06話 決断
第6話になります!
これからもよろしくお願いします!!
俺たちは今、迷宮第25階層辺りを地上に向かって走っている。
なぜこんな事になっているのかと言うと今から数分前に遡る、
この以前俺が使っていた拠点こと地下迷宮の34階層目に俺たちは約24時間かけてたどり着いた。
俺からしたら遅すぎる速度、だが、この廃れた世界では、ありえないほど早い速度で攻略しているらしく、最後尾で安全に皆について行っている俺の隣に立ち皆の様子を見ていたゾルフ団長が語ってくれた。
この拠点は、おふざけで作ったものの立地の良さから俺もよく使っていたいわば本拠地で結構な改良を加え、最下層は200階層で、50階層目までは、様子見の初級ゾーンになっておりはっきり言って大したことはない。
こんな事では今の世界のレベルはさぞかし悲しい事になっている事だろう。
そんな事も心の中で嘆きながら、第35階層目に到達しようとしたところで、王城の宮廷魔導師からゾルフ団長に伝達魔法のメッセージが届いた。
そこには《今すぐ城に戻って来て欲しい》と言う趣旨が述べられていた。
しかしその後につづられた内容がゾルフ団長を震え上がらせた。
《長きにわたり沈黙を貫いていた龍王に動きあり、現在、龍王がこの国の王都に接近中、直ちに勇者一行と共に帰還せよ》
と述べられていたのだ。
その文を目にしたゾルフ団長は全身から嫌な汗を吐き出し、その場に立ち尽くし激しく動揺する。
そしてその様子を見た生徒達に声をかけられ、送られてきた内容を説明したのだ、説明を聞いた騎士団の人たちは絶望の色を浮かべ、クラスメイト達は余裕の笑みを浮かべる。
その余裕は、このダンジョンでのレベルアップに伴う実力の上昇によるものが大きく、少し前に休憩を取った時にやったゾルフ団長との手合わせでは俺はしていないので俺を省くクラスメイト全員が団長を圧倒したのだ。
「ゾルフ団長に皆さんも勇者である俺と俺のクラスメイトがついているんですよ、そんな龍王なんかに負けるはずありませんよ」
と中村が余裕の笑みを浮かべる事で安心したのか騎士団の皆んなの顔色にも余裕が出来てくる。
周辺諸国最強とうたわれるゾルフ団長を圧倒したから
クラスの奴らはこの世界で自分達が最強だとでも思っているのだろう、そしてゾルフ団長を圧倒した場面を見ていた騎士団の皆んなもそう思っているのだろう。
しかし、所詮ゾルフ団長の実力はAWOの力の無いNPCなどを統べ含めた上での中の下、プレイヤー達だけの中では下の中と言ったところだろう。
そんなこんなで、その程度の実力の者を圧倒した程度で調子に乗っているこいつらは中村が先頭に立ち地上に向かって走っているのだ。
龍王と言うのがあいつの事なら、コイツらに勝ち目は無い、まぐれや偶然も起きることは無いとハッキリと言える、コイツらが一撃に全ての力を込めてもあいつにはキズを付けるどころか周囲に展開されている魔力に触れた瞬間に蒸発する事になるだけだ。
うぅ〜んさて、どうしたものか…
俺が頭を働かせている間にも地上へ向けて走っており、もう地上に出てしまう。
まぁ、なるようになるだろ…多分、数時間後の俺頑張ってくれよ!
そしてついに俺たちは地上に躍り出た、
そこからも休む事なく走り続け、連絡が入ってから約10時間で王城に辿り着いた。
城を取り囲む城壁はもちろん顔パスで通され、そのまま王の間に通される。
「おぉ、ゾルフに勇者リョウタ殿にその仲間の皆よ、よくぞこの短時間で駆けつけてくれた」
と国王に礼をされると中村が返事を返した。
「いえ、当然ですよ国王陛下、お荷物さえ居なければもっと早くに帰還できたのですが、申し訳ありません」
コイツ、今俺のことをお荷物と言ったのか?
久し振りにイラッと来たな、勇者か何か知らないが調子に乗りやがって、
まぁ、何も知らない哀れな奴らだからな、ここは我慢してやるとするか…
「まぁそう言うな勇者殿よ、彼も仲間なのであろう?
