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56話 ふざけるなよ?

他国にも広く知られる玄人である国王が小さく漏らしたその声を拾えたのは恐らくは王子と金の鎧を着ている騎士達、そして俺たちだけだろう。


その証拠に金の鎧を纏った騎士達と爽やかイケメンの王子が動揺したように国王が見つめている一点、俺の陰に隠れるようにして立っていたリーナに視線を向けた。


一斉に集中する視線にリーナがビクッと身体を震わす。


本来リーナはヘルやミラとは違って控えめな性格だ、今となっては高位の吸血鬼であっても相手取れる実力者だがその本質までは変わらない。


まぁそれでも普通であればリーナがここまで怯える事はない、しかしだ今回は違う、今リーナに視線を送っている連中は例え操られていたとはいえリーナの世界をぶち壊し追放した存在だ。


いくら力をつけようがいくら自身をつけようがリーナの負った傷は治ってはいないのだ、だからこそリーナはここまで怯えているのだが……


「リーナ、なのか?」


国王と同様に唖然とした様子で王子がリーナに話しかける。


まぁ、操られている状態から解放されていきなり奴隷に落ちたはずな妹があればさぞ驚くのは理解できる、だがその声量がよくなかった。


王子の声を聴いていた、近衛兵以外の騎士達が一斉にリーナに視線を集めることとなってしまったからだ。


その視線を受けリーナは更に身体を強張らせ、呼吸が無意識の内に乱れる。


「本当に、本当にリーナなのかい?」


無言のリーナの反応をどう捉えたのか、王子が目尻に涙を浮かべながらリーナに駆け寄っていく。


「い、嫌っ」


それにリーナがそう言葉を漏らすのだが、失踪…と言う事になっている妹との再会に高揚していた王子はそのリーナの拒絶の言葉が届いていないのか、又は気にしていないのか構わずにリーナに近づき手を伸ばす。


周囲にてそれを見守っている騎士達は、それをとても微笑ましそうに見守っていた、中には良かったと笑みを浮かべ涙を浮かべているものまでいる。


しかし、この微笑ましい光景が次の瞬間に凍りつく、理由は簡単リーナを抱きしめようとした王子の手が横から伸びてきた手に掴まれたからだ。


「おい、お前らいい加減にしろよ?」


掴んだ王子の腕を国王の元に投げて解放しする。


騎士達が一斉に武器に手をかけ、近衛兵達は王と王子を庇うように俺との間に立ちつ。


「さっきからリーナが怯えている事にも気づいていないのか?」


俺の言葉に王子はハッと目を見開き、国王は歯を食いしばり目を伏せる。


「貴様ッ!このお方が誰だと心得ているのだ!?」


「王族に手を出したのだ生きて生きて帰れると思うでないぞ!」


「貴様が第二王女様を攫った者だな!?」


などと口々に騎士達が怒りを露わに俺に剣や槍などの武器を構える。


「あ?」


俺から漏れたその声にお子様三人衆がビクリと身体を震わせる。


「俺がリーナを攫っただと?」


「そうだ、失踪した第二王女様と共にいるのだ言い逃れなど出来ると思うでないぞ!!」


そう言い放った騎士に向かってヘルが、よせ愚か者が!と叫ぶがその騎士に同調する騎士達の声にかき消される。


「お前らふざけるのも大概にしろよ?

俺がリーナを攫った?りーながしっそうした?ハッ笑わせるな!

リーナが失踪したんじゃなくてお前らがリーナを奴隷に落として追放したんだろうが?

それを失踪だと?お前ら俺たちの事をバカにしてるのか?」


言葉を発しながら徐々に溢れ出る莫大な魔力に怒り立っていた騎士達が後ずさる。


「リーナを追放した連中が、お前らの前に立つリーナの気持ちも考えられないのか?」


「ふ、ふざけているの貴様だ!

現に貴様が第二王女様を共にいたではないか、これが何よりの証拠だ!!」


ソータの発する魔力と威圧に気圧されながらも指揮官は声を荒げる。


「……今回はリーナの問題だから俺は手を出すつもりはなかった、無かったんだけどなぁ。

お前らいい加減にしろよ、俺が今すぐこの国を滅ぼしてやろうか?」


本来であれば一笑に付す内容だが、この場にいる者の中に笑う者は誰一人としていなかった。


ソータから発せられる魔力がそれを一笑に付していい発言でないとこの場にいる者の誰もが理解していたのだ。


それでもミラ、リーナ、ヘルそして国王を省く者達の認識は、国を滅ぼす程の事は出来ないだろうが多くの死者を出す事になるほどの脅威程度であったが。


しかしミラ達3人はソータの力を知っているだけにとてもでは無いが笑えなかった。


そして国王はというと、他国にまでその名を知られるほどの玄人である国王は若き頃に戦場で一度だけ遠目に見た魔王に匹敵する脅威だとその直感が告げていた。


新たに生まれた魔王を討つために三大国を中心とした国々の連合軍として魔王と戦った時のことを思い出し国王の背を冷たい汗が流れる。


それもそのはず、その()()()生まれた魔王との戦いにより実に各国連合軍の三分の一の人々が死に絶えたのだ。


「ほう、貴様程度がかの十魔王と同等の力を持つと申すか?

貴様こそ笑わせるでないわ!」


しかし、そんな事を知るよしもない指揮官はなおも強気な姿勢を崩さない、確かにソータから発せられる魔力に後ずさりはしたが、それでもこの程度の魔力であれば高位冒険者と呼ばれるBランク冒険者であればそれなりにいるレベルだと判断したからだ。


確かに騎士達の幾人かは犠牲になるだろうが、この場には近衛騎士達もいるのだから負けるはずがないと。


現にソータが今垂れ流している魔力程度であればそれなりにいる程度のレベルであった。


「じゃあ、嘘かどうか試してみるか?」


「待ってくれ」


不敵な笑みを浮かべながらそういう少年を見て国王は声をあげた。


「なんだ?」


「我が国の騎士が失礼をした、その謝罪も含めリーナの事を貴公と話したい。

どうか怒りを鎮めてはくれないだろうか?」


「なっ!?」


その事に驚きの声を上げたのは指揮官だ、しかしこの国王の行動に驚きを覚えたのは指揮官だけではなくこの場にいる騎士、近衛騎士達全てであった。


国王が一国のそれも第四の大国と呼ばれるアレネメス王国の王が何処の馬の骨ともわからないものに謝罪をしたのだから、彼らが驚くのも無理のない事だった。


「お待ちを国王陛下、この程度の者など我らが取り押さえてご覧に入れ」


「黙れっ!」


国王に言い募る指揮官であったが、国王の一喝にておし黙る。


「失礼した。

どうですかな、私の提案を受け入れては下さらないか?」


国王、リーナの父親にそう頭を下げられればソータも流石に断るわけには行かない、そもそも今回はこの国と争いに来たわけではないのだ。


「こちらこそ少し取り乱してしまったようで申し訳ない。

そもそも今回はリーナの件で顔を出させて頂きましたからね」


「それではこちらに」


そう言って先導する国王とそれについていく少年たち、それをさらに後ろからついていく近衛騎士達を指揮官は唖然と見つめる事しか出来なかった。


次話57話は11月18日 日曜日更新予定!!


少しでも『面白かった』『続きが気になる』と思ってくれましたら、


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これからもよろしくお願いします!!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


題名変更しました!


「伝説の吸血鬼となった商人は怠惰スローライフをお望みです」


そこそこ読める作品だと思うので是非読んでみてください!!


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