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51話 国に巣食う吸血鬼4

まぁ、案内といってもどうせこの先にあるんだろうけど。


「我らが貴様らの」


地に伏せ、俺たちから少しでも距離を取ろうと這いずっていた執事吸血鬼の言葉はそこで途絶えた、頭そのものが消失する事によって。


「お前の仕業だな?」


と俺が声をかける場所には何も無い、存在するのはこの部屋の壁だけだ、けどまぁ俺にこんな手は通じない。


「そこにいるのはわかっている出て来い」


今度は少し魔力を荒だてながら問いかけると、


「フフフ、そんなに魔力を荒だてないで頂けますかな?」


という言葉と共に、先程まで何もなかったはずの空間がまるで蜃気楼の様に軽く歪みその中から1人、金髪の青年が姿を現わす。


その様子に、ミラとリーナは驚いている様だが、ヘルは気づいていたようで、平然とその様子を眺めている。


「それにしてもやってくれたな、もしこの奥にリースナルがいなかったらどうしてくれるつもりだ?」


まぁ、俺の魔力探知ではこの奥の空間、王座の間にいる事はわかっているが、魔力探知を誤魔化す方法はそれなりにあるからな。


もしかしたらこの奥にリースナルはいないかもしれない、そしてもしいなかった場合、奴を探すのは面倒極まり無い。


「その心配は御座いませんよ、彼は確かにこの奥にいましたからね」


が、そんな俺の危惧を軽く微笑みながらそう受け流した。


「それはどうもストーカー、それで何の用だ?」


ミラとリーナは気付いてなかったみたいだが、実はコイツ俺たちがこの城に乗り込んだ時からずっと付きまとって来てるのだ。


そんな奴が姿を見せたんだ、何らかの要件が必ずあるはずだ、無ければ例え俺が声をかけようとも姿を見せるはずがないからな。


「ス、ストーカーですか」


「俺がお前に気づいていなかったとでも?」


「私に気づいていてそれでいて放置していたと?」


さっきストーカーと言われ、笑みを引きつらせた時とは打って変わり鋭い視線でそう問いかけてくる。


「当たり前だ、まぁそれなりに気配を消すのも上手かったし、尾行もまぁまぁだった。

だが、視線が良く無いあれだけ見られていれば俺が気づかないはずがない」


「あれだけ敵からの視線を送られているなか普通、私の視線と区別がつきますか」


呆れた様にそう呟くが、ハッキリ言ってあれはコイツの落ち度であって俺が異常なわけでも何でも無い……筈だ、多分、きっと。


「あれだけ多くの敵意の視線の中、一つだけ不自然な物があれば誰でも気づく」


そんにな内心の動揺を悟らせない様に俺も少し呆れた風を装って言い放ってやった。


「成る程、勉強になりました以後気を付けさせて頂きます。

ですが、私に気づいていたのなら何故私を始末しなかったのですか?」


まぁ、吸血鬼であるコイツが付いてきている事がわかっていたのにこの状況でコイツに手を出さなかった事には勿論理由がある。


「俺はお前の飼い主のチビとは敵対していないし、敵対するつもりもないからな」


すると、目を見開いて驚愕をあらわにする吸血鬼、さてこの驚愕はコイツの飼い主についての事か、それともコイツの飼い主をチビと呼んだ事に対してか、それともその両方かは定かではないけどね。


「まぁ、お前の兄弟とは敵対してるけどな」


すると、吸血鬼がその瞳に更なる驚愕を宿す。


「な、何故その事を?」


「お前とリースナルの魔力周波が似通っているからだ、ここまで似る事は他人ではまずあり得ない。

あり得るとすれば可能性としては兄弟が一番高い」


魔力周波は指紋などと同様に人によって異なる、しかし、指紋とは違い血縁者とは似たものになる事が多い。


これは周囲の事実だ、しかしそれを調べるためには本来であれば加工した魔石を使って制度を底上げした感知魔法を使う必要があるとされているだけだ。


勿論、それは一般の話であって俺にはそんなもの必要ないんだけどね。


「直接目にせずに…まさかこれ程とは思っておりませんでした」


「俺のことを知ってる様な言い方だな」


「勿論です、新たにSSSランクとなった冒険者ですからね」


「お前の飼い主から何も聞いてないのか?」


「何のことでしょうか?」


う〜ん、俺の思い違いだったみたいだね、まぁ俺の正体がバレても面倒なだけだからいいんだけどさ。


「いや、それより何の用だ?」


「では、率直に申し上げます。

どうかお引き取り下さい」


「まぁ、確かにこれはお前らの問題だな」


「では」


「けど、引くわけにはいかない、これは俺たちの問題でもあるからな」


確かにこの事態を引き起こしたのは吸血鬼であってこの事態はコイツら吸血鬼の問題と言える、しかしだ、それによってこの国を追い出され奴隷に落とされたリーナの問題でもある。


