60話 増える悩み事と解決する悩み事
今回少し長めになっています!!
俺は今、エラムセス王国王城の廊下を専攻してくれるメイドさんの後をついて1人で歩いている。
何故こんなところにいるのかと言うと勿論、前日の件を報告するためだ。
ふと思ったのだが最近ちょっと城に関連が多すぎないだろうか?
ここ数日だけで、エラムセス、アレネメス、そして吸血姫の魔王城と3つの城に足を運んだ訳だが……うん、俺結構働いてるなぁ。
ちなみに余談だが、ネルヴィアの城が一番規模が大きく防衛設備の充実していた、ついでにエラムセス最後にアレネメスだが、今にして思えばアストラルが一番酷がった気がする。
まぁ三大国の一角としてどうかと思わなくもないが、はっきり言って俺には関係のない事だ。
そして一番やり辛いのがこのエラムセスだ、歩いている間にすれ違うメイドや騎士達は端に寄って頭を下げてくるし、話しかけてくる者もいない、さらには俺が普段着で歩いていても注意する者もいない。
この城の一室に取り付けた転移陣に転移した時、隣室に控えていたらしい執事さんに、事情を話したらどうやら国王は現在面会中らしく控え室にて待機ということになったのだが。
俺はこの城の構造はわかってもどこに何があるかまでは知らない、よって現在こうしてメイドさんの後をついて歩いている訳なのだが。
はっきり言って途轍もなく気不味い、ただただ漂うこの無言……おっと、どうやら俺にも神の救いが訪れたようだ。
「あ、貴方様は」
廊下の曲がり角から現れたのは赤い長髪を翻した1人の少女、エラムセス王国第二王女アリス・エル・エラムセスだ。
「これはこれは、お久しぶりですねアリスさん」
「お久しぶりです、しかし以前に会った時からまだそれほど時間は経っていませんよ」
そう言えば…そうだな、うん、最近というかここ二、三日目忙しくて忘れていたが前回にさらに来た時から未だに一週間もたってなかった。
やっぱりちょっと働きすぎだな、ミラが帰ってくるまでの間はゆっくりと休養するとしよう。
「それにしても何故今日はこちらに?」
「実はですね、少し国王様に用事があるんですよ」
「そうなのですか!
実は私も今、お父様…国王様に呼び出されたのです」
「それは奇遇ですね、あと私の前では外聞を気にする必要はありませんからお父様でいいと思いますよ」
「そ、そうですか…」
そういうと少し赤くなって俯いてしまった、まぁなんというか始めて会った時のあの剣幕はいったいどこへ行ったのだろう?
「そ、そうだ。
どうせお父様のところへ行くのであれば一緒に行きませんか?」
「よろしいのですか?」
「はい、お父様もソータ様がいらしたと知れば必ずお会いになるはずです」
まぁ、この申し出は非常に有難い、こうして俺はメイドさんとの途轍もなく気不味い空間から解放されたのだった。
因みに、
エラムセス国王の名前がクローム・バレ・エラムセス
王妃がエリーゼ・レジ・エラムセス
第一王子アレン・サル・エラムセス
第二王子グレン・テールエラムセス
第三王子クレス・ソルト・エラムセス
第一王女リズベット・サン・エラムセス
第三王女サーレ・ミール・エラムセス
と言うのがアリス王女を含めたエラムセス王族の名前だ、まぁうち何人かの名前は今話している時に初めて知ったのだが。
そうこうしている間にどうやら国王がいるらしい応接室に着いたらしい、そう言えば現在国王は客と面会中らしが、いいのだろうか?
アリス王女が扉をノックしようとした時、その扉が唐突に開いた、それと同時に扉の奥から解き放たれる凄まじい殺気と拳。
マズイな、流石にこの拳を素手で受ければ俺も無傷ではすみそうにないぞ、まぁ素手で受ければだけどね。
それよりもこれアリス王女がヤバイ、それもかなりヤバイ、拳の軌道からしてアリス王女には当たらないだろうがこの拳に纏われた高密度の魔力……余波だけで大怪我をしかねないぞ。
全く誰だよコイツを…こんな危険人物を城に入れたバカは、まぁ今はそれよりもアリス王女を助ける方が先決だな。
左手でアリス王女を抱き寄せ、彼女の周りに薄く結界を張る、薄いと行っても竜種のブレスをも防ぐ程の結界だ。
次いで、右手に向かってくる拳と同等の魔力を纏わせて受け止める。
周囲に凄まじい炸裂音が響き渡る。
その様子を見て拳を放った男は満足そうにニヤリとほくそ笑む。
「よお、久しぶりだな」
そして男はそう言い放った。
全く何が久しぶりだ、これ普通の人だったら確実に死んでるぞ。
そして何故コイツが…いやコイツらがこんなところにいるんだ?