それよりもだ、今は龍王が問題なのだ」
「それは心配には及びません、龍王などと言われていても所詮はただのデカイだけのトカゲでしょう
最奥が50階層と言われるあのダンジョンで俺たちは力を上げました。
今となれば10名いると言う魔王であろうと容易く倒せますよ」
「ブハッッ」
おっとまずい思わず吹いてしまった。
案の定、中村が俺のことを睨んでやがる、国王達も訝しむ目を向けて来た。
「おい、お荷物君、何がおかしいんだ?」
さてどうやって乗り切ろうか、
「いや、何すまない、気にしないでくれ」
「クソッ、ちょっとあかりに気にかけられてるからって調子に乗りやがって…」
小言を何やら呟いているようだが、聞こえなかったな、まぁいいかこれ以上突っかかってくる気はないみたいだし。
その時、フルプレートの鎧を身につけた位の高そうな騎士が王の間に駆け込んで来た、それを見た大臣達が声を上げようとしたがその声は声になる前に飲み込まれる。
その理由は騎士が手にしている封がなされた一通の書状が原因だ、それは冒険者ギルドから特S級の緊急事態の場合のみ送られる書状であり、その伝達を妨げるものはたとえ王族であろうとも極刑に罰せられるほどの代物なのだ。
国王が騎士に促し騎士がその書状を読み上げ始めた。
《通達、アストラル王国現国王、アルフ・アモンド・エル・アストラル殿に龍王アヴァロス及びに十魔王の一柱である妖精王ヴァイスロギアが会談を申請なさいました。
対処はそちらに任せます、なおこれはSSS級冒険者を通しての正式な依頼で御座います》
と、言った内容を騎士が声を震えさせながら読み上げた。
「なっ?!龍王だけでは無く魔王までもが、何のようなのだ!」
と国王が騒ぎ出した、龍王アヴァロスに妖精王ヴァイスロギアか、あいつらがここに来たのは間違いなく俺が原因だろうな、まぁいいか、成り行きに任せよう。
「国王陛下、その会談受ければいいではないですか、我々がいればその程度の奴らわけ無いですよ。
むしろこれはチャンスでは無いですか?
龍王と魔王の一柱を討ったとなればこの国の格も上がりますし、俺たちもより強くなれます」
そんな事を言う中村に賛同するようにクラスの連中が余裕の笑みを浮かべながら頷いている、その様子を見て自信が出たのか国王までもが賛同し出した。
唯一、危機感を覚えているのはゾルフ団長くらいか、
まぁ残念だがこうなっては仕方がない助言だけはしておいてやろう。
「やめておいた方がいい、こちらから手を出すべきではない、奴らを怒らせるだけだぞ」
「うるせぇんだよ!無能のくせに意見するんじゃねぇ」
仲良し四人組が1人坂本が声を張り上げた。
「おいおい、酷い言い草だな俺達は同じ世界から召喚された仲間だろ?」
俺がそう言うと皆キョトンとした表情になるそして次の瞬間には笑いに変わる。
「あははは〜、仲間?お前が俺達の?
勘違いすんなよ、お前は俺達の仲間でも何でもないただのお荷物なんだよ」
おっとこれはまた酷い言い草だなまぁこれで俺は一応忠告はした後の事は知らん
「坂本、お前達が俺の事をどう思っていようがどうでもいいが…
まぁ忠告はしたぞ」
俺はそう言って俺の事を睨み付けてくる北山以外のクラスメイト達に肩をすくめて見せた。
「では、国王陛下会談には俺たちクラスの全員を参加させてもらいます。
まぁ御安心を、何かあったら俺たちが逆に痛い目に合わせてやりますよ」
そう言う中村を見て国王が今更威厳を保つように、うむと頷いた。
「おいおい、亮太この無能君も連れて行くのか?」
「そうだよ駿、それに彼だって一応は俺たちと同じ世界から来たんだレベルが上がれば使えるようになるかもしれないしね」
「まぁそうだな、使えないようなら囮にでも使えばいいしな」
さてコイツらには散々な言われようだが北山はやめろとあいつらを止めているようだが、ちょっとはまともな奴がいて良かったと心から思うよ、本当。
こんなやり取りの数時間後この国は無類の脅威に晒される事になるのだった…
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