここは異世界だぜ?楽しまないと勿体ないだろ?」
乾いた笑みを浮かべてそう言う俺に元気出せよとそう励ましてきたのは駿だ、全くこの2人は……
「まぁまぁ2人とも、亮太君は私達の代わりに皇帝陛下と話し合ってくれたんだから」
そしてそう俺を擁護してくれるのが俺たちのパーティーの最後の1人である、あかりだ。
俺たち4人は現在、ホテルの俺の部屋で集まって一応、今後についてと言う議題で話し合いをしているわけだが。
まぁ言ってしまえば、今日はもう遅いしすることが無いから適当に雑談しているだけだ。
「皇帝陛下みたいな人と話すのって結構精神削る作業なんだぞお前ら、それに……」
「それに?」
「それに、学園なんて絶対面倒なことになる未来しか見えないからなぁ」
「うんうん、確かに私もそう思うよー」
「私もです」
「確かにな」
俺の懸念に同意する3人、俺たちが容易に想像できる未来は俺たち4人以外のクラスメイト達の行動だ。
俺たちはこの世界に召喚されたから何かと優遇されてきたからな、アイツらが調子に乗って他の生徒に横暴に振舞ったり問題を起こしたりするのが眼に浮かぶ……
これは一応皆んなのまとめ役として抜擢されている身からしたら頭を抱えたくなら問題だ。
一番最悪なのが、喧嘩をふっかけて負けた場合、もしそうならばメンツが丸潰れになる事になる、けどこれはおそらくあり得ない。
俺たちだって伊達にこの1ヶ月旅をしてきたわけじゃない、温室育ちの貴族の人間に負けるとは到底思えない。
と、なるとやっぱり最悪の場合は高位貴族の生徒に怪我をさせた場合だ、それがもし他国の貴族なら国際問題に発展しかねない。
因みに今の俺たちは俺たちを召喚したアストラル王国と現在いるメビウス帝国が証人になってくれている状況だ。
「怪我人だけは出さないでほしいなぁ」
「いや、怪我人どころか下手したら死人が出るかもしれないぞ」
駿の言葉が俺の淡い期待を易々と打ち砕いた。
「やっぱり、駿もそう思うか?」
「そりゃあ、1ヶ月前の俺たちならまだ大怪我で済んだかもしれないけどな。
流石に今の俺たちが全力で攻撃したら死人が出るだろ」
「私もそう思うよ、だって今の私達なら司馬君が倒した鬼人くらいなら倒せそうだしね」
「う〜ん、流石に雫の言ってる事は誇張しすぎだと思うけど、私も駿君の意見に同意かな」
「はぁ、どうにかならないかな?
流石にクラスの奴ら全員を見張っとくのは無理だしなぁ」
「もしそうなったら貴族生徒が勝つ事を祈るしかないな」
冗談めかして駿が笑いながらそう言うけど…
「それはそれでマズイけど、まぁそうだな。
どうせ今考えてもどうにもならないからな、この話はお終いにしよう」
もし、問題が起こってもどうせなるようにしかならないだろうからな。
「そらよりも明日、さっそく迷宮に行ってみるか?」
「そりゃあ、なぁ?」
「そうだよね」
「はい」
当たり前だよな?と言外に言った駿にとてもいい笑顔で頷く雫とあかり。
「まっ、そうなると思ってたよ」
そう言う俺も多分楽しそうに笑っているだろう、なにせ地下迷宮アビスと言えば…
「なにせ、あの伝説のワールドのホームって噂されてた場所だからな」
「けどまぁ、所詮は噂だけどね」
「何言ってんだ雫、俺たちでそれを確かめに行くんだろ?」
「おっ、駿いい事言うね!」
「じゃあ、迷宮での作戦をしましょうか」
あかりの言った作戦を決めるための話し合い…とは言えない、ただの雑談で夜も更けていった。
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翌朝、迷宮に行く前に取り敢えずポーションなどの補充と、地図、情報を購入するために冒険者ギルドに立ち寄ったのだが。
全く予想だにしていなかった情報も一緒に手に入った。
それは、数日前に三大国が一角を占めるエラムセス王国王都付近で過去に例を見ない規模でのスタンピードが発生し、古竜が2体に加え数千の魔物が現れると言う未曾有の危機に直面したらしい。
しかしだ、話はそれだけに留まらず、なんと数千の魔物たちを瞬く間に殲滅し、古竜2体を圧倒した、全世界で4人となるSSSランク冒険者が突如として現れたのだ。
しかも、そのSSSランク冒険者は、エラムセス王国で爵位を与えエラムセス王国の貴族となったようだ。
「なんか、私達の知らない間にすごい事になってますね」
冒険者ギルドを後にし迷宮に向かう途中、あかりがしみじみとそう呟いた。
「確かに、今回の事で各国に与える衝撃は大きいだろうな」
「てか、古竜2体を圧倒って凄すぎじゃない!?
古竜ってたとえ一体でも騎士団長のゾルフさんが勝てないって言い切るような相手でしょ?」
雫がそう思うのも無理はない、無理はないと思うが…
「まぁ、多少は脚色されてるだろうけど、その人が古竜に勝ったのは本当だと思うぞ」
「まっ、どっちにしても世の中にはまだまだ凄い奴らがいるって事だな。
けどまぁ、俺たちなら後半年もすれば古竜に勝てるくらいには強くなれるんじゃね?」
「確かに、半年とは言わなくとも駿の言う通りだな。俺たちはそれ以上に強くならなくちゃダメだからな」
俺たちが戦わないとダメなのは、古竜よりも強いあの龍王や妖精王を含む魔王たちだ。
「それに、その人がエラムセス王国で貴族になったんだったらこれから先はわからないけど、俺たちとは今は関係ないし、それよりも為にも今は迷宮に集中しよう」
「おうよ」
「まっ、そうだね!」
「そうですね」
いつも以上にやる気をみなぎらせている3人を頼もしく思い、俺も頑張らないとなと思ういながら、迷宮に向かって歩く。
数日後に、いきなりそう思っていた存在が関わってくる事になる事など知る由もなかった。
次回から新章突入です!!お楽しみに!
次回 61話は 12月8日土曜日更新予定です。
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12月3日 月曜日更新!!
「伝説の吸血鬼となった商人は怠惰スローライフをお望みです」
そこそこ読める作品だと思うので是非読んでみてください!!