「そっ、ソータ殿これは一体?」
俺の腕の中でアリス王女が聞いてくるが、それを聞きたいのは俺の方だ…
「アリス王女、とりあえず中に入りましょうか。
よろしいですに国王様?」
部屋の中にいた国王から帰ってきた言葉は肯定の言葉だった。
部屋の中にいたのは国王を合わせて6名、うち2人は国王の護衛を務める近衛騎士、国王と宰相のアウレーニス公爵。
そして、さき程俺をいきなり殴り掛かってきた男と怪しげな笑みを浮かべている女が1人。
「それで国王様どうしてこんな怪しい不審人物を王城内に招き入れたのですか?」
「おいおい、怪しいはないだ」
「お前は少し黙っていろ」
「……」
俺に一喝されて敢え無く撃沈した男を見てローブをまとった女はクスクスと可笑しそうに笑っているが、俺はそれを無視して国王に向き直る。
「うむ、実はのこのお二方は突然私の執務室に現れたのだ」
「なるほど、事情はわかりました」
突然国王の執務室に何者かが現れる、本来であらば王城内は大騒ぎになるはずだが、今回は現れた人物が人物なのでそうはならなかったのだろう。
それにしても、この王城にも一応程度とは言え、もともと張ってあった結界の上から俺が強化したのに、それを易々と破られるとは……
「それで、はぁ…お前ら何をしにきたんだ?」
「はぁ、とは何だはぁとは、せっかくこの俺が来てやったというのに」
「まぁまぁ、楽しそうですわね」
俺が呆れてついたため息に憤慨する男を見てそう行って微笑む女。
「あ、あのソータ殿、この方々は何者なのですか?」
そこに現状を唯一理解ずに困惑していたアリス王女がコイツらが誰なのかを聞いてきた。
まぁ、俺の時のように突っかかって行っていない事を思うと、アリス王女もコイツらが放っている威圧のような物を感じ取ったのだろう。
「アリス王女も知っていると思いますが、この男が」
「あら、可愛らしいお嬢さんだこと。
では改めて自己紹介させてもらいますわ、私の名前はアレティヌス。
しがないただの魔法使いですわ」
フフフと笑う女、アレティヌスだがアリス王女はそうもいかなかったようで驚愕に顔を染めてアレティヌスを見つめている。
しかしだ、爆弾はこれだけでは終わらない…
「じゃあ次は俺の番だな、俺はマークレン。
まぁただの格闘家だ」
と2人は言ったがお前らがしがない魔法使いとただの格闘家だったらこの世界中にいる全魔法使いと格闘家達が可哀想だ。
「とまぁ2人が言うように女の方がアレティヌス、男の方がマークレン、と言います」
「し、しかし、アレティヌス様とマークレン様と言えば……」
「ええ、アリス王女の言う通りこの2人は魔女と拳神とも呼ばれていますよ。
まぁ実際はマッドサイエンティストとただのバカですけどね」
その言葉に、国王に、アリス王女、アウレーニス公爵に近衛騎士の2人までもが俺に信じられないと言った視線を向けてきた。
あっれぇ?俺何か間違った事言ったかな?まぁいいか。
「それで国王様、この2人は何故ここに?」
「あ、ああ、その事なのだが」
「さっきも言っただろう、お前に会いに来たんだ」
国王の言葉を遮ってマークレンが声を上げた。
どうやら、この2人は新たなSSSランク冒険者のことを聞き、俺だと特定したのちここまで会いに来たと言う。
しかしまぁ、どうせ碌な事じゃないだろうな…
「じゃあ、後で迎えに行くから取り敢えず待合室かどこかで待っていてくれないかな?」
そう提案すると、2人は案外素直に提案を受け入れ部屋から出て行った。
全く、嵐のような奴らだなアイツらは、それにしてもやっと一息つけると思ったのに…これは休養どころでは無いな。
「貴殿はあのお二方とも知り合いなのだな」
遠のいて行く休養に少し悲しくなりながらそんな事を考えているとふいに国王がそう言ってきた。
「ええ、まぁ腐れ縁というやつです」
「それにしてもあの魔女アレティヌスと拳神マークレンをマッドサイエンティストにバカと言い切るとは、肝を冷やしたぞ」
「それは申し訳ありません」
「ソータ殿、貴方様とあのお二人どちらがお強いのですか?」
アリス王女の質問に部屋の中が静まり返った、国王やアウレーニス公爵は真剣な表情で耳を傾けてさえいる。
「そうですね、一概には言えませんが本気で戦えば恐らく私が勝つでしょうね。
しかし、その余波でかなりの範囲が更地になるでしょうけど」
実際、2人の実力は若い魔王ぐらいなら圧倒するだろう、中堅の魔王と同等ぐらいだ。
しかし、実力で言えば俺の方が上だ、それでも人間で言えばかなり上位の実力なのは確実なのだけどね。
「それよりも、国王様。
ご報告したい事があります」
それからアレネメス王国の事を話したが、国王はあっさりと許可し、アウレーニス公爵はもたらされる利益に多少エキサイトしていた。
それにしてもこうもあっさりと許可が降りるとは少し意外だな、まぁ俺としてはそちらの方がありがたいのだが。
「それで、話は変わるのですが折り入って国王様にご相談がありまして」
「貴殿が相談とはな」
「私にも悩み事の1つや2つはありますよ、現にあの2人が現れた事で悩み事がまた1つ増えましたからね」
はぁ、かつての仲間達に、あの二人、取り敢えずこの2つが大きすぎる、まぁ今それを考えてもどうにもならないのだが、はぁ、憂鬱だなぁ。
「実はですね、ミラ達3名にしっかりとした教育を受けさせようと思いまして」
「うむ、それはいい考えだと思うぞ。
これからは貴族達と関わる事もあるだろうし、一般常識なども学べるからな」
「しかしですね、お恥ずかしい事ながら私は教育機関について詳しく知らないのです」
「よし、では私が学園に編入するための手続きをしてやろう」
「ありがとうございます、助かりますよ」
「なに、貴殿の頼みだこの程度であれば構わない」
と、悩み事が1つトントン拍子の素早さで解決した。
「では明日にでも書類を纏めておくので取りに来てくれ」
「わかりました、では私はこれで失礼させてもらいます」
そう言って自分の屋敷に面倒な二人を連れて帰ったのだが、この学園の編入に俺まで含まれていた事を知ったのは次の日の昼のことだった。
次回は12月2日 日曜日に更新予定!!
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12月1日 土曜日更新!!
「伝説の吸血鬼となった商人は怠惰スローライフをお望みです」
そこそこ読める作品だと思うので是非読んでみてください!!