ここでそう簡単に引くわけにはいかないんだよな、それは俺の矜持が許さない。


「それは我が主人と敵対する事になりますよ」


「まぁ、そうなったらそうなったで仕方がない事だ。

それに俺と敵対する意味をアイツは知ってる、そうだろ?」


「何を偉そうに言っておるのだ貴様は」


背後の扉に問いかけた俺の声に帰ってくるのは可憐な少女の幼い声だ。


そしてその扉はひとりでに開いて行き、その奥から姿を現したのは黒のゴシックドレスに身を包み長い銀に煌めく髪を翻す1人の少女。


そしてその少女に追随する執事服を完璧に着こなした白髪の男だ。


その姿を目にして金髪の吸血鬼は驚いた様に目を見開きながら跪く。


「久しぶりだなチビ」


うん、こうして知り合いに会うのはやっぱり感慨深いものがあるな……あれ?龍王と妖精王に会った時はそうでも無かったような気がする。


そしてそんな俺の言葉に慌てる金髪吸血鬼とミラ、リーナの3人、ヘルは驚くよりも警戒を露わにしている。


そしてその当の本人はと言うと、俯いてワナワナと肩を震わせている。


「貴様、吾の事を今、チビと言ったのか?」


そう言いながら、その身体からは軽く超濃密な魔力が漏れていると言うエフェクト付きだ。


「そう言ったぞ、ロリバ」


「貴様ぁ!吾に殺されたいようだな?」


俺の言葉を遮り声を荒げると同時にその身体からは魔力と殺気が迸る、それに金髪吸血鬼は身体を震えさせ、お子様3人は戦闘態勢を整える。


「悪い悪い、そうすぐに怒るな、ちょっとした冗談だろ?」


「…」


笑みを浮かべてフレンドリーに言うが、彼女は俺を睨んでくるだけで何も言葉を発さない、その代わりに迸る魔力の量は徐々に増しており、空気が震えだした。


「本来の目的を忘れるなよネルヴィア」


「不本意ながらあの方が仰る通りでございますぞネルヴィア様」


そう俺と執事の男が言うと、チッと舌打ちをして魔力が消失した。


「貴様、今後吾の事をあの様な呼んだらどうなるかわかっておるな?」


「す、すみませんでした」


その目には有無を言わさないモノがあり、俺も謝るしかなかった、まぁ今回は俺に少し非があったことは認めよう。


そんな俺を見てミラが、ご主人様が謝った!?と驚愕していたが、俺も謝る時は謝ると言うのに全くもって失礼な奴だ、今度礼儀を抑えるために学校に行かせる必要があるかもしれないな。


「ふん、まぁよい。

それで何故貴様はかなこにおるのだ?」


「何故って俺がここにいる事は俺の転移魔法で知ってただろ?普通は気づかないと思うんだけど」


「ふん、あの視線のみで吾に気付いた貴様に言われたくはない」


「ネルヴィアって相変わらず愛想がないな」


「大きなお世話でしか無いわ、そもそも魔王である吾にとって愛想など必要ない」


「魔王?」


その言葉に反応するのはミラだ、リーナも俺のことを見ていると言うことは気になっていると言うことだろう。


ヘルはさっきと変わらずネルヴィアの事を警戒しているが、その頬には冷や汗が浮かんでいる。


まぁ、ヘルがいくら魔王と同格の竜王の一体であったとしても流石に真なる魔王であり、古い魔王であるネルヴィアには勝てないだろうからな。


けどまぁ今はそんな事はどうでもいい。


「それでどうする?俺は引く気はないが」


「貴様とやり合うのも面白そうだが、今は此奴が先だ」


「まぁ、それもそうだな」


そう言ってネルヴィアが視線を送る先にあるのはこの部屋の入り口とは別のもう一つの扉だ、そして彼女が見ているのはその先の、ここに向かって歩いている存在。


ガタンと音を立てて扉が左右に開け開かれる。


「お久しぶりですね、お待ちしておりましたよネルヴィア」


その扉から現れた金髪をオールバックにまとめた男は黒い魔力を纏いながら嗤う。


次話51話は10月21日目 日曜日に更新予

定!!


少しでも『面白かった』『続きが気になる』と思ってくれましたら、


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これからもよろしくお願いします!!


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題名変更しました!


「伝説の吸血鬼となった商人は怠惰スローライフをお望みです」


そこそこ読める作品だと思うので是非読んでみてください。


*ちなみに題名は仮名なので変更するかもしれなれません。


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